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投票日はケーキ食べ放題の国がある

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
北欧アイスランドの人々は、投票日を盛大に楽しんで祝う 撮影:あぶみあさき

「投票日はケーキがたくさん食べられるよ」

アイスランドの各政党を取材中、この言葉を私は何度も聞いた。

「ケーキやお菓子、おいしいものが食べられる日だよ」「お祝いだから」と。

「何を言っているんだろう」と私は思っていた。

9月、アイスランド国政選挙の取材に来ていた私にとって、滞在中は毎日がカルチャーショックの連続だった。

「投票日はケーキでお祝いする」も、間違いなくそのひとつだ。

各政党が選挙期間中に街中に出す選挙オフィスは、投票日に姿を変える。

まさにカフェやレストランでの「食べ放題」

投票日甘いものをたくさん食べる国ランキングをするなら、北欧の中でアイスランドが間違いなく王者だ。

特に豪華だったのは断トツで社会民主同盟!

実は社会民主同盟の政党オフィスはコロナ対策を理由にほとんどの日は一般開放されていなかった。「こんなに市民と会うチャンスを逃して大丈夫なのかな」と思ったが、投票日は政党の旗をだしてオフィスを開放
実は社会民主同盟の政党オフィスはコロナ対策を理由にほとんどの日は一般開放されていなかった。「こんなに市民と会うチャンスを逃して大丈夫なのかな」と思ったが、投票日は政党の旗をだしてオフィスを開放

現場で目にした大量の食事を皆さんにシェアしたい。

この国では「手作り」に徹底的なこだわりがある。店で購入する人もいるが、忙しい時期にも関わらず政治家も党員も自宅で料理をして持ち運ぶ。

甘いケーキに見えるが、実はケーキの形をしたサンドイッチ・野菜たっぷりの食事ケーキ
甘いケーキに見えるが、実はケーキの形をしたサンドイッチ・野菜たっぷりの食事ケーキ

ちなみに私はケーキの取材にきたわけではない。

この後は他の政党の選挙オフィスも取材に行きたかった。だから全部を試食したり、ケーキの名前をひとつひとつメモする余裕はなかった。

北欧のお菓子研究をしたい人には天国だろう。

ノルウェーでは見かけないラベンダーケーキというのもあった
ノルウェーでは見かけないラベンダーケーキというのもあった

デザートだけではなく、ランチやパンもある
デザートだけではなく、ランチやパンもある

子どももたくさん来るので、ジュースやお菓子も
子どももたくさん来るので、ジュースやお菓子も

これが全てではない。出席者はどんどん食べるので、出された食事はすぐになくなる。次々と新しいメニューが運ばれてくる。

テーブルには市民や政治家、党員が自由に座っている。すでに事前投票をしたという市民も、お祝いの共有したくて足を運ぶ。

選挙の話をしたり、関係のない話をしたり、わいわいと楽しそうだ。会場には笑い声が響く。

投票日当日も選挙運動は盛んにおこなわれる国なので、「この後は市民に投票しようと電話するよ。休憩にきたんだ」という党員もいる。

投票日に笑顔の大人を見て育つ

子どももたくさん!
子どももたくさん!

子どもはこうして投票日を笑顔で楽しむ大人を見て育つ。この国の人が自然と投票に行くようになることが不思議ではなくなってきた。

立候補するお母さんを応援に家族で応援にきた
立候補するお母さんを応援に家族で応援にきた

会場の出入りは厳しく管理されているわけでもなく、誰もが自由にこの場所を出入りできる。

現地の国会議員が語る「投票日はお祝い、家族の日」

特に熱心に取り組んでいる政策はジェンダー平等だと話したヘルガドッティル国会議員
特に熱心に取り組んでいる政策はジェンダー平等だと話したヘルガドッティル国会議員

私が夢中でケーキの写真を撮っていると、話しかけてくれたのはヘルガ・ヴァーラ・ヘルガドッティル国会議員。彼女もケーキを手作りしたという。

あぶみ「ここで何が起きているか教えてくれますか?」

ヘルガドッティル国会議員「みんなのためのカフェを開いているんです。今日は投票日。政党の人たちがケーキをたくさん持ち寄るんです」

あぶみ「政党を支持していない人も出入りして、ケーキを食べられそうですね?」

ヘルガドッティル国会議員「もちろん!オープンハウスですから、全く問題ありません。アイスランドでは投票日に市民がいろいろな政党オフィスを訪問するのが普通ですから。このパーティーに参加するのに、党員である必要はありませんよ」

あぶみ「政治を楽しんでいますか?」

ヘルガドッティル国会議員「ええ!社会が成長する手助けができますから」

あぶみ「アイスランドで投票率が高い理由はなぜだと思いますか」

ヘルガドッティル国会議員「カルチャーだからかもしれません。子どもの頃から、投票日は親におしゃれをさせられていました。今日も会場には私の子どもや孫も来ています。家族みんなで一緒にお祝いする日。人権ですね」

彼女の口から、投票日はカフェであり、パーティーであり、家族の日であり、おしゃれをする日であり、人権だという言葉が次々と飛び出した。

北欧の人々は、選挙を楽しむ天才だなと改めて思う。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在16年目。ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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