ユネスコ世界遺産で春のお花見登山を愉しむ 咲きほこる天上の花園 「吉野山」千本桜ハイキング
△マイナー登山道を歩く△(0005)
日本屈指の桜の名所・奈良県吉野山。通称“千本桜”ですが実際には約3万本の桜が山稜一帯をピンクに染めあげます。
<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。
<吉野山の魅力>
(1)素晴らしい桜の花園
とにかく桜が素晴らしい。千本桜といわれるほど吉野山の山稜各所でシーズンともなれば桜がこれでもかというほど花を咲かせています。最盛期には山肌一面が桜の淡いピンク色で染まった景観はまるで天上の楽園あるいは桃源郷のような眺めといっても過言ではないかもしれません。
(2)散策感覚で歩きやすい道
吉野駅から奥千本まで登りますが、ほぼ舗装されて整備された道ですのでとても歩きやすいです。坂道ではありますが、いわゆる登山道ではありません。メインストリートから外れると土の道もありますが里山の田舎道といった感覚ですのでのんびりと歩ける雰囲気です。
<概要>
山岳名: 吉野山 (よしのやま)
所在地: 奈良県吉野郡吉野町
標 高: 約765m(金峯神社)
吉野山は金峯山寺や金峯神社を中心とした山稜一帯の総称。
桜の名所として知られ、とくに桜の多い場所を麓から下千本、中千本、上千本、奥千本と呼んでいる。日本さくら名所百選。
ユネスコ世界遺産登録「紀伊山地の霊場と参詣道」
<ハイキングコース>
吉野千本桜はあまりにも有名であり、けしてマイナーなどではありませんが、関東在住者からしますとなかなか訪れる機会もないかと思いましたので取上げさせてもらいました。
今回はふもとの近鉄吉野線「吉野」駅を起点にして登りは舗装されたメインストリートを下千本、中千本、上千本、奥千本へと上がり、下りは途中から「ささやきの小径」と呼ばれるハイキング道を通り「吉野」駅に戻るルートです。
近鉄吉野線「吉野」駅からスタートです。もっとも低い場所の下千本は駅からは駅からすぐ七曲りと呼ばれる道に入って始まります。今回は訪れた時期に下千本の盛りを過ぎていたのでロープウェイに乗り、総門(黒門)手前まで上がって歩き始めました。総門を抜けて舗装道路の坂を上がっていきます。道の両脇や各所に桜が花を咲かせています。やがて右手に金峯山寺が見えてきます。
金峯山寺あたりからが中千本になるのでしょうか。谷を挟んで左手の向かい側の山肌に桜の斜面が大きく広がっているのが目に飛び込んできます。道をさらに上がって竹林院のあたりにも桜の森ともいえるような一面桜のスポットがあります。
竹林院を越してさらに上がって上千本を目指します。上千本の看板が立ちすこし道を外れた斜面に入ると桜で埋め尽くされたような桜の園がありました。360度ぐるりと振り返っても桜まみれ。もはや嘆息しかでません。
上千本をさらに上がっていくと、歌舞伎「義経千本桜」でも取り上げられる花矢倉展望台そして吉野水分神社あたりまでが上千本になるのでしょうか。そこから上は奥千本に至るルートであり、いったん桜は姿を消して杉林の道となります。せっかくでしたので奥千本にあたる金峯神社まで上がってみました。途中の高城山展望台に上がると東側の眺めがキレイに見えます。遠くに見える山並みは葛城山や金剛山に連なる稜線でしょうか。
高城山展望台の先へすこし上がるといよいよ吉野山の奥千本となる金峯神社です。今回おとずれたとき奥千本の桜はまだ蕾でした。ここから先(奥)へはいわゆる“大峯奥駈道”の起点ともなります。
金峯神社から下山します。帰りは中千本まで登ってきた道を戻り途中で分岐する「ささやきの小径」(ハイキング道)に入ります。竹林院から分岐炉に入り、道なりに下りていきます。右手に如意輪寺、左手に吉水神社に挟まれた谷筋の道です。
土の道ですが登山道というほどではなく里山の田舎道といった風情でしょうか。舗装道路のメインストリートである表参道(?)よりも通行人は少ないですが、斜面に植えられた桜をより間近に見ることができます。ほとんど桜に埋もれるような五郎平園地などもあります。桜、さくら、サクラ…。
傾斜が緩やかになり、沢沿いの道が平坦になっていくと桜ももう終わり。駐車場が現れてその先は吉野駅となります。今回はここがゴールです。
