【河内長野市】まるで高級旅館のロビーです!ゆずとハスで有名な盛松寺の庫裏が寺子屋として復活します
河内長野で庫裏といえば、観心寺にある人気精進料理のお店「観心寺KU-RI」を連想するかもしれません。しかし、庫裏(くり)とは本来寺の台所であり、住職とその家族が居住する場所という意味合いがあります。
そして、河内長野楠町西にあり、夏のハスの花や冬至のゆず味噌で有名な盛松寺さんの庫裏が、このたびリニューアルして、「寺子屋」として開放するという情報を入手しました。
「與通大師(よつたいし)」ともいわれる盛松寺といえば、ゆずの寺として有名で、冬至の前に関係者が集まって食品工場のようにゆず味噌を作って参拝者に授けることでも有名です。由来は弘法大師こと空海が「冬至にゆず味噌をつくって食べると疫病にならない」という伝承に基づくものです。
また盛松寺と言えば、夏のハスが美しいことでも有名ですね。そんな盛松寺が、庫裏をリノベーションして寺子屋にするというのですから、「これは行かなくては!」とお願いして訪問しました。
訪問したのは7月下旬、ちょうど夏の盛りでしたのでハスの花が美しく咲いていました。境内には130鉢あるそうです。
坂を上がると、盛松寺の境内に到着しました。
さて、この日はイベントが行なわれていました。NPO法人森林ボランティアトモロスさんが出店されていたのです。
この日は、「創作クラフト展示・販売」を行っていました。木を使った個性豊かなクラフト製品が展示されています。
ちなみにトモロスさんは、8月4日もイベントがあります。10時から「ぶんぶんゴマ造り体験」というワークショップがあります。これは無料で参加できます。
お子様の夏休みを一緒に過ごせたらという願いがあります。
さて、今回は本堂ではなく庫裏のほうに向かいます。場所は本堂から見て右側にあるこちらの建物です。
手前にハスの花、その奥の建物に丸いガラス窓がありますね。実に美しい眺めです。
さて、さっそく中に入ると、玄関から驚きです。床に瓦を埋め込んで文様を描いていたのです。
そして中央にあるのは、盛松寺の象徴ともいえるゆずを瓦で表しています。
中を見てさらに驚きました。ダークグレーの壁に渋い木製の建具たち。過去に京都中心部で宿泊したことのある寺院と一体化したホテルのロビーを思い出しました。シックな洗練さの中におしゃれさを感じました。
ミュージアムのようにもカフェのようにも感じる空間です。
正面の棚も素晴らしいですね。今回は盛松寺の高橋成明住職夫妻から庫裏の案内とお話を伺いました。
天井は以前からあるものを使っているそうです。住職の話では2018年の台風で庫裏の屋根が壊れことがリノベーションのきっかけになったとのこと。ちなみに2018年の台風とは大型船が関空の橋にぶつかって、しばらく関空が使えなくなったときです。
工事は、ほぼひとりの大工さんの手によるものなので、2024年の夏までの2年かけてリノベーションしたそうです。
玄関の後方のコーナーは、扉を開けると茶室のようになっています。
そしてメインフロアの奥は、寺院らしく仏像が並んでいます。
リノベーションする前から仏間にあったという仏像は、阿弥陀如来です。
住職の話では、この仏像は非常に由来のあるものです。住職はチベット仏教の研究を若いころから行っていて、大学院時代にダライ・ラマ14世に会ったことがあり、その時に直接手渡された仏像とのこと。
ちなみにこちらの涅槃仏は個人の家にあったもので、先代住職が預かったそうです。
「今は暑いからどうぞ」と、寺族の方が私のためにウェルカムドリンクの桃ジュースを用意してくださいました。
さて、リニューアルした庫裏は「寺子屋」として運用が始まりました。その中のひとつが「お香体験」です。7月16日に第一弾が開催され、第二弾は7月30日。この日はすでに定員いっぱいですが、今後も随時実施していくとのこと。
盛松寺と言えばゆずですが、お香体験で使うこちらの器もゆずの形をしています。
お香の体験プラス抹茶体験がセットになっている体験講座で、定員6名でひとり3,500円とのこと。
