名古屋場所での期待は「横綱・照ノ富士の復活優勝」伊勢ヶ濱部屋の楯山親方が語る今場所の展望と注目の若手
大相撲名古屋場所は序盤戦5日間が終了。初日から圧倒的な力を見せつけるのは、不動の横綱・照ノ富士だ。ここまでで幕内唯一の5戦全勝。勢いに乗る。
今回は、そんな横綱をはじめ多くの関取が所属する伊勢ヶ濱部屋の楯山親方(元幕内・誉富士)に話を伺った。部屋だけでなく、相撲教習所でも指導に当たる楯山親方。旧・宮城野部屋が合流した部屋の力士たちの様子に加え、教習所に通う期待の若い力士たちについても語っていただいた。
指導では「頑張った過程を褒める」
――親方が所属される伊勢ヶ濱部屋に、宮城野部屋の力士たちが移籍してきて数ヵ月が経ちました。部屋の力士たちの様子はいかがですか。
「最初はギクシャクしたところもあったようで、宮城野部屋の子もどうしていいかわからないとか、居場所がないような感覚だったらしいんですが、2~3週間もしたら普段通りに戻って、新しく来た子たちも慣れたと言っていました。伊勢ヶ濱部屋には、もともと幕下力士の数が少なかったので、その部分では伊勢ヶ濱の力士にとってありがたく、いい稽古ができていると思います」
――今場所の力士たちの調子は、ご覧になっていていかがでしょうか。
「横綱に関しては、見る限りいいです。実際に胸を出したり相撲を取ったりしていた宝富士が、ここ数場所では一番状態がいいんじゃないかって話していましたからね。期待しています」
――親方も、まわしを締めて稽古場に降りられていますよね。指導する際はどんなことに気をつけていますか。
「誰かがアドバイスをした場合、そこにかぶせて言わないようにしています。いろんな人がいろんなことを言うと、何を聞いていいのかわからなくなってしまいますからね。それと、できるだけ褒めること。言われたことができたら褒めるし、できなくてもやろうとしていたら、そのやろうとした頑張りを褒める。師匠(伊勢ヶ濱親方/元横綱・旭富士)はなかなか褒めることはないので、飴と鞭になるような役割ができたらと常に思っています」
――伊勢ヶ濱部屋は、各親方衆や横綱、そして関取衆と、若い衆を指導する側の連携が取れていて素晴らしいなと思っていつも見ています。
「師匠が言ったことに対して、こいつわかっていなさそうだなと思ったら自分たちが噛み砕いて説明するとか、そういった連携は取れているかもしれません」
楯山親方期待の若手は野田と大斧!
――親方は、部屋以外に相撲教習所でも指導されています。近畿大学出身の親方のように、学生出身の力士も増えていますが、指導していてどうお感じですか。
「学生相撲を経験して入ってくる子には、自分の考えを強くもっている子が多い印象です。自分も通ってきた道なのでわかるんですけど、よい反面、素直に言うことを聞けないというか、反発してしまうこともあります。いま直さないと、目指すところには行けないよと言うんですが、なかなか聞いてもらえない部分もありますね」
――いろんな経歴の子がいますが、親方が見ていて期待している力士はいますか。
「藤島部屋の野田くん。気持ちが強いのと、身長も力もありますから、どうなるか楽しみです。あとは斧澤(追手風部屋、四股名は大斧)。自分から『ぶつかりごっちゃんです』とか『胸出してください』と言ってくるので、やる気があるなと思っています。教習所の担当になって、こうしてほかの部屋の子でも、気になる子がいたら応援するようになりましたね」
――楽しみですね。現役を引退して5年目ですが、まだまだ胸を出している親方。頼もしいです。
「辞めたとき、師匠に『40歳まで胸を出せ』と言われたんです。体重は165kgから125kgまで落としましたが、ここ3年くらいは胸を出すためにこの体重をキープしています」
――では最後に、今場所の土俵の見どころ、期待の力士について教えてください。
「やはりうちの部屋が中心になりますが、まずは横綱の復活優勝を期待しています。熱海富士は、自分の相撲を取れれば強いので、活躍して三役を狙ってほしい。宝富士にもまだまだ頑張ってもらいたいし、肩の手術をした伯桜鵬にも、いまの体の状態に慣れて、再度自分の相撲を見つけて幕内に戻ってきてほしい。あと、自分は押し相撲だったので、大栄翔を応援しています。ぜひ大関になってもらいたいですね」