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
「吉野」駅→ ロープウェイ吉野山駅(5分)※ロープウェイ利用→ 金峯山寺(15分)→ 竹林院(30分)→ 花矢倉展望台(60分)→ 高城山展望台(25分)→ 金峯神社(30分)→ 中千本分岐(45分)→ 五郎平園地(40分)→ 「吉野」駅(30分)
※桜の観賞時間は含まれていません。
コースタイム/ 5時間程度
標高差/ 550m程度 (吉野駅:207m、金峯神社:746m)
吉野駅からロープウェイ吉野山駅までは七曲りを通ると徒歩20分程度。
[ハイキングコースの補足]
要所に道標があるので迷うことはほとんどないと思われます。
メインストリートはほぼ舗装されています。メインストリートから外れた分岐路の「ささやきの小径」(ハイキング道)も登山道というよりも里山の田舎道といったシチュエーションなので登山靴は必須ではありませんが、歩きやすい靴と服装が必要です。
吉野山内を循環バスが運行していますが、桜の時期とそれ以外で運行状況が変わりますので事前に吉野山観光協会のWebサイトをご確認ください。
●水場やトイレなど
ルート上に水場はありません。
トイレは要所にあります。
[難易度・危険箇所など]
とくに大きな難所や危険箇所はほとんどありません。
[アクセス]
近鉄吉野線「吉野」駅から徒歩。
[コースマップ]
奈良県のウォーキングポータルサイト「歩く・なら」、近畿日本鉄道Webサイト「てくてくまっぷ」、吉野山観光協会Webサイトにてそれぞれコースマップが提供されています。
<補足情報>
[売店等]
吉野駅からの舗装されたメインストリートには中千本あたりまで売店が多数あります。
[日帰り温泉など]
吉野の湯
吉野温泉元湯
※時期により日帰り入浴をしていない場合や予約制の場合もあるので事前にご確認ください。
[お食事処]
売店と同じく中千本あたりまでのメインストリートにはお茶屋さんも複数あり、お食事なども提供されています。
[山小屋等の宿泊施設]
吉野山内に複数の旅館があります。
[付近の山]
大峯奥駈道
大峰山(山上ヶ岳)
山の辺の道
大和三山
柳生街道
[名産品]
吉野葛
柿の葉寿司
[そのほかの補足]
吉野山の桜の見頃は平年ですと4月上旬~中旬になります。
●吉野町観光案内所
近鉄吉野駅前。各種パンフレット等備置。
●吉野山ビジターセンター
金峯山寺そば。
<私的な雑感>
吉野山の千本桜は、日本屈指の桜の名所を登るお花見ハイキングコースという印象でしょうか。
さすがに全山いたるところに「桜」というわけではありませんが、いわゆる上千本や中千本といわれている桜の集積スポットはたいへん見事なものです。桜、さくら、サクラ…。想像以上の様相に嘆息しか出ません。一面を桜に囲まれた、さながら桃源郷といった雰囲気です。見ている人たちの顔も柔やかほころんでいます。
しいて難点を挙げるとすれば登山感覚はあまりないところでしょうか。いわゆるメインストリートにあたる表参道(?)は舗装道路の坂道なので、登ることは登るのですが、やはり自然のなかの山を登るという気分ではありません。東京近郊在住の方に分かりやすいイメージでいいますと、高尾山の1号路と同じような感覚だと思います。
そういうわけで往復するのであれば、上りか下りのどちらかで「ささやきの小径」(ハイキング道)を歩いてみることをオススメします。桜はおもに北東側の谷や山に集まっています。「ささやきの小径」はどちらかというとこの北東側の谷筋を通っていますので桜をより身近・間近に観賞することができます。五郎平園地などはちょっとした広場になっていますので、すこし長めの時間をとってお花見をしながら休憩したりお昼ご飯を食べるには最適だと思われます。
吉野山の千本桜はお花見ハイキングに絶好のコースではないかと思われます。家族連れはもちろん、登山初心者でも安心してゆっくり楽しんで桜を愛でることができます。
<こんな方にオススメ>
(1)桜のお花見ができる山に登りたい
(2)軽装でハイキングを楽しみたい
(3)歴史のある神社仏閣が好き
<備考>
吉野山観光協会 ※公式サイト
日本の世界遺産一覧 (文化庁)
(2024/03/08 登山レポーター:上町嵩広)