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白鵬・照ノ富士が無傷で中日折り返し 両者に土をつけるのは誰だ?

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

白鵬・照ノ富士 危なげなく勝ち越し

中日を終え、今日から後半戦に入る大相撲名古屋場所。無傷で中日を折り返したのは、横綱・白鵬と大関・照ノ富士の二人。両者とも、ここまで落ち着いた相撲で白星を重ねてきている。向かうところ敵なし、といったところだ。

照ノ富士は、中日で翔猿と対戦。前日、白鵬相手に離れて見合う奇襲を仕掛けた翔猿は、この日も捕まえられないようにしようと試みているのが見て取れたが、照ノ富士の冷静さが上回った。終始、翔猿の巧妙な動きを封じ込めながら、最後は翔猿が出てくるところを狙ってうまくはたき込み、その動きに付き合うことがなかった。

白鵬は、初顔合わせの琴恵光を迎え撃つ。2007年3月初土俵の琴恵光。一方、その年の7月にはもう横綱に昇進していた白鵬。実力と経験の差を見せつけた。

立ち合いこそ張っていった横綱だったが、右から強烈におっつけて上手を取り、万全の状態で寄り切り。危なげない相撲で勝ち越しを決めた。

白鵬は、これで51回目の中日勝ち越しという、驚異的な記録もたたき出した。

誰が二人を倒す? 期待の力士たち

今日から始まる後半戦。すでに、千秋楽に組まれるであろうこの二人の直接対決が待ち遠しいが、それまでに両者に土をつける者は出てこないのだろうか。もし、二人に勝てるとしたら――筆者が予想してみる。

間違いなく候補の筆頭であった大関・貴景勝の休場は痛いが、照ノ富士に土をつけられる可能性があるのは、本人も「歳も近いし、”ライバル”といったら、彼しかいないかな」と語る、高安だろう。今場所は、場所前のぎっくり腰によって序盤3日間を休場していたが、4日目から出場。もちろん、万全の状態ではないだろうが、この両者は互いに取り口を熟知している。だからこそ、照ノ富士に対する高安は、いつも以上に堂々と、自信があふれて見えるのだ。

対戦成績は、照ノ富士の8勝12敗。照ノ富士の復帰後、直近5場所は高安の4勝1敗と分がいい。腰の調子だけが心配だが、もしかしたら今場所も、勝機はあるかもしれない。

対白鵬は、筆者は初顔合わせとなる新小結・若隆景に期待したい。今場所はまだ3勝5敗と苦戦しているが、これまで大関陣を下す場面は多々あった上、いま最も勢いに乗っているといえる。なによりあのまっすぐな相撲で、横綱にも向かっていってもらいたいと思うのだ。天下の横綱を相手に、結果につながるかどうかは難しいところだが、期待を込めて名前を挙げさせていただく。

また、もし当たれば、豊昇龍との取組も面白そうだ。こちらも、実現すれば初顔合わせ。中日に残念ながら3敗となってしまったが、ここからまた白星を重ねて右肩上がりとなれば、その勢いで横綱を倒しても不思議ではない。ずば抜けた身体能力を存分に生かし、思い切ってぶつかっていってもらいたい。

白鵬・照ノ富士の両者が、ため息が出るほど強いのは言うまでもない。今場所は、”世代交代”の場所になるかもしれないと思い、心して見始めたが、横綱がここまで意地を見せてくれている。二人はこのまま無傷で直接対決に臨むのか。それとも、名乗りを上げてくるほかの力士が現れるのか。期待を込めて、後半戦も見守りたい。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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