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JR北海道の6月までの輸送実績を発表 帯広方面・旭川方面の特急利用者は好調

鉄道乗蔵鉄道ライター
札幌駅(写真AC)

 2024年7月17日、JR北海道は4月から6月までの第一四半期の輸送実績を発表した。

帯広、旭川方面は前年を上回る

道内主要3線区の東室蘭―苫小牧、南千歳―トマム、札幌―岩見沢の特急列車、そして北海道新幹線のうち東室蘭―苫小牧のみが前年比98.7%となり唯一、利用者減となったことは、2024年7月17日付記事(JR北海道が6月までの輸送実績を発表 東室蘭―苫小牧のみ特急列車の利用者減 特急すずらん改悪の影響か)で触れているが、帯広方面の南千歳―トマムは前年比107.1%、旭川方面の札幌―岩見沢は104.0%、北海道新幹線は104.8%といずれも前年を上回った。コロナ禍の影響がない2019年4~6月との比較においては道内主要3線区で8割程度、北海道新幹線で9割程度まで回復している。乗車時間が長い帯広・釧路方面についてはえきねっとも比較的普及しているという見方もできる。

 旭川方面の札幌―岩見沢間については、札幌から旭川、名寄までの主要駅間の自由席往復割引切符Sきっぷの販売は継続しているものの、札幌―旭川間を結ぶ特急カムイ・ライラック号の自由席を減らしたことから、少ない自由席に乗客が集中する状況が続いている。

新千歳空港駅はコロナ禍前の実績を超える

 さらに、新千歳空港駅の乗降人数については前年比106.8%となっており、3月のダイヤ改正で毎時5本から毎時6本に増発した快速エアポート号の利用が好調だったことも伺える。なお、コロナ禍前との比較でも100.1%となっており、空港アクセス需要は完全に回復したともいえる。

 4月から6月の全体の収入状況は約172億円と対前年比の104.2%と約7億円の増収になったと発表されている。

快速エアポート号(写真AC)
快速エアポート号(写真AC)

それでも札幌都市圏も万年赤字体質

 しかし、JR北海道は、人口約250万人を擁する札幌都市圏においても赤字の体質は変わらず、2022年度の決算では札幌都市圏だけで約71億円の赤字、2023年度の決算では30億円の赤字を計上している。2023年度の輸送密度の実績でいれば快速エアポート号も運行されている千歳・室蘭線の白石―苫小牧は44,729人/日で、札幌都市圏で最も輸送密度が低い学園都市線でも15,225人/日の実績がある。地方私鉄であれば、鉄道事業の損益分岐点の目安となる輸送密度が1,500人/日程度となっている路線もあることから、JR北海道の事業構造には改善すべき構造上の問題があるのは明白だ。

 JR北海道は2025年4月に運賃の値上げを予定しているが、こうした事業構造上の問題を放置したうえで、値上げに踏み切れば一部で客離れを起こし、また足りなくなくなった分の収入を値上げでカバーしなければいけないという負のスパイラルに陥りかねない。現時点でも、「家族4人で北海道内を旅行するときにはJR北海道の運賃は高すぎるのでクルマを利用せざるを得ない」という道民からの声も聞く。

 「財界さっぽろ」2024年8月号では、国土交通省はJR北海道への監督命令と財政支援とともに、国土交通省幹部をJR北海道に役員として送り込み、その直下に弁護士や企業再生の専門家からなる「経営改革チーム」の設置を検討していたが頓挫したという報道が出ていたが、外部の「経営改革チーム」による事業構造のブラックボックスを解明と改善がJR北海道の経営改革には欠かせないのではないか。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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