お香体験は、ワークショップだけでなく、完成したお香と匂い袋などのお土産付きです。この高級旅館のようなシックで落ち着く雰囲気の中での体験は、きっと良い思い出になるのは間違いないと思いました。
盛松寺さんは真言宗の寺院ですが、先ほど触れた通り、住職はチベット仏教の研究をしていたことがあるそうです。これは一見、真言密教とは無縁のように見えますが、そうではありません。
住職の話では、空海が唐に渡り、師匠である恵果阿闍梨(けいかあじゃり)から密教を教わり日本に伝えました。住職はそれから1歩進んで、密教の原典、サンスクリット語で書かれた内容を自ら読みたいと、勉強をしていったそうです。
原典はインドから中国を経由して日本に来たもの。翻訳ではなく原文を解読することで、最も近い教え、思想を理解しようということだったのです。というわけで住職は仏教の原典に近いものが残っているチベット仏教の研究を行っているそうです。
その関係もあって、住職は、講師として高野山大学などの教壇に立つことも多いそうですが、住職は「若者に理解させるのがなかなか難しいのも事実」と言います。そんな中で、盛松寺境内に咲くハスの色から思うことがあったとのこと。
「赤いハスの花の色は、観音菩薩の慈愛や思いやりの心を象徴する」との言い伝えから、慈愛の表現の場所として、寺の敷地内で人が集まれる場所として寺子屋を開設したいという結論にいたったそうです。
実は、その昔、盛松寺も小山田小学校ができる前は寺子屋としての役目を担っていました。「令和の今、本来の寺の役目のひとつである寺子屋の精神に戻りたい。それは人に寄り沿った思想の寺であり続けることが不可欠」と、住職は力強く語りました。
住職は、将来的にはチベット仏教のことを話する機会も寺子屋でやってみたいそうです。「住職からの講話」という堅苦しいものではなく、もっとざっくばらんに仏教の話を参加者とできればということでした。
また「もっと盛松寺のことを多くの人に知ってもらいたい」という考えもあります。今でこそゆずとハスの寺として有名になりつつある盛松寺ですが、かつては近所の人もその存在を知らなかったそうなのです。
有形の誇れる文化財がないけれど、ゆず味噌づくりの伝統を「無形文化財」のようにして残せたらという思いもあります。
今でも境内にはゆずの形をした「柚子みくじ」があり、また柚子絵馬があります。歌手の「ゆず」のファンの方も聖地巡礼として参拝に来られたこともあるそうで、住職は「いつかご本人が来られることがあれば」と言っていました。
柚子だけでなく、本物のハスを加工して作ったブローチや虫よけスプレー作りなど、いろいろな作品を作り出しています。
「あそこはかつての山門だったんです」と住職が窓の方を指さしました。盛松寺さんは、車でも上がれる坂道が参道と思っていましたが、元々は階段の参道があったそうです。しかし、がけ崩れがあって今は通行できなくなっています。
「すぐは無理だけどいつか本来の参道、山門も再現できる機会があれば」と住職夫妻が将来の展望を考えておられたことが印象強かったです。
かつて和泉の施福寺に向かう途中で、空海が昼休憩にした場所に建ったという伝承を持つ盛松寺が、台風での半壊がきっかけで、学びの原点である寺子屋が復活するというのは、素敵な話だと思いました。
さて、盛松寺さんの直近のイベントは8月4日です。抹茶のお香「碾茶香(てんちゃこう)」の販売、ハスの花托(かたく:花の雄しべ・雌しべを支えている部分)を使った手作り体験や多肉植物の販売を行います。あと、最初にも触れましたが、トモロスさんのワークショップもあります。
余談ですが、トモロスさんでは9月に森林ボランティア講座を行なっているとのこと。森林のことやボランティア活動に興味のある方は、トモロスさんに問い合わせてみてはいかがでしょう。申し込みは8月14日までだそうです。
仏日山盛松寺(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市楠町西1211
TEL:0721-53-3037
アクセス:南海千代田駅から徒歩4分
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