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プーチンは北朝鮮の7度目の核実験を黙認する!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の豊渓里の核実験場(「ノース38」から筆者キャプチャー)

 北朝鮮が北東部の豊渓里の核実験場を急ピッチで復旧する動きを見せていることから米韓軍事・情報当局は北朝鮮の7度目の核実験を既成事実とみなし、警戒を強めている。

(参考資料:北朝鮮 ICBM発射予兆に続き、核実験場でも復旧作業!)

 韓国軍と情報当局は早ければ今月中旬にも北朝鮮が咸鏡北道・吉州郡にある豊渓里の核実験場で未使用の第3坑道を使って核実験を再開すると判断している。「4月説」の根拠は15日に金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年、4月25日に人民革命軍創建90周年を迎えるからだ。北朝鮮が核実験に踏み切れば、2017年9月以来約4年半ぶりとなる。

 北朝鮮は2018年4月に開かれた労働党中央委員会全員会議で2か月後のシンガポールでの史上初の米朝首脳会談を控え、核実験と大陸間弾道ミサイルの試験発射中止を決定し、5月24日に全ての坑道を陥没させ、坑道の入り口を閉鎖していた。しかし、2019年2月にベトナムでの2度目の米朝首脳会談が決裂に終わると、この年の末に開かれた労働党中央委員会全員会議で金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「核兵器とICBM実験発射中断など我々が取っていた非核化措置をもはや継続する理由がなくなった」とモラトリアム凍結を宣言していた。

 米韓は北朝鮮が先月24日にICBMを発射したことから核実験も強行するとみて、経済制裁に加え、外交及び軍事プレッシャーを強め、牽制しているが、正直止めようがないのが実情である。

 北朝鮮が核実験を再開すれば、国連安保理を招集し、制裁を掛ける以外に術がないが、常任理事国の中国、ロシアが同調しなければ、採択は難しい。仮に、米国が中国を説得して賛同を得ることができたとしても、ロシアが首を縦に振らなければ、制裁決議は通らない。

 ロシアはこれまで米国が主導した過去10回の国連安保理決議にすべて賛同してきた。そのうち、6回は核実験絡みだ。それもこれも、ロシアは一貫して北朝鮮の大量殺傷兵器の開発、保有に反対してきたからである。ロシアの原則、立場はラブロフ外相とプーチン大統領の発言からも明白である。

 例えば、北朝鮮が4度目の核実験を行った2016年には4月14日にモンゴルを訪れたラブロフ外相は「北朝鮮は国連安保理の要求を無視し、核ミサイル実験の脅威を維持している。北朝鮮は理性の声に耳を傾け、新たな無責任な一歩を踏み出さず、また国際社会に北朝鮮の核保有国としての地位を認めてもらえるだろうという希望が幻想であることに気づくべきだ」と北朝鮮を批判し、また2週間後にモスクワで開催された第5回国際安保会議開幕式での演説でも「北朝鮮は無責任な行動を自制し、核強大国の地位を得ようとする試みが妄想であることに気づくべきだ。北朝鮮は国連安保理の決議に示された国際社会の意見を執拗に無視している。ロシアは北朝鮮の公然たる核拡散に断固反対である」と述べていた。

 北朝鮮が2017年9月に6度目の核実験を行った時も国連演説で「我々は北朝鮮の核とミサイル冒険を断固糾弾する」と声を上げ、翌10月にソチで開かれた国際青年祝典でのセミナーでは「北朝鮮の肩を持つようなことはしない。北朝鮮は国連安保理の決議を深刻に違反しているばかりか、挑戦的な行動をしている」と、北朝鮮に事実上、三下り半を突きつけていた。

 プーチン大統領も同様でこの問題では一度たりとも北朝鮮を庇うことはしなかった。

 プーチン大統領は2013年4月に安倍晋三首相(当時)と首脳会談を行った際の共同声明では「北朝鮮は国際社会の呼びかけにもかかわらず,核兵器・弾道ミサイルの製造を執拗に放棄しようとしない」と、北朝鮮の行為を非難していた。

 また、2016年6月に訪中し、習近平主席との首脳会談で発表した共同声明でも「北朝鮮の核ミサイル戦略を容認しない」と公言したばかりか、この年の9月にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムでの演説では「北朝鮮は国際社会が採択した決議に従うべきだ。国連安保理の決議を尊重、履行し、挑発的な行動を中断すべきだ。ロシアは核兵器拡散に断固反対する」とロシアの一貫した立場を表明していた。

 プーチン大統領はこれまで北朝鮮の核、ミサイル問題では終始一貫米国側に立ち、むしろ北朝鮮に強気に出られなかった中国の説得に回っていた。

 実際にプーチン大統領は2017年5月に北京で開催された一帯一路首脳会議での記者会見で「北朝鮮の弾道ミサイル発射は非生産的な危険な行動である。我々は核保有国クラブの拡大に無条件反対している」と発言し、さらに2か月後の習主席との首脳会談では「(北朝鮮のミサイル発射に)懸念を表明し、受け入れられない」との共同声明を出し、北朝鮮に核・ミサイル開発の凍結を要求していた。

 プーチン大統領は金総書記が2019年4月に訪露し、ウラジオストクで首脳会談を行った時までは間違いなく、北朝鮮の核開発を阻止する立場では米国と同じ立場で、共同歩調を取っていた。そのことは、首脳会談後の記者会見でプーチン大統領が「北朝鮮の核問題では米国と同じ考えるである」と明言していたことからも窺い知れる。

 プーチン大統領は首脳会談で金総書記に(国際法に従うよう求めた)と言っていたが、同時にこの時、「北朝鮮の安保と主権を保障することが必要だ。国際法に基づく保障だ。こうした保障が迅速に行われ、ある程度北朝鮮が求めているものを充足することができれば信頼回復の一歩となる。彼らにとっては必要なのは体制安全保障だ。我々みな、これについて考えてみる必要がある」と意味深長な言葉も発していた。

 ロシアは「東方拡大」を図る米国やNATOに対する安全保障上の懸念からウクライナ侵攻を企てたとされているが、北朝鮮も米国の脅威への対抗上、やむを得ず「予防」「自衛」の措置として核・ミサイル開発をやらざるを得ないと、ロシアが受け止めているならば、先のICBM同様に北朝鮮の核実験を建前上「好ましくない」と反対の意を表明したとしても、国連安保理の制裁に賛成する可能性はゼロだ。これが、北朝鮮が今この時期に、核実験を強行できる最大の理由かもしれない。

(「ロシアと北朝鮮は兄弟」 金正恩はプーチンの「苦戦」を決して傍観しない!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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