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ひと足先に名古屋で開幕!“応援したくなる”女子プロ野球の魅力

大竹敏之名古屋ネタライター
今シーズン誕生した愛知ディオーネ。開幕戦を見事な完勝で飾り、勝利のダンスを披露!
名古屋のシンボル、ナナちゃん人形も愛知ディオーネのユニフォームで開幕ムードの盛り立て役に
名古屋のシンボル、ナナちゃん人形も愛知ディオーネのユニフォームで開幕ムードの盛り立て役に

日本女子プロ野球リーグ(JWBL)、2018年シーズンがNPBに先駆けて3月21日に開幕しました。開幕戦はナゴヤドームでの愛知ディオーネvs埼玉アストライア。愛知県に初めてチームができ、その緒戦ということもあって、約3700人の観客で盛り上がりました

女子プロ野球リーグは2009年発足。女子選手に夢と希望を与えたい、との思いからスタートしました。現在は愛知ディオーネ、京都フローラ、埼玉アストライア、育成チームのレイアの4チームがリーグに加盟し、レイアを除く3球団でリーグ戦などを行って覇権を争います。

開幕戦はあいにくの雨だったが当日券売り場には行列が。この日のチケットは大人前売り1200円・当日1500円、中高生前売り400円・当日500円
開幕戦はあいにくの雨だったが当日券売り場には行列が。この日のチケットは大人前売り1200円・当日1500円、中高生前売り400円・当日500円

愛知ディオーネは、昨年までの兵庫県から愛知県一宮市へ本拠地を移転。昨季は日本シリーズで苦杯をなめるもののレギュラーシーズンを制し、また一昨年も日本一の栄冠に輝いている強豪チームです。侍ジャパン、2大会連続MVPの絶対的エース・里彩実(28)を筆頭に、その女房役の愛知県豊川市出身・寺部歩美(25)など実力派選手も数多く所属します。

堅実な守備に基本にのっとったフォーム。質の高いプレーにびっくり。

筆者は女子プロ野球初観戦。球場に着いてまず観客の多さに驚きました。スタンドで開放されていたのは内野席の半分くらいでしたが、そのエリアは7~8割がた埋まり、地元の高校のブランスバンドによる演奏もあって応援もにぎやかでした。

エースの里綾実投手。立ち上がりのノーアウト満塁のピンチをしのぐとしり上がりに調子を上げ、見事4安打完封。ドラゴンズに似たユニフォームも愛知のファンに受け入れられそう
エースの里綾実投手。立ち上がりのノーアウト満塁のピンチをしのぐとしり上がりに調子を上げ、見事4安打完封。ドラゴンズに似たユニフォームも愛知のファンに受け入れられそう

それ以上に驚いたのはプレーの質の高さです。投球、打撃ともにフォームがしっかりしていて、何より守りが堅実。基礎からみっちり鍛えられていることが分かります。ピッチャーの球速は時速100~120kmくらいですが変化球も交えたコンビネーションは巧み。打撃はさすがに広いナゴヤドームのスタンドまで届くような打球はありませんでしたが、外野フェンスのほんの手前まで飛ばす長打もありました。エラーや凡ミスはほとんどなく、最終的に点差は開いたものの見ごたえのあるゲームが展開されました。

どの選手も腰の入ったスイングを披露。愛知ディオーネは着実に得点を重ねて9点を奪った。写真は5番バッターの寺部歩美選手
どの選手も腰の入ったスイングを披露。愛知ディオーネは着実に得点を重ねて9点を奪った。写真は5番バッターの寺部歩美選手

ファンに聞きました。「女子プロ野球の魅力とは?」

ナゴヤドームでの開幕戦。球団が目標としていた5千人台には届かなかったが、真剣に観戦する少年&少女野球選手の姿が目立ち、スタンドからは熱気が感じられた
ナゴヤドームでの開幕戦。球団が目標としていた5千人台には届かなかったが、真剣に観戦する少年&少女野球選手の姿が目立ち、スタンドからは熱気が感じられた

盛り上がっていたスタンドの観客たち。どんな人たちが来ていたのでしょう?

「豊橋の女子野球チームのメンバーで来ました。女子プロ野球を観るのは初めてだけど、迫力があってカッコよかった! もっと頑張って練習しようという気持ちになりました。いつか自分も女子プロ野球の選手になりたいです」と目を輝かせていたのは小学生の女子選手。彼女たちをはじめユニフォーム姿の女子選手、少年野球の選手たちの姿が目立ちました。

華やかなチアのダンスも球場の雰囲気を盛り上げる
華やかなチアのダンスも球場の雰囲気を盛り上げる

最前列で、仲間たちと一緒に熱心に声援を送っていたのは大阪からやってきた50代の男性。「リーグ発足当時からずっと応援していて以前はほぼ全試合観ていました。今は忙しくてそれでも年間30試合くらい観戦。プロだけどアマチュアに近い感じで一生懸命さが伝わってくる。私は草野球をやっていて、プロ野球だと雲の上の世界だけど、女子は身近さを感じられるんですよね」

愛知ディオーネのユニフォームを早速着こんで観戦していた30・40代の男性コンビは「森(若葉)選手をツイッターでフォローしてファンになって、初めて応援に来ました。ドラゴンズファンですが、女子はより親近感を抱きやすいですね。自宅に近い岡崎や刈谷でも試合があるから、また応援に来たいです」

身近さを活かした地道な交流でファン獲得を!

ゲームセットの後は、撮影会やジャンケンなど選手とふれ合える機会も
ゲームセットの後は、撮影会やジャンケンなど選手とふれ合える機会も

ゲームセット後は、選手全員で勝利のダンスを披露したり、選手との撮影会やプレゼント付きジャンケン対決があったりと、選手たちがより身近に感じられる企画が数々盛り込まれていたのも印象的でした。

選手との距離の近さが魅力という声が目立った通り、人気の獲得・定着の決め手はファンとのコミュニケーションでしょう。愛知ディオーネ広報の野口眞孝さんも「本拠地の一宮市を中心に、野球教室や公開練習、地元の学校のブラスバンドへの応援依頼など、様々な方法で交流を図っていきたい。チームのファン獲得というだけでなく、女子野球の普及につながる活動に取り組んでいきたいと考えています」といいます。

女子プロ野球にはNPBのようなプロアマ規定がなく、交流の自由度が高いことも、こうした方針にはマッチしています。コツコツと地道に地域との関係性を深めて、“応援したい!”と思ってくれるファンを増やしていくことを期待します。

それとこれは夢物語なのかもしれませんが、いつの日か男子のプロ野球の世界で活躍するような女子選手が出現した時、女子プロ野球は本当に野球ファンの心をつかんで離さなくなるんじゃないかと思っています。そんなバカげたこと…と誰もが思うでしょうが、大谷翔平選手の二刀流だって「マンガでもありえない」と思われていたのです。『野球狂の詩』で水原勇気が活躍したのは早40年以上前。マンガでありえた話が現実ではありえない、なんて決めつけず、少なくともファンは壮大なロマンを夢見ながら女子プロ野球を応援すると、よりワクワクできるんじゃないでしょうか。

※今後の試合日程などはJWBLの公式サイトでご確認を

(写真はすべて筆者撮影)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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