NYで「日韓と米の役割」を討論 「一息つきましょう」と米有識者 日韓共催、対立より対話を
史上最悪と言われるほど日韓関係が冷え込む中、「日韓関係の展望と米国の役割」をテーマとした討論会が12日、ニューヨーク市マンハッタン区で開かれた。米有識者ら2人が登壇し、現在の米政権下で日米、米韓それぞれの関係も変化しているとしつつ、「一息つきましょう」と日韓両国に落ち着くよう求めた。
(原題「Korea-Japan Relations and the US Role」)
「3国関係はかつてないほど重要」
討論会はニューヨークで活動する個人や企業の活動を支え、日米交流を図る日系コミュニティーのための非営利団体「ジャパン・ソサエティー」と、韓国系コミュニティーのための非営利団体「コリア・ソサエティー」が共催し、12日正午から1時間ほど行われた。両団体は「日米韓の通商関係」(2017年)など、過去にも共催イベントを開いてきたが、今年は日韓関係が悪化の一途を辿る中、例年にない雰囲気での開催となった。
パネリストは米外交問題評議会(CFR)日本担当のシーラ・スミス(Sheila Smith)氏と、2001~04年に駐韓米大使だったコリア・ソサエティー会長のトーマス・ハバード(Thomas C. Hubbard)氏の2人。
ハバード氏は冒頭、日韓の間に歴史問題などの「長年のトピックがある」としながら、昨今の北朝鮮情勢や北東アジアでの中国の台頭に鑑みて「日米韓3者間の協力はかつてないほど重要だ」(Trialogue cooperation between U.S., Japan and ROK is as important as has ever been…)と強調した。
元大使として長年外交の現場を見てきた経験を踏まえ、「日韓の問題がこれまで以上の困難や挑戦に直面しているとは思わない」(I don't think it is ever been more difficult or more challenging)と説明。一方で、いわゆる「慰安婦」など人道的な事案(問題)が、急速に通商分野に波及して2国間のみならず第3国を巻き込みながら影響を広げていること、ついにはGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄に至った結果を案じた。
スミス氏は米国の立場について、トランプ大統領が国益に照らして各国の同盟関係を再考、復元しようとしていると指摘し、「米国は過去と同じように支援できないかもしれない」(Quite obviously, the United States may not be able to help in the same ways as it has in the past.)と日米、米韓の同盟関係に微妙な変化が生じかねない状況を示唆した。
「一息つきましょう」
スミス氏はまた、昨今の日韓関係への懸念を示し、韓国政府による日本からの輸入食品の放射線検査強化などの事例を挙げ、別個の問題が一緒くたに扱われていると指摘。その混同の在りようを、「全てのことが2国間の緊張のかごに押し込まれている」(Everything is now being pushed into this basket of tension between two countries.)と説明した。
その上で、「一息ついて」(Take a breather)と繰り返し、「双方の政治指導者が立ち止まり、一息つく」(Both political leaders decide to stop, and take a breather…)よう促した。
ニューヨークは落ち着いているか
ニューヨークに住む日本人、韓国人は「一息ついて」落ち着いているだろうか。
討論会の会場となったコリア・ソサエティーの1キロほど南方には、「韓国人街」(Korea Town)と呼ばれる韓国系のお店が立ち並ぶエリアがある。
そこにある「Hマート」などの韓国系スーパーでは、日本のお菓子やお米、カレールウなどを多く扱う。韓国国内で沸き起こっているような不買運動の動きは、ひとまず出てきていない。
今回のような日韓共催の討論会ができる環境にあることも、落ち着きの表れと言えるかもしれない。
(※日時は米国東部時間、英語の発言部分は一部修正。討論会の様子はYouTubeで視聴できます。予告なくURLが変更になる場合があります)
(参考記事「報じられなかった韓国歴史博物館」)