中国の「大谷翔平」商標勝手出願は拒絶
2月27日に「無関係の中国企業による"大谷翔平"商標は登録されてしまうのか?」という記事を書きました。昨年(2023年)の12月13日に、衣服等を指定商品にした「大谷翔平」という商標を大谷選手とはまったく関係がない中国企業が出願していたという話です。
たまたま、中国商標局のサイトで確認したところ、この出願には、4月20日時点で拒絶査定が通知されていました。前回の記事にも書いたとおり、中国では、外部からは拒絶になった理由は(たとえ料金を払っても)わかりません。しかし、大谷翔平選手の著名性にフリーライドした出願であるといった理由であろうことは容易に想像できます。
細かい話を言うと、日本等の多くの国では、拒絶査定が出る前に、暫定的な拒絶の通知(拒絶理由通知)が行われ、それに対して、意見書や補正で対応できる機会があるのですが、中国では出願人が意見を述べる機会なしにいきなり拒絶査定になります。この後、不服審判を請求できるので、「大谷翔平」の拒絶査定はまだ確定してはいませんが、この出願人が審判費用を払って争うとも思えませんし、仮に争っても登録に持ち込めるとは思えませんので、この件は無事解決かと思います。
前回の記事にも書いたように、中国での商標勝手出願問題は完全に解決したわけではありませんが、法改正や運用改正によりかつてよりも大部ましにはなっており、あからさまな勝手出願がスルーで登録されてしまうケースは少なくなっています。
しかし、今回のようなあからさまなケースではなく、世界的に有名ではないものの一部では有名であるような商標(たとえば、ちょっとマイナーなアニメのキャラクターの名前)やそのものずばりではないが明らかに便乗で「寄せて」いる商標等(今回のケースで言えば、たとえば、「大谷SHOTIME」)に関して言えば、今後とも勝手出願が登録されてしまうリスクは残ります。
ということで、中国での勝手出願を防ぐために先んじて出願しておくという対策は依然として重要です。私が大谷選手のマネジメントの代理人であったならば、この機会に中国に防衛的に出願することを進言するでしょう。中国への出願の費用(1件10万円くらい)はリスク回避の効果を考えればかなり安いからです。