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土佐町が全国学力テストへの意見書、他の自治体も続くべき!

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 高知県の土佐町議会は10日、全国の小学6年生と中学3年生を対象に行われている「全国学力テスト」について、現在の全員を対象とする悉皆式から一部だけを対象とする抽出式に改めるべきとする意見書を文部科学大臣に提出することを賛成多数で決めた。

『NHK NEWS WEB 高知 NEWS WEB』は、「意見書では、子どもたちが都道府県独自の学力調査もあってテスト漬けの状態だと指摘しているほか、教員がテストの分析と対策に追われ疲弊しているなどとして、学力テストのあり方を改めることを求めています」と報じている。全国学力テストのために、過去の問題(過去問)を繰り返し子どもにやらせたりのテスト対策は、いまや、ほとんどの学校で行われている。テスト対策に時間が割かれるため、正規の授業時間をやり繰りしなければならないのも実情だ。「全国学力テストがなくなれば、かなり働き方に余裕ができる」という教員の声も、よく聞く。

 全国学力テストが、地域や学校の「評価基準」にされてしまっていることは否定できないところだ。全国的な競争を強いることにもなっている。

 首長をはじめ自治体が、上位の成績をとらせるように学校にプレッシャーをかけているのも事実だ。それもあって、学校でのテスト対策はエスカレートするばかりだ。

 そもそも全国学力テストは、正式名称を「全国学力・学習状況調査等」といい、文部科学省(文科省)はその目的を、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」ためと説明している。

「調査」が目的なのだ。にもかかわらず、競争の道具になってしまっているのは、抽出でなく悉皆にし、しかもランキング付をしたりするからである。調査が目的ならば、抽出でじゅうぶんなはずなのだ。

 実は、全国学力テストが悉皆式から抽出式に変更された時期がある。2009年9月に誕生した民主党政権のときである。民主党政権は、悉皆である必要はないとして、全国学力テストを抽出式に変えた。

 ところが、2012年12月の総選挙で、民主党は大敗して政権を失う。政権に返り咲いた自民党は、再び全国学力テストを抽出式から悉皆式に改めたのだ。

「競争」を重視する自民党の教育政策の表れである。実際、成績の悪かった学校の校長名を公表する知事が現れたり、競争はエスカレートするばかりだ。そのなかで、子どもたちも教員も疲弊してしまっている。

 土佐町議会の決議は、そうした「異様」な状況への警鐘である。競争の道具になっている全国学力テストを抽出式にして本来の調査目的に戻すべきだし、そもそも全国学力テストそのものが必要なのかどうかの議論をしなければならないときにもきている。

 そのことを、全国の自治会が考えなければならない時期を迎えているのだ。ほんとうの教育を考えるなら、他の自治体も土佐町に続いて決議をあげるべきではないだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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