お金がなくてランチが食えない会社員が3割もいる 会社と個人、対策は何か
会社員の3割はランチを食べるお金もない?
私は29歳まで会社員でしたが、まだ給料は低かったうえに衝動買いをするタイプだったので、しばしば「昼飯代がない!」ということがありました。お昼休みになると、とりあえず職場は出て(デスクにいて何も食べない1時間を過ごすのは逆に目立つので)、麹町界隈を散歩したものです。ブラタモリでネタになるような、地形が楽しいエリアですが、当時は陰鬱とした気分で歩き回った記憶があります。
今、会社員の3割がランチを食べるお金がない、としたらどう思われるでしょうか。エデンレッドジャパンが行った「ビジネスパーソンのランチ実態調査」というデータによれば、ランチの欠食経験について29.5%がランチを食べなかったことがある、という回答をしたそうです。
エデンレッドジャパン ビジネスパーソンのランチ実態調査
この回答だけなら、「たまにはそういうこともあるじゃないか」となるわけですが、欠食頻度についてこの3割の回答者にたずねた設問はもっと驚きです。
となり、少なくとも週2以上のランチ欠食者の割合は43.5%にもなるのです。健康法として1日2食という人もあるかもしれませんが、この場合は「週に6回以上」の一部になりそうで多数派ではありません。週に2回以上コンスタントに欠食している人が何割もあるとすれば、これはちょっと気になる数字です。
同調査は欠食理由についてもたずねていて、気になるのは「お金がない」の回答が33.9%あることです。最多は「時間がない」67.2%ですがこれに次ぐ数字です。また、20歳代の回答に限れば、33.9%から47.8%まで大幅に上昇します。
お金の問題がお昼ご飯をガマンさせているのなら、ちょっと心配です。
(時間がない、が1位というのはちょっとブラック企業の匂いがしますね……)
物価高も少なからず影響?
本調査、調査した時期が2021年12月と半年以上前のことです。しかし、吉野家の値上げなど値上げトレンドが始まった時期でもありました。飲食店の値上げが勤務日のランチに影響を与えているかという質問には37.0%が影響ありと答えています。この数字、今なら半数以上が影響ありと回答するでしょう。
食品やガス、電気代などの値上がりは、多くの品目で10%以上に達しはじめており、価格転嫁しなければ、お店は自らの利益が減ってしまうことになります。値上げそのものはやむを得ないことです。
しかし、給料がアップしなければ家計としては負担増に直結、あるいは貯金等の将来の余裕作りを削ることになってしまいます。
最悪の場合、キャッシング等の利用によって一時しのぎをし、将来にツケを先送りすることになります。もちろん来月以降に給料が上がる保障はないので、さらに借入をしたり借入残高が積み重なっていきます。
インフレ時に値上げとあわせて必要なのは物価上昇に見合うほどの経済成長と賃金上昇ということになりますが、賃上げが期待できるのは来年春以降(一般に昇給は年に一回)なので、今が苦しい時期になっています。
それでも今、できる対策を3つほど考えてみます。
ランチ欠食会社員のための3つの対策
1.個人の家計管理と節約
第一に考えるべきはやはり、家計管理でしょう。毎月の給料の範囲でできるだけやりくりできるよう工夫はしてみる必要があります。
週2回を欠食しているとして、吉野家の牛丼(並)と考えれば週に852円の節約ができればこれを補うことができます。
- 朝食の惣菜パンや菓子パンを食パン6枚切り+ジャムなどに代えて削る(週500円くらい)
- 自宅での飲み物は水出し茶に代え、外出時の飲み物は100円自販機かスーパーで買う(週400~500円くらい)
- カップ麺の日、おにぎりだけの日、を週に1~2日設定して、ランチ代を削って「欠食日」に回す(週200~400円くらい)
- ダイエットを気にしているなら、間食のお菓子の量を半分に減らす(週に400~500円くらい?)
などなど、あらゆるところを削ってみましょう。もちろん食費だけではなく、「なんとなくガチャ回す」とか「スマホゲーのコインに課金」のようなものも削ってみてください。まずは3食の確保が最優先です。
2.転職による時給アップ
次に考えてみたいのは、転職による時給アップです。こちらは即効性はありませんが、成功すれば大きくプラスになります。
転職活動というとつい身構えてしまいますが、とりあえずスマホに転職情報アプリをいくつか入れて、基本情報まで入力するだけでもOKです。夏休みでヒマな時間があれば、数時間ぐらい検索条件をいじってみるといいでしょう。
年収が低い人の何割かは「あなたには能力があるのに、低賃金であきらめている」という人です。思ったよりいい条件の検索結果が出るなら、面接に行ってみましょう(内定が出るまで今の会社を絶対に辞めないこと)。
バイトやパートの場合は、時給が頭打ちするのでベテランほど能力見合いでは安くこき使われていることになります。正社員登用制度があれば一度真剣に考えてみてください。ただし、形だけの制度で実際には正社員になるチャンスが低い会社もあるので、そういう会社は飛び出すほうがいいでしょう。
若い人ほど、能力の向上があるのに、年収のアップがそれに伴わないことがしばしばです。最初からあきらめず、挑戦をお勧めします。
3.会社の賃上げや手当増
3つめは個人レベルの対策ではなく、会社側にお願いしたい対策です。
今回の調査会社は食費補助サービスを企業に提供していますが、会社が昼飯を食えるくらいの給料や手当を払ってあげる、というのは重要な選択肢のひとつです。
大きな会社や工場では社員食堂が用意されており、低価格で健康的なランチが提供されています。社員証のICカードでランチ代を決済し、給与からまとめて引くような会社もありますが、家計管理がまだ上手ではない若い世代にとっては助かる仕組みです。
賃上げは年に一回というのも低インフレが続いた時代の話ですから、こうした急変時には「年度内賃上げ」があってもいいはずです。
特に値上げに踏み切って、売り上げや利益の確保に成功した会社は、賃上げについても検討をしてほしいところです。労働組合がある会社では、組合の活動にも期待したいところです。社員の声をあげてこその労働組合なのですから。
物価上昇を抑え込むのではなく、賃上げにつなげたい
先日の選挙でも争点として「物価対策」という言葉が飛び交いました。ただし物価だけを押さえ込むというのはあまりいいアプローチではありません。
値上げに歯止めをかけるような見かけ上の物価対策はむしろ企業の売り上げや利益を縮小させ、結果として賃上げの余裕も失うことになります。
そもそも世界中で食料品や鉱物資源の価格が高騰しています。食品も工業製品もその分の値上げは避けようがありません。ウクライナ危機もさらに影響しています。
過度な円安基調については経済政策によりある程度解消かもしれませんが(少なくとも日米の政策金利の大幅乖離がある限り円安には歯止めがかからない)、それは表面的に国内の物価上昇を抑える対策ではないはずです。
会社員個人のランチ欠食傾向は、もしかすると個人のマネープランを超えた、国家レベルの議論をも必要としているのかもしれません。
でもまずは、個人としてやるべき対策はやっておきたいところ。まずは家計の見直しからスタートして「ランチ代確保」のミッションに取り組んでいきましょう。