無関係の中国企業による「大谷翔平」商標は登録されてしまうのか?
「【物議】”大谷翔平”が中国で商標登録? 業者”偶然の一致”主張し”譲ってもいい”と取り引き持ちかけ」というニュースがありました。昨年の12月13日に、衣服等を指定商品にした「大谷翔平」という商標を大谷選手とはまったく関係がない中国企業が出願していたという話です。なお、タイトルには思わせぶりに「商標登録?」と書いてありますが、出願されただけでまだ審査待ちの状態です。
この手の中国企業による勝手出願はかつては日常茶飯事でしたが、最近は(ゼロではないものの)かなり減っています。その大きな理由は最近の中国の商標法改正により不正目的の商標登録出願は登録されにくく(場合によっては罰則の対象に)なっていることにあります。
たとえば、今までに中国において「羽生結弦」の商標登録出願は11件ありましたが、日本の正規マネジメント事務所(株式会社team Sirius)による2件を除き、全部拒絶になっています。なお、日本とは異なり、中国では商標の審査経過情報は(たとえ料金を払っても)第三者が閲覧することはできませんので、どのような理由で拒絶になったかはわかりません(日本の有名なスケート選手に便乗した不正目的の出願という理由なのはほぼ確実ですが)。
ということで、この「大谷翔平」の出願もほぼ確実に拒絶になるでしょう。日本ですと、このような場合には、万一の登録を避けるために、登録されるべきではない証拠を第三者が審査官に提供できるのですが、中国ではそのような正規の制度がないため、審査結果を待つしかありません(今年の4月頃になるのではないかと思います)。ないとは思いますが、万一登録査定が出ていればそのタイミングで異議申立を行なうことができます。
ところで、このようなあからさまな便乗出願の場合には、ほぼ確実に拒絶になることが期待できるのですが、そのものズバリではなく微妙にこすった出願、あるいは、まだ中国本土では有名になっていない名称ですと、中国商標局の審査官がスルーして登録してしまう可能性はあります。たとえば、日本で「SHO TIME」を出願すると大谷選手の活躍を表現する語として有名といった理由によりほぼ確実に拒絶になります(実際に拒絶されたケースがあります)が、中国ですとスルーで登録されてしまう可能性があります。
ということで、かつてほどではないものの、中国における勝手出願には依然として監視の目が必要であり、自分の商標が勝手出願されるのを絶対に避けたい場合には、先んじて中国に出願しておくなどの対策が必要です。