文科省局長逮捕とオウム死刑執行に引っかかるのはなぜか
フーテン老人世直し録(381)
文月某日
西日本豪雨被害の惨状は雨がこれほど恐ろしいものだということを教えてくれた。7年前の東日本大震災の津波被害に次ぐ自然の恐ろしさを日本人は味わった。一日も早い復興に政治が全力を上げて取り組むよう願わざるを得ない。
ところでこの豪雨被害によって記憶が薄れがちだが、6月12日の「米朝首脳会談」から7月6日の「大雨特別警報」までの出来事にフーテンは引っかかるものを感じている。加計孝太郎理事長の記者会見、文科省局長の裏口入学容疑逮捕、そしてオウム死刑囚らの死刑執行のタイミングについてである。
6月12日の「米朝首脳会談」の結果は、おそらく安倍総理の期待を裏切るものであった。5月末にトランプ大統領がいったん「会談中止」を発表した時、世界の首脳の中でただひとり「支持」を表明した安倍総理にとって「北朝鮮との融和」は悪夢でしかない。
ところがトランプ大統領が6月12日に見せた態度は明らかに「北朝鮮との融和」だった。会談後の記者会見でトランプは世界が残酷な独裁者と見ている金正恩を褒めちぎり、米国が軍事オプションを採れば「2000万人が死ぬ」と明言し、北朝鮮との間に信頼関係を築く以外に非核化の道はないと主張した。
安倍総理がトランプに「お願い」をした米朝首脳会談での拉致問題への言及はあった。それに金正恩は「オープンだ」と応えて会談の可能性を示唆した。また安倍総理が強く主張する「制裁」は非核化が達成されるまで続けることにもなった。
しかし制裁継続にどこまで実効性があるのかは疑問である。米朝首脳会談で作られた流れは北朝鮮を追い詰めるより信頼醸成に力点が置かれた「太陽政策」なのだ。「北風」を主張してきた安倍総理はトランプによってはしごを外された。
トランプに「すり寄る」だけで「外交に強い」と思われてきた安倍総理はトランプの「太陽政策」を批判できない。ではトランプを見習って自分も「太陽政策」に転ずることが出来るか。過去に植民地支配をした日本の総理はまず過去の贖罪から始めなければ「太陽」に転ずることはできない。
一方で拉致問題を米国に「お願い」することで努力のポーズを見せてきた安倍総理は、その「米国カード」を米朝首脳会談で使ってしまった。後は自分で解決するしかない。政権の最重要課題と位置付ける拉致問題をどうするのか。そこにフーテンは注目した。
安倍総理は米朝首脳会談2日後の14日に拉致被害者家族会のメンバーと面会し「日朝首脳会談で自らが解決する決意」を伝えた。16日に出演したテレビ番組でもそう述べた。総理周辺からは9月にロシアで開かれる「東方経済フォーラム」か、ニューヨークでの国連総会の時に「日朝首脳会談」が開かれるという情報がリークされた。
しかし交渉は「会いたい」と望めば望んだ方が負ける。総理が直接「日朝首脳会談」を口にすれば相手に付け込まれるのが関の山だ。北朝鮮は当然ながら日本批判のトーンを上げ始めた。通常なら水面下のパイプが機能するところだが、「北風政策」の安倍政権に北朝鮮とのパイプがある気配はない。
安倍総理は苦しい立場に追い込まれたとフーテンは見ていた。すると6月19日に加計学園の加計孝太郎理事長が突然記者会見を行い、次に7月4日に文科省の局長が息子の裏口入学疑惑で東京地検特捜部に逮捕され、6日にはオウム真理教の松本智津夫ら幹部7人が突然死刑執行された。
それが米朝首脳会談の結果と連動しているかどうかは分からない。分からないがフーテンは何か引っかかる。従って想像の域を脱しない話になるが、引っかかる部分について書くことにする。
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