「橋に置いてきた」と関与を否認 旭川女子高生殺害、殺人罪で起訴できる?
北海道・旭川市で女子高生を橋から川に落として殺害したとして逮捕された21歳の女が、警察の取調べに対して「橋に置いてきた」と供述し、関与を否認しているという。共犯として逮捕された19歳の女とそのまま帰ったので、女子高生が転落するところは見ていないという弁解だ。懸念していたとおりの展開であり、殺人罪で起訴できるか否かが問題となる事案にほかならない。
防犯カメラや目撃者なし
すなわち、現場の橋には女子高生のほか、主犯格とみられる21歳の女とその舎弟分だという19歳の女しかいなかった。しかも、21歳の女はここに防犯カメラがなく、人目に付かない場所だと分かっていたと供述しているという。未明の時間帯である上、場所が場所だけに、目撃者もいない。
こうした報道に接し、筆者が懸念したのは、結局のところどのようにして橋から川に転落することになったのか、具体的な状況を特定できるだけの証拠が2人の女の供述以外に存在しないのではないかという点だ。「突き落とした」という表現を使っている一部メディアもみられたが、転落させて殺害したという容疑にとどまっており、そこまで断定できるには至っていない。
それこそ、2人で女子高生を抱えて放り投げたのか、後ろから背中を押したのか、脅して自ら川に落ちるように仕向けたのか、暴行により意識を失ったので死んだと思いこんで川に捨てたら生きていて溺水により窒息死したのか、橋の上に立たせたらバランスを崩して落ちてしまったのか、転落の状況が「客観的」に特定できていない。しかも、女子高生を橋に残して帰ったという弁解だから、自殺や足をすべらせた事故の可能性を含め、ますます混沌とした状況となっている。
19歳の女の供述が重要に
そこで重要となるのが、共犯とされる19歳の女の供述だ。ただ、この種の事件では、逮捕までに口裏合わせが行われていたり、自らの行為や責任を相手になすりつけたりすることも予想されるので、たとえ自白したとしても、その信用性については慎重に吟味する必要がある。
現場付近からは女子高生のものとみられる衣類の一部が発見されており、証拠隠滅のために2人の女が捨てたとも考えられるが、まだ捜査中の段階だ。2人の女が女子高生の転落場面をスマホで撮影していれば決定的な証拠となるものの、もしこれがなく、19歳の女までもが21歳の女と同様の弁解をしていれば、捜査は大きな壁にぶつかる。
というのも、「疑わしきは罰せず」という刑事司法の大原則からすると、偶発的な転落による事故や女子高生の意思に基づく自殺ではなく、間違いなく2人の女が突き落とすなどした殺人事件であると断定的できなければ、殺人罪による起訴や有罪の獲得は難しいからだ。
一方で、21歳の女は事件後、複数の友人に「高校生に謝らせた」「その後、高校生は帰って行った」という趣旨のメッセージを送信しているという。「橋に置いてきた」という弁解とは明らかに矛盾する。警察には最後まであきらめず、徹底した詰めの捜査を進め、真相の全容解明が求められる。(了)