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なぜ良い人と悪い人がいるのか:行動理論(強化理論の心理学)から

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
人の心には天使も悪魔もいませんが(提供:イメージマート)

■悪い人がいる理由は?

世の中には、良い人と悪い人がいます。なぜでしょうか。生まれつきでしょうか。でも、「おぎゃあ」と生まれた時には、善人も悪人もないのではないでしょうか。

心が曇ったり、心が捻じ曲がっていたりとか、心に深い傷があると、悪い人になるのでしょうか。でも、意外と心理学って、安易に「心」を使いません。

心の曇りとか、曲がりとか、傷とかって、具体的に(科学的に)いったい何のか、よくわかりませんよね。

たしかに人には心があります。心について考えることは大切です。でも、心だけで説明してはいけないところもあります。

悪いことをする人は悪い心をもっている人。この説明は、実は何の説明にもなっていません。この人が悪い心をもっていると、なぜわかるのですかと質問すれば、悪いことをしているからですと答えが返ってきます。これって、説明がぐるぐる回るトートロジーです。

■行動理論(強化理論の心理学)

心理学の大きな柱になる理論が、行動に関する強化理論です。強化理論を、ものすごく簡単に説明します。

ある行動をとる→良いことがある(報酬が与えられる)→その行動が増える(学習する、身につける、強化される)

とてもシンプルなのですが、心理学者のスキナーは、この理論で人間の複雑な行動もすべて説明できると言っています(全ての心理学者が言っているのではなく、スキナーは言っているのですが)。

スキナーの行った実験です。

ネズミが、たまたまレバーを押す。レバーを押すとエサが出る。そうすると、ネズミはレバーを押すようになります。

これは、日常的にも見られることですね。

イヌがお手をすると、エサがもらえたり、なでてもらえる。そうすると、お手をするようになるわけです。

人間も、勉強でも音楽でもスポーツでも、それをしたら良いことがあると経験すれば、その行動が身に着くでしょう。ところが、そうしても良いことは何もない、恥をかくだけ、となれば、その行動を避けるようになるでしょう。

といういのが、強化理論です。

さて世の中は、良いことをすれば報酬が与えられ(行動が強化される)、悪いことをすれば報酬は与えられない(行動は強化されない)はずですから、そうすると、みんなが良い人になるはずです。

ところが、子供も大人も良い人も悪い人もいます。強化理論が間違っているわけではありません。では、なぜ悪い人がいるのでしょうか。強化理論の心理学的に考えてみましょう。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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