東邦亜鉛安中精錬所の停止で、「3月に運行終了」の安中貨物 工場夜景の中での入れ替え作業が印象的だった
群馬県安中市にある東邦亜鉛安中製錬所が2025年3月末をもって主要設備を停止すると発表した。この安中製錬所は、信越本線安中駅に隣接しており、福島臨海鉄道の小名浜駅から鉱石輸送の貨物列車が1日1往復運行されているが、精錬所の停止により鉱石輸送の必要がなくなることから、この貨物列車も3月をもって運行がなくなるとみられる。筆者は、この年末年始は記事(2025年「年越し大回り」参加者は200人超え? 駅ナカ消費や現地への交通費でJRの売上にも貢献!)にあるように年越し大回り乗車に参加し、1月2日の午前中は記事(「駅の乗降客や送迎の人を威嚇しない」 関東の駅百選の「下仁田駅」で見つけた物々しい注意書き…)にある上信電鉄の下仁田駅を訪問したが、1月2日にも安中貨物の運行があると分かったことから、いったん上信電鉄で高崎に戻り、信越本線で安中駅へと向かうことにした。
安中貨物は、非鉄金属メーカーである東邦亜鉛の小名浜精錬所で「亜鉛精鉱」を焙焼し、粒状の「亜鉛焼鉱」に加工したものをタキ1200形タンク車に積載し、EH500形電気機関車の牽引で、福島臨海鉄道の小名浜駅から常磐線~武蔵野線~高崎線~信越本線を経由し安中駅まで運行されている。小名浜駅を11時41分に発車した貨物列車は、安中駅には17時7分に到着。安中駅からは20時4分に返却輸送の貨物列車が出発し、小名浜駅には翌日の6時32分に到着する。現在、安中貨物で使用されているタキ1200形は、20両が2010年から2011年に製造され、車齢はまだ14~15年ほどであるが、そのまま用途廃止となってしまうのであろうか。
筆者は、高崎駅を15時52分に発車する横川行に乗車し、安中駅には16時4分に到着した。この時点では側線には2両のタンク車が留置してあったが、16時10分頃になると車庫からスイッチャーが顔を出し、この2両の貨車をけん引し精錬所の方へ走り去っていった。そして、日が暮れかける中、およそ1時間待ち、定刻の17時7分にEH500形電気機関車が12両のタキ1200形タンク車をけん引した安中貨物が到着した。到着後、すぐにEH500形電気機関車が切り離され、機回し線を通り編成の反対側へと走り去っていた。そして、精錬所側のスイッチャーがすぐにタンク車を引き取りに来た。
特徴的だったのは、スイッチャーが一度にけん引するタンク車は2両までで、精錬所と側線との間を何往復もしていたことだった。これは、安中駅から精錬所に向かう引き込み線の勾配がきついことから、積み荷を満載したタンク車を押し上げることのできる車両数に制限があるのではないかと思われた。安中駅に到着したタンク車の精錬所への入れ替え作業は、完全に日が暮れて工場夜景が浮かび上がる中で行われていたことが印象的であった。しかし、こうした光景が見られるのもこの3月までとなる。
(了)