人工知能と音声、カメラと拡張現実のトレンドが明瞭に - Google I/Oの振り返り
Googleは年次開発者イベント、Google I/Oを同社のキャンパスの隣にある屋外劇場を会場に開催しました。今回の発表についての、個人的なメモです。
今年の動向を簡単にまとめると、
- 世界最大のスマートフォンプラットホームの最新版「Android O」と、軽量版「Android Go」
- 画像認識「Google Lens」
- 「Googleアシスタント」の機能と対応製品拡大
- Google HomeのAmazon Echoへのキャッチアップと日本上陸
- スマホ不用のスタンドアロンVRヘッドセット
という5点が主な発表です。それぞれ驚きはないものの、密接に連携しあう関係性や、シリコンバレーのプラットフォーム企業の「大きなトレンド」を感じることができました。
Androidプラットホームは3つのカテゴリに
世界最大のスマートフォンプラットホームであるAndroidは、現在も支配的なシェアを確保しています。Googleによると、月間ユーザー数は20億人。
ハイエンドスマートフォン向けのOSの発展に対して、新興市場向けの軽量なAndroid Goをリリースすることで、残りの人口をいかにカバーしくかという狙いを読み取ることができます。
Android Goは、OS・アプリ・Playといった共通機能に絞ったシンプルなプラットホームで、100ドル以下のスマートフォンをターゲットとしています。
これまで用意していたハードウェアのパートナー向けに提供していたAndroid Oneとは異なる存在です。Android Oneシリーズは、当初の低価格というコンセプトから、高性能化やパートナー企業の利益確保などから価格の上昇が起きており、改めて新興国向けのベーシックなスマートフォンを構築し直そうという位置づけ。
Googleのアプリにも、「YouTube Go」など、軽量版を用意し、Androidによるスマートフォン体験を低スペックで価格の安いスマートフォンで十分に実現できる環境を整えて行きます。今後、機能向上以上にセキュリティアップデートに注力することになるでしょう。
Android Oは開発者向けプレビューからベータプログラムへと駒を進めており、PixelやNexusのユーザーはAndroid Beta Programにサインアップして試すことができます。
ユーザー体験の面では、新着通知があるアプリのアイコンにドットの表示が出て、長押しするとその内容を見ることができたり、ピクチャー・イン・ピクチャーへの対応、テキスト選択で特定のアプリにジャンプできる機能などが追加されています。
スマートフォンに求める最大の機能向上はバッテリー持続時間とセキュリティ。アプリケーションの動作速度を向上させることで、バッテリー持続時間も向上させようというアプローチを取っています。
Google Playに追加された「Google Play Protect」では、問題のあるアプリを報告する機能が追加されています。
より実用される拡張現実を狙う「Google Lens」
Googleは、カメラを用いて情報検索やスマホ操作を実現する実用的な拡張現実環境「Google Lens」を披露しました。
カメラをかざすと文字を認識して翻訳してくれる「Word Lens」は日本語対応を果たした際に話題になりました。このアプリはQuest Visualが開発しましたが、その後Googleに買収されています。
このアプリを見たことがある人なら、Google Lensには差ほど驚きを感じなかったかもしれません。認識するものが、文字から、現実世界の物体に変わっただけですから。ただ、この「変わっただけ」という簡単な表現以上に、技術的に解決すべき問題は膨大です。
文字は形が決まっていますが、現実世界の物体は、様々な形があり、カメラの向きや光の関係で違って見えることもあります。これらを同じものと認識して、それが何かを検索して表示する。これが、Google Lensがやっていることです。
しかし、それだけではありません。Google Lensは、我々が見て、何かスマートフォンを操作するという状況を、自動的に済ませてくれるようになりそうです。
例えば、カフェで壁に貼ってあるWi-Fiのパスワードは、スマホに自分で入力して接続しなければなりませんが、Google Lensをかざすと、自動的に設定してくれるようになるそうです。
また、知らない花や昆虫の写真を検索するのは困難ですが、こちらもカメラをかざせば、その花の名前の候補を挙げてくれます。名前が分かれば、検索することができますね。
Facebookはどちらかというと、拡張現実(AR)によるゲームやコミュニケーションを想定しています。それはFacebookの仮想現実(VR)の取り組みを見ても同様と言えます。一方Googleは、より実用性を重視している印象を受けます。
ただ、いずれも、スマートフォンのカメラを用いる点は共通です。スマホのカメラは、ARの入口になる。そんなコンセプトは、2017年のシリコンバレーにおける大きなトレンドとして認識して良いでしょう。
Googleアシスタントがより拡がる
Googleアシスタントは、対話型のインターフェイスで、文字や音声に対応する人工知能です。Google Homeは、先行するAmazon Echoよりも賢く実用的に利用することができます。
この「実用的」という点は、今回Googleが打ち出している、非常に大きなメッセージなのかもしれません。
そのGoogleアシスタントは、Google Homeでスタンドアロンのデバイスとして登場しましたが、これが日本を含む各国へと拡大することになりました。日本では、Google Play Musicの専用スピーカーとしての売り出し方が、最も分かりやすいのではないか、と思います。
また、Googleアシスタントの活用はより拡がっていくことになり、自動車の中、iPhoneでも利用できるようになっていきます。またスマートホーム関連でも、対応機器を拡げています。加えて、Googleアシスタントは、個人間送金機能を搭載しました。
また、ARを教育で活用するシーンについてのビデオも掲載されています。
スマホ不用のスタンドアロンVRヘッドセット
もう1つ、GoogleのVR関連の発表では、これまでスマートフォンを装着するVRヘッドセットを用意してきましたが、これに加えてスタンドアロンのVRヘッドセットを発表しました。パートナーにはViveとLenovoの名前が挙げられています。
ヘッドセットにはスマートフォンと同じようにプロセッサとディスプレイ、モーションセンサーを内蔵しており、カメラも搭載されています。これにより、ケーブルなしで、本格的なVRが楽しめるようになるとみられます。
Googleの場合、ARとVRをさほど分けて考えていないように感じました。どちらも新しいコンピューティングと情報表示の形を示してますし、やはり共通して流れる「実用性」というキーワードを感じることができます。
それはデバイス体験だったり、情報体験だったり。人々の生活を大きく返るというよりは、既にインターネットとスマホによってもたらされた変化を成熟させていく、というモチベーションを感じます。