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報じられなかった韓国歴史博物館 「慰安婦像」以外にあったのは…

南龍太記者
19世紀後半に米国を訪れた使節団

 米国に渡った韓国移民の歴史を紹介する博物館「Museum of Korean American Heritage(MOKAH)」がニューヨークのマンハッタン区にある。開館前の2017年10月、「慰安婦像」が設置されたことでニュースにもなった。その際「開館には数カ月かかる」とされ、実際18年にオープンした。しかし本来の趣旨である移民の歴史といった、慰安婦像以外の情報を紹介している日本語の記事は見当たらない。需要が少ないということかもしれないが、歴史がどのように紹介されているのかを知りたいと思い、訪ねてみることにした。

MOKAHの入るビル
MOKAHの入るビル

100年余りの歴史を時系列で追う

 MOKAHはマンハッタン・ミッドタウンの韓国コミュニティーの協会が入るビルの6階にある。19世紀後半から現在に至る移民の歴史を、時系列に沿って英語と韓国語で紹介している。

博物館の展示
博物館の展示

 冒頭は1882年に米国とKorea(Chosun)の外交関係が始まったと説明。83年に特使が訪米した背景を使節団の写真とともに伝え、同年にチェスター・アーサー第21代米大統領を表敬訪問したと記した。

 時代が下って徐々にニューヨークへの移民が増え、1921年には最初の韓国の教会ができ、コミュニティーが形成されていくきっかけになったという。太平洋戦争後48年の韓国誕生や続く朝鮮戦争を経て、米国への移民数は伸び、また留学生が目立つようになったと指摘している。

韓国から渡ってきた子どもたち
韓国から渡ってきた子どもたち

 60年には最初の韓国レストランがニューヨークにでき、社交の場として賑わったそうだ。65年の改正移民法により、米国はそれまでの出身国に基づく移民の受け入れ枠を撤廃し、東半球と西半球という大別に従って移民を受け入れる政策に転換した。これに伴い、「マイノリティーの人種や民族の構成が多様化した」と指摘、70年代を「大規模な移民(流入)期」と位置付けている。移民急増を背景に、79年には大韓航空によるソウル―ニューヨーク便が就航したことを大々的に伝えている。

 80年代は、在米2世、3世の誕生により韓国語教育の需要が高まり、語学学校ができ始めるといった新たな時代に入った。一方、韓国の商店主らが目指したニッチな市場では、従来アフリカ系住民が手掛けてきた市場とかち合い、韓国商品の不買運動が起きたとの過去も明かしている。さらに90年代には、今のマンハッタンのコミュニティーに加え、隣のクイーンズ区フラッシングやニュージャージー州にも相次いで韓国人街(Korea Town)、通称「Kタウン」が形成されたと説明する。

マンハッタンにあるKタウン
マンハッタンにあるKタウン

 2000年代に移民の潮目が変わったといい、従来の家族単位の移民が減った一方、就労ビザによる渡航者は増えたと指摘する。その後、「K-POPが人気を博した」といった、1世紀超にわたる歴史が壁伝いに示されている。

「K-POPが人気」と紹介している
「K-POPが人気」と紹介している

 こうした史実を大掴みに理解できることは、歴史に関心を持つ学習者や韓国にルーツを持つ人にとって有益な面もあるだろう。歴史紹介の中では、特に慰安婦などへの言及はなかった。

慰安婦像は別スペースに

 同じフロアには、そうした史料の展示に加え、別のスペースが複数ある。1つは韓国の民芸品や文化財を陳列したスペース、もう1つは韓国人協会の入るビルを28階建てにするといった構想を示すスペース、そしてもう1つが慰安婦像のエリアである。

文化財などの展示スペース
文化財などの展示スペース
設置されている慰安婦像
設置されている慰安婦像

 像の後ろの壁には「Comfort Women」についての説明書きがされている。この像が置いてあることによって、この施設が「単なる歴史の博物館」以上の意味合いを持っている感は否めない。

画像

(写真は筆者撮影)

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記者

執筆テーマはAIやBMIのICT、移民・外国人、エネルギー。 未来を探究する学問"未来学"(Futures Studies)の国際NGO世界未来学連盟(WFSF)日本支部創設、現在電気通信大学大学院情報理工学研究科で2050年以降の世界について研究。東京外国語大学ペルシア語学科卒、元共同通信記者。 主著『生成AIの常識』(ソシム)、今年度刊行予定『未来学の世界(仮)』、『エネルギー業界大研究』、『電子部品業界大研究』、『AI・5G・IC業界大研究』(産学社)、訳書『Futures Thinking Playbook』。新潟出身。ryuta373rm[at]yahoo.co.jp

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