すかいらーくなど、プラスチック製ストロー廃止の動き&海外の取り組み
日本の外食大手すかいらーくが環境を配慮して、国内で初めてプラスチック製ストローを2020年までに全廃すると発表した。同社では紙製ストローなどの代替品を使わず、ストローの提供自体をなくすという方針を打ち出している。これを受け、国内の声は「環境配慮と言いながら、コストカットしているだけでは」「エコには繋がらない」など、ストロー廃止について批判的な意見もあるようだ。
プラスチックのごみによる環境や海洋汚染は世界的に深刻な問題で、喫緊の課題として各国が真剣に向き合い始めている。アメリカ・シアトル市は今年7月1日、全米で初めて、市内の約5,000の飲食店でプラスチック製ストローやカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーンなど)の提供を禁止した。
また同市ではこれに先駆け、廃棄ストローで汚染された海をきれいにするための「Strawless in Seattle」(ストローレス・イン・シアトル)キャンペーンも立ち上がっている。主宰団体のLonely Whale(ロンリー・ウェイル)財団によると、全米では毎日5億本のプラスチック製ストローが消費されており、年間1,200万トンのプラスチックが海に流されているとのこと。
Strawless in Seattleキャンペーンの動画
シアトルに本社を構えるスターバックス社も、2020年までにプラスチック製ストローを全廃すると発表している。
一方東海岸のニューヨークでは、まだ法律でプラスチック製ストローが禁止されてはいないものの、シアトルのように法案で禁止される日が来るのも近いのではないかと囁かれており、人々の間でももっぱらホットトピックだ。
ニューヨーク・ブルックリンのバーで出合った紙製のストローたち
週末、ブルックリンにある近所のバーで一献傾けることがあった。私がオーダーしたのは夏の終わりにぴったりの爽やかな味のカクテルだったが、このストローには、かわいいドット柄の紙ストローが使われていることに気づいた。
バーのジェネラルマネージャー、エイミー・マスセナさんに話を聞けば、「環境のことを考え、プラスチック製ストローから紙製ストローへの移行は、店をオープンした2年前からすでに決めており、徐々に導入していった」とのこと。
ただ姉妹店が市内に6軒あり、すでにプラスチック製ストローをベンダーから納入していたため、すべての在庫を使い切るまでは新規購入を控えていたそうだ。そろそろ次のオーダーをする時期になって、全店で紙のストローに完全移行したのだという。
移行は簡単だったのか?との問いに、「決して簡単ではなかった」とのこと。取り引きをしているベンダーが紙製のストローを提供していなかったため、エイミーさんはインターネットで検索して、仕入先を新たに見つけたそうだ。
また、ストローの仕入れ価格も異なるという。どちらもパッケージ購入で、1本につき紙製ストローは3〜5セント前後だが、プラスチック製ストローは0.005セント。しかし、「環境のことを考えたらどうってことのない差額」だと笑う。
私自身この話を聞きながら、そういえばここ数ヵ月前ぐらいからニューヨークでも紙ストローを使う店が少しずつ増えてきたなと思い出した。と言っても、多くのレストランやカフェではまだプラスチック製ストローが主流だが、感覚的には10軒に1軒ぐらいの確率で紙のストローが普及し始めたかなといった印象だ。
ちなみに、エイミーさんによると、紙製ストローの次に考えているのは、食べ物の持ち帰り用の紙製コンテナー(入れ物)だとか。「姉妹店全6店舗のうち1店舗で、すでに紙のコンテナーを導入しています。ただ紙はどうしてもフニャっとなるから、全店で導入するかどうかはまだリサーチが必要」という。
この取材中、バーカウンターで隣り合わせになったオーストラリア出身のアマンダさんとヒューゴさん親子も、「オーストラリアでも今話題のトピックよ」と会話に入ってきた。
オーストラリアでも、特に今年に入ってから人々がプラスチック製ストローの有害性について、話をすることが多くなったとか。
先ほどのエイミーさん曰く、「ニューヨークの人々も最近はプラスチック製ストローに関して敏感になった印象よ。特に新しくオープンした飲食店では、うちみたいに紙製ストローを導入したり、ストローの提供自体を廃止したりしている。うちも、ストローをつけないカクテルもあるわよ。ニューヨークの飲食業界がシアトルみたいになるのも時間の問題だと思うわ」とのこと。
ニューヨークのエコ系ストアでは、ステンレススチール製ストローやシリコン製ストロー、食べられるストローなど、プラ製ストローの代替品としてさまざまなものが販売されており、ツイッターでも、#StopSucking というハッシュタグで人々がつぶやいている。「ストローって昔、プラスチック製もあったの?」と若い世代に驚かれる日もそう遠くはないだろう。
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止