北陸から東北日本海側で「雪起こし」の雷 日本海側の冬の雷は、太平洋側の夏の雷より危険
南岸低気圧の次は日本海低気圧
令和5年(2023年)12月6日は、南岸低気圧が日本の東海上に去り、大陸から高気圧が日本付近に張り出してきたため、午前中に雨が降っている所があった北~東日本の太平洋側でも晴れ間が広がり、ほぼ全国的に晴れて気温が平年より高くなりました(図1)。
平年より高くなったといっても、最高気温が25度以上の夏日を観測したのは、沖縄県・南大東の25.6度など5地点(全国で気温を観測している914地点の約0.5パーセント)でした。
一方、最低気温が0度未満となる冬日は、228地点(約25パーセント)と、朝晩はこの時季らしい寒さとなっています(図2)。
12月7日は、黄海で発生した低気圧が日本海北部を東進し、低気圧に伴う寒冷前線が西日本を通過する見込みです(図3)。
このため、西日本では西から雲が多くなり、日本海側では、12月6日夜から雨や雷雨となり、7日の日中は北陸や北日本でも雨(北海道や高い山では雪)や雷雨となる所がある見込みです。
低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、関東などでは季節外れの暖かさとなりますが、日本の上空約5500メートルには、氷点下24度以下のこの時期としては強い寒気が流れ込むため、西日本から北日本では大気の状態が非常に不安定となる見込みです(図4)。
12月7日の発雷確率は、北陸から東北日本海側で75パーセント以上と非常に高くなっています(図5)。
このため、日本海側の地方を中心に、落雷や竜巻などの激しい突風、降ひょう、急な強い雨に注意が必要です。
発達した積乱雲の近づく兆しがある場合には、建物内に移動するなど、安全確保に努めてください。
また、降ひょうのおそれもありますので、農作物や農業施設の管理にも注意してください。
冬の雷
雷は、空気中での音と光を伴う放電現象で、強い上昇気流がある積乱雲で生じます。
積乱雲の中には氷の結晶やひょう、あられが混在し、激しい上昇気流によって衝突を繰り返します。
衝突した氷の粒子は摩擦力によって静電気が生じ、小さい粒は正電荷、大きい粒は負電荷を帯びる性質がありますので、大きくて重たいあられやひょうは負電荷を帯びて雲の下部に集まります。
一方、小さくて軽い氷の結晶は正電荷を帯びて雲の上部に集まります。こうして雲の上下に正負の電気が蓄えられ、一定以上になると、雲放電(雷雲の中や雲と雲の間で起きる放電)や、対地放電(雷雲と大地の間の放電で落雷のこと)が起きるのです。
夏の太平洋側の雷雲の高さは1万メートルを超えますが、冬の日本海側の雷雲の高さは5000メートル程度と低いため、雲頂付近の正電荷からの落雷もあります(図6)。
日本で雷が多いのは、東北から北陸地方にかけての日本海沿岸の観測点で、目視観測に基づく月別の雷日数は、宇都宮のような内陸部では夏に多く、金沢のような日本海側の地方では冬に多くなっています(図7)。
日本海側の雷は、背の低い積乱雲でも発生しますが、その威力は太平洋側とそん色がありません。というより、強いです。
このため、日本海側の地方では、冬の雷によって多くの被害が発生しています。
雷による自衛隊機墜落
昭和44年(1969年)2月8日11時59分ごろ、航空自衛隊小松基地のF-104J戦闘機が金沢市上空1,000メートルで雷の直撃を受けたことで民家に墜落し、市民4人が死亡し、民家16戸が全半焼するという自衛隊初の大惨事事故が発生しています。
当時、本州の南岸を前線を伴った低気圧が東進し、日本海には上空に強い寒気が入っていることを示す小さな低気圧があり、大気は広い範囲で不安定でした(図8)。
冬の日本海側の地方では、昔から冬の大荒れの天気に伴う雷を「雪起こし」として恐れてきました。この現象は今も同じで、冬の日本海側の地方では、雷が鳴ったら、要警戒です。
図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図3、図7の出典:気象庁ホームページ。
図6の出典:饒村曜(平成26年(2014年))、天気と気象100、オーム社。
図8の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。