JR北海道が6月までの輸送実績を発表 東室蘭―苫小牧のみ特急列車の利用者減 特急すずらん改悪の影響か
2024年7月17日、JR北海道は4月から6月までの第一四半期の輸送実績を発表した。道内主要3線区の東室蘭―苫小牧、南千歳―トマム、札幌―岩見沢の特急列車、そして北海道新幹線のうち東室蘭―苫小牧のみが前年比98.7%となり唯一、利用者減となった。帯広・釧路方面の特急とかち・おおぞら号は好調の様子であるが、東室蘭―苫小牧が利用者減となったのはこの区間を含む札幌―室蘭間を運行する特急すずらん号の改悪が影響しているものと思われる。
3月の改悪から空気輸送とSNSをにぎわせる
特急すずらん号については、3月のダイヤ改正で自由席を廃止し全席の指定席化を実施。さらに往復割引切符の窓口での販売を廃止し、割引切符はえきねっとに一本化。えきねっとでは、前日までの予約が必要のうえ、発券後の変更ができないなど使い勝手が悪くなったことから、3月のダイヤ改正以降、客離れが深刻化し、SNS上には空席の目立つ特急すずらん号の車内の様子が相次いで投稿される事態となった。
特急すずらん号は、ダイヤ改正前までは当日利用が可能な自由席の往復割引切符が往復約5000円で利用できていたが、ダイヤ改正以降は正規運賃・料金で往復約1万円と、これまでの往復割引切符の2倍近い値上げとなったことから、客離れが加速したものと思われた。ゴールデンウイーク明けの5月15日に行われた綿貫社長の定例記者会見の場では、記者から特急すずらん号の乗車状況に関する質問が相次ぎ、綿貫社長は「すずらんは前年比80%ほど。全車指定席の影響が出ているとみている」、続けて「高速バスや普通列車に流れていると想定している」「割引切符を廃止したことも若干影響があるのかなと思っている」と回答した。さらに、6月11日に行われた綿貫社長の定例記者会見の場では、「すずらんに乗ってもらうための対策はこれから検討していく」「安くご利用というニーズが強いのであれば、特急でなくてもいいと思う」と発言。すずらん号の特急列車から快速列車などへの格下げについても含みを持たせた。
しかし、特急すずらん号の快速列車などへの格下げは、それこそ客単価の減少を招きさらに収支状況を悪化させるのではないだろうか。札幌―室蘭間については高速バス運賃との比較などから、乗客に受け入れてもらいやすい適正価格は片道2500円から3000円程度と考えられ、さらに、えきねっとでは切符を買いにくくなったことから、そもそもは値付けと販売方法の失敗が客離れを招いた本質的な要因と考えられる。
社長発言は問題の一面にしか目が向いていない?
綿貫社長の「安くご利用というニーズが強いのであれば、特急でなくてもいいと思う」という発言は、値付けの問題にしか言及しておらず、販売方法の問題については意識が向いていない印象を受ける。この問題の本質を探究し本気で課題解決に取り組む意思があるのだろうか。「財界さっぽろ」2024年8月号での報道によると、国土交通省はJR北海道への監督命令と財政支援とともに、国土交通省幹部をJR北海道に役員として送り込み、その直下に弁護士や企業再生の専門家からなる「経営改革チーム」の設置を検討していたが頓挫したという。
JR北海道の現状は外部の意見が経営に反映されるとは言いがたい状況にあり、特急すずらん号の利用者低迷は何ら手を打たないまま現在も放置され続けている。果たして、このような組織体に自浄作用を期待することはできるのであろうか。
(了)