通常国会からのもやもやした不満は来年の参議院選挙に現れる
フーテン老人世直し録(383)
文月某日
通常国会が閉幕して1週間が経った。この国会を国民はどう見たか。国会閉幕後に行われた最初の世論調査は安倍内閣にも与党にも厳しく、さらに看板だった働き方改革関連法にもカジノ法にも参議院の選挙制度改革にも反対の国民が多かった。
安倍政権に最も近い立場の産経新聞とフジテレビの合同世論調査では、内閣支持率が前回調査より2.5ポイント下がって42.1%、不支持は1.7ポイント上がって47.3%と不支持が支持を5.2%上回った。
政党支持率も自民党が前回より2.4ポイント減の37.3%、公明党は0.6ポイント減の2.7%である。政党支持率が下がったのは延長後の国会で働き方改革関連法とカジノ法、それに参議院の選挙制度改革を強引に成立させたからとみられる。
働き方改革を期待すると答えた者は43.5%、期待しないは48.2%で期待しないが上回っている。カジノで経済効果を期待する者は31.3%だが、期待しないは62%と2倍である。参議院の選挙制度になると賛成は26.5%しかおらず、反対は60.8%と倍以上になった。
安倍政権を支持するフジ産経グループの調査がこの結果だから国民は通常国会に満足していない。しかも参議院の選挙制度に反対が多いのは来年の参議院選挙に影響する可能性がある。選挙戦になれば自民党の党利党略で成立した制度が批判され、それが自民党支持者の心理にマイナスの影響を与える。
にもかかわらず国会閉幕直後に岸田政調会長は9月の自民党代表選挙に不出馬を表明した。安倍総理の3選を支持するというから「禅譲」狙いとみられる。もう一人の候補者になるはずの野田総務大臣にはスキャンダルが浮上した。その結果、総裁選挙は安倍総理対石破元幹事長の一騎打ちと見られ、早くも安倍総理の圧勝との見方が強まっている。
安倍総理は「森友・加計疑惑」を抱える身だから権力を手放すことは絶対にできない。手放せば何が襲ってくるか分からないのが政治の世界の恐ろしさである。総理を辞めれば下手をすると議員辞職に追い込まれる可能性だってある。
従って権力者が自ら辞める時には次の権力者に身の安全を保障してもらう必要がある。次の権力者に絶対忠誠を誓わせることが「禅譲」の条件なのだ。これまで「禅譲」があったのは中曽根総理が竹下登氏を後継指名したケースだが、中曽根氏は竹下氏の「古傷」に塩をすり込んで絶対忠誠を誓わせた。
それに反対して自力で総裁選に勝つことを主張した金丸、小沢氏らと竹下氏の間に溝が生まれ、それが後に選挙制度改革を巡る対立になって自民党最大派閥を分裂させた。ともかく「禅譲」とは甘い話ではない。岸田氏の判断の背景に何があったのか分からないが相当にシビアな話があった可能性はある。
安倍総理は総裁選挙で勝利してもそれで安心する訳にはいかない。来年の参議院選挙で敗北すれば総理を辞めざるを得なくなる。第一次政権で安倍総理は参議院選挙に大敗しても続投を表明して総理の座に居座った。その結果、ぶざまな退陣を演ずることになった経験がある。過ちを繰り返すわけにはいかない。
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