警察が「手足縛った人形」を橋から落とす実験も 旭川殺害、実況見分の狙いは?
勾留期限まで残り10日を切る中、旭川女子高生殺害事件の捜査が新たな局面を迎えている。警察が約30人の捜査員を動員し、現場の橋で大掛かりな実況見分を行ったからだ。
警察は何を確認した?
実況見分は警察が犯行現場で行う任意の検証活動であり、距離を計測したり写真を撮影したりした上で、その結果を実況見分調書と呼ばれる書面に記録している。交通事故の現場で行われているのを見た人もいるだろうが、今回のような殺人事件で実施されることも多い。
ただ、警察は単に橋の長さや水面までの高さなどを計測しただけではなかった。注目されるのは、複数の警察官が橋の中央あたりで女子高生に見立てた人形を胸くらいの高さまである欄干の上まで抱えあげ、そこから下の川に落とすという実験を繰り返し行った点だ。
それも、手足がフリーな状態の人形だけでなく、「手足を縛った人形」まで落として確認している。さらには、橋の上に音量測定機まで設置し、落下の際の「バシャン」といった音の大きさまで測定していた。
約20分の間に何が?
こうした実況見分には被疑者を立ち会わせ、どこでどのような行動をとったのかとか、その際に相手はどこにいたのかといったことを指し示させ、写真撮影する場合が多い。しかし、警察は殺人容疑で逮捕した21歳の女と19歳の女を立ち会わせていない。
21歳の女は現場に防犯カメラがないと知っていたと供述しているものの、「女子高生を橋に置いてきたので、転落するところは見ていない」と弁解し、殺害への関与を否認しているという。しかし、共犯とされる19歳の女の供述内容は、これまで全く明らかにされていない。
一方で、警察は2人が現場に到着してから約20分の間に女子高生を転落させたとみている。これは2人が使っていたスマホの位置情報や幹線道路の防犯カメラ映像などから、現場に到着後、車で走り去るまでの時間を割り出した結果だろう。現場付近からは女子高生の衣類も発見されている。
警察の狙いは?
そうすると、警察によるこの実況見分には2つの狙いが考えられる。一つは、19歳の女も21歳の女と同様の弁解をして否認しており、現場で実験を行うことで、2人の弁解を覆す材料を得ようとした可能性だ。
例えば、女子高生と同じ身長や体重に合わせた人形を使うことで、2人の女の力で欄干の上まで抱えあげられるのか、どのような態様で転落、着水した可能性があるのか、その際の音の大きさや駐車場までの距離などからこの音に気づかずに去るということがあり得るのかといったことを現場で確かめる狙いが考えられる。
もう一つは、19歳の女が21歳の女と違って何らかの具体的な自白をしており、警察がその供述内容の信用性を吟味するため、遺体の損傷状況や現場の客観的状況などと矛盾がないか、実験によって裏付けをとろうとした可能性だ。
そうであれば、実況見分がこのタイミングになったのも理解できるし、否認している21歳の女を立ち会わせる意味もない。19歳の女も少年法で保護される年齢であり、その姿をメディアにさらさないため、立ち会わせないという配慮をしたのもうなずける話だ。
残された時間は少ないが、事件の真相解明に向け、詰めの捜査を急ぐ必要がある。(了)