中国で教師による未成年者への性犯罪が相次ぐ 背景に農村での寄宿舎生活も関係か
中国で教師による未成年者、とくに女子児童への性犯罪、性暴力が相次ぎ、社会問題のひとつとなっている。
11月には甘粛省で小学校の元校長が、12月には湖南省で中学校の元教師が、それぞれ性暴行、強制わいせつ、強姦などの容疑で逮捕され、裁判の結果、死刑が執行された。
校長や教師による犯行
中国メディアの報道によると、11月、内陸部の甘粛省平涼市の小学校の元校長の男性(44歳)は女子児童22人に対して性暴行を繰り返していたことが発覚し、逮捕された。同校長は約9年間にわたって小学校内の寄宿舎(学生寮)や教室で、8歳~12歳の女子児童に性暴行を行っていた。
また、湖南省邵陽市の中学校の元教師の男性(60歳)は2016年4月から2020年10月までの約4年半、担任の地位を利用して女子生徒5人に近づき、性的暴行を行った。女子生徒は当時、12歳が1人、13歳が2人、14歳が2人だった。
このうち1人はショックを受けて自殺、2人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患ったという。元教師は強制わいせつ、強姦など複数の容疑で逮捕され、12月初旬、湖南省人民法院、最高人民法院で裁かれて死刑が言い渡され、執行された。
加害者の4分の1が教育関係者
中国少年児童文化芸術基金会・女童保護基金などの調査によると、2021年に18歳以下の未成年者の被害者は569人に上っており、社会問題のひとつとなっている。
同調査では、被害者の約80%が女子(または女児)、約20%が男子(または男児)で、加害者の約4分の1に当たる27.5%が教師や教育関係者(学校職員など)だった。続いて多いのは、父親や継父、親戚などで17.5%だった。
農村の子どもは寮生活が多い
こうした事件が起こる背景には、加害者の精神面など複数の問題が潜んでいるが、中国特有の事情としてひとつあげられるのは、中国の農村の子どもたちが置かれている生活環境だ。
農村では小中学校が遠いため、子どもは小学校に入学すると同時に寄宿舎(学生寮)に住み、そこで生活しながら隣接する学校に通うというのが一般的だ。
自宅に帰るのは土曜日の午後と日曜日だけという子どもも多く、日常的に親の目が行き届かない。また、教師や学校職員に勉強だけでなく、生活面でもすべて頼ることになるため、子どもは何か被害を受けても、それを言い出しにくい環境となっている面もあるようだ。
中国メディアの中には「被害を訴えられない子どもも多く、被害者は氷山の一角」とする報道もある。
中国では今年、「未成年者への性犯罪事件法律適用ガイドライン」を発表。性犯罪に対して厳しい処罰を設けている。被害者が14歳未満の未成年の場合、10年以上の懲役または無期懲役、あるいは死刑に処される。