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第27回 全国高等学校女子硬式野球選手権 準決勝 神戸弘陵が2年振りの決勝進出を決める

中川路里香フリーランスライター
最後の打者を三振にとりガッツポーズしながら挨拶へ向かう伊藤投手(右端)

 第27回 全国高等学校女子硬式野球選手権は、大会8日目となる7月29日に、つかさグループいちじま野球場(兵庫県丹波市)で準決勝2試合が行われた。第一試合の駒大苫小牧対神戸弘陵は、神戸弘陵が3-1で勝利し、2年振り3度目の決勝へ駒を進めた。続く第二試合の岐阜第一対福井工大福井は、延長11回となる大接戦の末、岐阜第一が7-5で福井工大福井を破り、初の決勝進出を遂げた。決勝戦は8月1日15時30分より、3年連続となる阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)にて行われる。

■駒大苫小牧 1-3 神戸弘陵

神戸弘陵  210 000 0 3

駒大苫小牧 000 010 0 1

【バッテリー】

神戸弘陵  伊藤-田垣

駒大苫小牧 金髙、佐々木-山藤

 神戸弘陵は相手の左のエース、金髙暖さん(3年)に対し、初回、1番・田垣朔來羽さん(2年)右安打で出塁し1死二塁で3番・三村歩生さん(3年)の左安打と敵失で先制。さらに1点を追加し2点を挙げると、2回には中安打で先頭、6番・真崎実侑さん(3年)が出塁すると2者連続送りバントで手堅く三塁に走者を置くと9番・西田真梨さん(3年)の右超の三塁打で3点目を加えた。先発の伊藤まことさん(2年)は終始安定した投球を披露、5回の1死三塁の場面であわや外野に抜けそうな当りを二塁手の三村さんが阻む好守で反撃を1点で封じ、好調だった相手打線に守り勝った。

 駒大苫小牧は、3回から登板した佐々木葵さん(2年)が追加点を許さず好援。5回に1点を返し7回にも走者を出し粘ったが、伊藤さんの前にあと一歩及ばなかった。

初回に田垣さん、三村さんが一気に生還、2点をリードした神戸弘陵
初回に田垣さん、三村さんが一気に生還、2点をリードした神戸弘陵

三村の存在が大きい。神戸弘陵・石原康司監督

「1点を取られた場面での三村の好守が大きい。外野へ抜けてランナーで残していたらもう1点取られていたかもしれないし、最終回のピンチでどうなっていたか…。あそこは大きかった。三村が打ち、守り、伊藤がよく頑張り、田垣がしっかりリードした、今日の試合はそれに尽きる。チームとして一つのアウトをしっかりとることを徹底してきたが、プレッシャーのかかる場面で落ち着いてプレーしていたことに成長を感じた」

鮮やかな守りで安打を阻んだ、神戸弘陵・三村さん(中)
鮮やかな守りで安打を阻んだ、神戸弘陵・三村さん(中)

『三冠』を意識せず目の前の勝負に集中。三村歩生主将

 当たっている三村さんは、この日も先制点をあげるなど好調。随所に好守も出る大活躍。「もともと打撃よりも守りが好き。ピッチャーを助けられてよかった。打撃については、緩い球を引き付けて逆方向へ打つ意識で打席に立っていました。目標の三冠まであと一勝となりましたが、目の前の一戦を勝っていく結果が三冠だと常にみんなに言ってきました。最後まで試合に集中して戦いたいと思います」

最後は気持ちで投げた。伊藤まこと投手

 序盤から危なげない投球で完投。最終回に相手の粘りで2人の走者を背負うが、3つのアウトを空振三振に仕留め締めくくった。「5回に1点を返されてからギアを上げ残り2イニングを無失点で抑えられたのが良かったです。最終回の三振を奪った球は、すべて得意のストレートです。(捕手の)田垣から『球はきているから。あとは気持ちで押すだけだよ』と言われて、自分も先輩たちと一緒に戦える最後だから、絶対に甲子園での決勝に行くんだ、という強い気持ちで投げました。勝負強さが持ち味。(決勝で登板したら)そんな投球を披露したいです」

ダイナミックなフォームから投げ下ろす、神戸弘陵の左腕、伊藤さん
ダイナミックなフォームから投げ下ろす、神戸弘陵の左腕、伊藤さん

 

伊藤さんを好リード。田垣朔來羽さん

 「相手打線は、外と変化球を打ってこないようだったので、前半はそこでカウントを取りにいく配球でした。後半は、内を攻める配球に変えて伊藤がしっかり投げきってくれました。甲子園という場所は、選手が輝ける場所だと思います。2年前に初の甲子園決勝が行われた時から『自分も絶対に立つ』と決めていました。決勝当日は、ランナーが出ても安定した送球で刺すこと、そして1本はヒットを打ちたいです」

神戸弘陵のユニフォームで活躍が恩返し

試合後の監督インタビューで、石原監督は、昨年、大会を途中棄権し最後まで戦えなかった3年生たちへの思いを口にした。昨夏は、初戦は不戦勝となり3回戦で高知中央に勝利したが、部内で新型コロナの陽性患者が出たため準々決勝を辞退したのだ。「優勝を狙えると思っていた」(石原監督)し、これが最後となる3年生たちのことを考えれば、登録選手を変えてでも出場をと考えたが、最終判断は学校が下し、不戦敗となった。監督自身も思わず涙するほど辛かった。それが昨年の7月28日のこと。ちょうど一年後、チームは準々決勝で勝利し、準決勝進出を決めた。そして準決勝の朝、前年度の主将、正代絢子さんから石原監督へ「昨日がちょうど(棄権した)その日でした。この一年、あの日の悔しさを忘れたことはありません。私たちの分も絶対に勝ってください」というメールが届いたという。辛かったことは痛いほどわかる。彼女たちの思いを胸に戦ってきたことを明かした瞬間だった。

 神戸弘陵は、『他喜力』の精神を大事にしている。日頃支えてくれている人たちのためにも思い切って良いプレーをしようと話しているが、今年は「OGたちの夢あった場所で弘陵のユニフォームを着て活躍すれば先輩たちも喜んでくれる」(石原監督)ことを信じ、2年振りの頂点奪還を目指し戦う。

甲子園は楽しい時間だった。OGも応援

 準決勝のこの日、昨年3年生だった3人のOGたちが観戦に駆け付け、後輩たちの戦いを見守った。松川凜愛さん、井上陽音さん、國富瑞穂さんだ。甲子園での決勝進出に「正直、羨ましい。けれど嬉しい」と話す。國富さんは2年前の決勝戦で甲子園の土を踏み、5番として出場、安打を放っている。「どんなプレーをしてもカバーし合えたし、楽しい時間でした」と振り返る。「悔いのないようにプレーして欲しい」とエールを送った。

左から、松川凜愛さん、井上陽音さん、國富瑞穂さん
左から、松川凜愛さん、井上陽音さん、國富瑞穂さん

(撮影は全て筆者)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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