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夏台風は台風一過にならない 猛暑再び、記録更新中の東京の猛暑日はこれから一週間連続の予想

饒村曜気象予報士
温帯低気圧に変わる直前の台風7号の雲と、北上中の西日本の雲(8月17日12時)

台風一過にならない台風7号

 令和5年(2023年)8月8日(火)9時に、南鳥島近海で発生した台風7号は、発達しながら小笠原近海を西進のち北西進し、11日(金)昼頃に非常に強い勢力で父島付近を通過しました。

 このころが最盛期で、その後台風は北よりに向きを変え、15日(火)午前5時前に和歌山県潮岬付近に上陸しました。

 上陸後は自転車並みの速度で近畿を縦断し、長時間にわたって東海から近畿地方を暴風雨に巻き込み、各地に大きな被害をもたらしました。

 また、多くの人が移動するお盆の時期であったことから、相次いだ航空機の欠航や、東海道新幹線と山陽新幹線が全面運休となる交通機関の混乱は大きな影響をあたえました。

 台風7号は、兵庫県豊岡市付近から日本海に進み北上していましたが、17日(木)15時に北海道の西で温帯低気圧に変わりました(タイトル画像)。

 台風一過という言葉がありますが、これは秋台風に対してのもので、夏台風は通過後も南から暖湿気が入ることから大気が不安定になります。

 台風7号の場合も、南から暖湿気流が流入し、8月17日も、南西諸島~西日本や東海は雨の所が多くなり、特に四国では200ミリ以上の大雨となり、雷を伴った激しい雨が降りました(図1)。

図1 24時間降水量(8月17日0時~24時)
図1 24時間降水量(8月17日0時~24時)

 また、東日本や東北も雲が多く、内陸を中心に雨や雷雨の所もあり、北海道もくもりや雨となりました。

台風7号が持ち込んだ暖気

 台風7号が暖気を持ち込んで北上したため、8月17日は関東や北陸・東北では厳しい暑さとなり、最高気温が35度以上の猛暑日の所がありました。

 雨の所が多かった西日本では、猛暑日にはならなかったものの、猛暑日の手前の湿度が高い状態となり、熱中症に警戒が必要な蒸し暑さとなりました。

 8月17日に全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが52地点(全国で気温を観測している914地点の約6パーセント)、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが637地点(約70パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが891地点(約97パーセント)でした(図2)。

図2 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~8月17日)
図2 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~8月17日)

 令和5年(2023年)は、7月下旬から太平洋高気圧の強まりによって記録的な暑さとなり、8月にはいると、太平洋高気圧が少し弱まってきたものの、西~北日本は太平洋高気圧に覆われて晴れる所が多く、強い日射によって気温が上昇した日が多めに推移しています。

 ちなみに、今年、一番多くの猛暑日を観測したのが8月3日の290地点(約32パーセント)、一番多くの真夏日を観測したのが7月29日の847地点(約93パーセント)、一番多くの夏日を観測したのが7月28日の911地点(約100パーセント)です。

 一頃に比べれば猛暑日や真夏日を観測した地点数は減っていますが、高い数値であることには変わりがありません。また、夏日は多い地点数のままです。

熱中症警戒アラート

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。

 このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:wet-bulb globe temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上~33未満:危険、28以上~31未満:厳重警戒、25以上~28未満:警戒、25未満:注意となっています。

 環境省と気象庁は、熱中症で救急搬送される人を減らそうと令和2年(2020年)7月から関東甲信で始めたのが「熱中症警戒アラート」で、令和3年(2021年)から全国で広がりました。

 「熱中症警戒アラート」の発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります。

 8月18日の前日予報では、関東を中心に11地域に発表となっていますが、当日発表では、さらに増えると思われます。

熱中症警戒アラートの発表地域(8月18日の前日予報)

【東北】岩手、福島

【関東・甲信】茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川、長野

【北陸】新潟

【九州北部(山口県を含む)】長崎

 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表件数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月の前半までは前年、令和4年(2022年)より少ない発表回数で推移していたのですが、7月27日に前年を抜いています(図3)。

図3 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図3 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 そして、以後は差を広げて、前年の発表回数の年間累計である889地域に迫っています。

 熱中症が問題となった前年以上のペースで熱中症警戒アラートが発表となっていますので、引き続き、熱中症対策をお願いします。

記録的な東京の猛暑日

 令和5年(2023年)の東京の最高気温を見ると、6月後半から平年より高い日が続いています(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(8月18日~24日は気象庁、8月25日~9月2日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(8月18日~24日は気象庁、8月25日~9月2日はウェザーマップの予報)

 最高気温が、35度以上の真夏日は、7月10日に36.5度を観測したのが最初で、以後、8月12日までに19日観測しています。

 東京の年間の猛暑日日数は、昨年、令和4年(2022年)に観測した16日が最多ですので、8月8日の時点で新記録になっています。

 そして、8月11日、12日と記録更新中です。

 それが、8月17日以降、7日連続の猛暑日という、とんでもない予報がでています。

 そして、8月後半から9月初めにかけて猛暑日ではなくなるといっても、平年より高い日が続いています。

 最低気温も、平年より高い日が続いており、8月3日以降は、最低気温が25度以上の日が続いていますし、これからも予報が発表されている9月2日まで25度以上です。

 つまり、最低気温が25度以上という熱帯夜が、8月3日から9月2日まで、31日間連続ということになっています。

1か月予報でも気温が高い

 気象庁が8月17に発表した1か月予報によると、暖かい空気に覆われやすいため、向こう1か月の気温は全国的に高いというものです(図5)。

図5 1か月の平均気温・降水量・日照時間の予報
図5 1か月の平均気温・降水量・日照時間の予報

 特に、期間の前半は、北・東・西日本では気温がかなり高くなる所が多いというものですので、暑さには厳重な警戒が必要です。

 なお、1か月予報によれば、降水量と日照時間は、全国的にほぼ平年並みという予報になっており、気温だけが平年から偏っています。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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