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日本代表は11名中9名がユース 高校サッカーは弱体化したのか?

大島和人スポーツライター
原口元気(右)は浦和レッズアカデミー育ち(写真:ロイター/アフロ)

年代が上がると部活出身は増える?

U-17、U-20代表はJリーグのアカデミー出身者が多い。しかしU-23、フル代表と年代が上がるにつれて、高校サッカー出身者が増える−−。

それは日本サッカーの育成に関して、20年近く言われ続けている「定説」だ。

1993年にJリーグが開幕し、それに合わせて多くのクラブがアカデミー(いわゆる下部組織)を整備した。ヴェルディ川崎、横浜マリノス(いずれも当時)やガンバ大阪など少数のクラブは、それ以前からユースチームを運営していた。

U-17代表についていえば、20年以上前から「ユース率」が半分を超えていた。そしてその後、比率は少しずつ上昇していた。2019年にブラジルで開催されたU-17ワールドカップ(W杯)の日本代表を振り返ると、高体連(部活)出身者は21名中3名。この世代の有望人材は、それほどクラブチームに集中している。

フル代表もユース率が上がる

一方で2018年のW杯ロシア大会を振り返ると、確かに主力の多くは高校サッカーOBだった。川島永嗣(浦和東高)、長友佑都(東福岡高)、長谷部誠(藤枝東高)、本田圭佑(星稜高)といった名前を出せば分かりやすい。例えばコロンビア戦の先発を見ると、高校生年代をクラブチームで過ごした選手は酒井宏樹(柏レイソルU-18)、吉田麻也(名古屋グランパスU18)、原口元気(浦和レッズユース)、香川真司(FCみやぎバルセロナ)と4名にとどまっていた。

もっともこれは「時間のズレ」があった。ロシア大会の“大御所組”は2000年前後に高校生だった世代。端的に言うとその頃はまだJユースのノウハウが浅かった。

2年4ヶ月後、2020年10月9日に開催されたカメルーンとの親善試合は、先発11名中9名がクラブチーム出身者だった。

★日本代表先発メンバー(カメルーン戦)

権田 修一(FC東京U-18)

冨安 健洋(アビスパ福岡U-18)

酒井 宏樹(柏レイソルU-18)

安西 幸輝(東京ヴェルディユース)

吉田 麻也(名古屋グランパスU18)

中山 雄太(柏レイソルU-18)

柴崎 岳(青森山田高校)

原口 元気(浦和レッズユース)

南野 拓実(セレッソ大阪U-18)

堂安 律(ガンバ大阪ユース)

大迫 勇也(鹿児島城西高校)

部活とユースの現実は?

もっとも「部活だから」「ユースだから」という区分はあまり意味がない。一般的には上下関係、練習量や強度、体力などが高校サッカーの特徴とされているようだ。ただ筆者が見るところ、このようなカルチャーは良くも悪くも混ざっている。

まずサッカーは先輩後輩の関係性が、野球などの伝統的な競技と違う。ピッチに入れば呼び捨て、普段は先輩に対して「くん付け」がスタンダードだ。それは前提としてJのアカデミーにも先輩、指導者に対する礼儀を強調するチームはある。練習量が驚くほど多いチームもある。

一方でJリーガーを次々と輩出している昌平高校(埼玉)や興国高校(大阪)は、Jのアカデミーよりもむしろスキルフルでエレガントなスタイルだ。9月に昌平と東京ヴェルディのリーグ戦を取材したが、ボールの保持やプレーの精度で昌平が明らかに上回っていて流石に驚いた。(※試合は粘り強く守り、セットプレーで効率的に得点したヴェルディが勝った)

「ユースは上手いけれど気持ちが弱い」というような俗説も、実態を反映しているとは思わない。辛いときに頑張る、諦めない姿勢がスポーツの肝であることは当然だ。長くサンフレッチェ広島F.Cユースの指導をしていた森山佳郎監督(現U-16日本代表監督)が繰り返し強調した言葉が「気持ちには引力がある」。彼は「部活っぽい」と評されることを誇りにしていた。

高校サッカーにも見て取れる進化

部員数は明らかな違いだ。ただし「1年生はボールに触れない」「控えは応援するだけ」という悪しき伝統は淘汰されつつある。高体連には三桁の部員を擁しつつ、CチームやDチームまでしっかり面倒を見ている素晴らしいチームがある。厳しい競争環境から這い上がってきた人材はやはり見どころがあるし、そのような下剋上は引き続き日本サッカーにとって重要だ。

部活も進化している。カメルーン戦で先発した“高体連組”の柴崎岳、大迫勇也は「中高一貫」の私立中でプレーしていた。柴崎は中3の時点で既にプリンスリーグ東北を経験し、「青森山田高校」に入ってプレーしていた。

FC LAVIDAと昌平高のようなクラブと高校の“一貫体制”も増えている。シンプルに環境、人材の共有はメリットだし、6年制によって高い目標に向けて一から指導をする時間的な余裕も得られる。

サッカー界にとってはクラブと部活の両方が大切で、どちらも否定される道理はない。さらに言うと久保建英のように海外で磨かれた才能も出てきている。Jリーグが発足し「自前で選手を育てる」仕組みが誕生してからまもなく30年。理想にようやく現実が伴ってきた感はあるものの、育成のバージョンアップは今後も必要だ。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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