エコプロはエコなのか
大阪のテレビ局のロケに参加するため、関西出張に来ている時、ある大手企業の社員の方がソーシャルメディアに投稿しているのが目についた。
エコプロ2019に来たところ、エコと銘打っているのに環境に悪い製品や、科学的にその効果が検証されていない製品が多数出展されており、辟易しているという、怒りに満ちた内容だった。
投稿内容は、不特定多数には見られないようになっていた。はたしてどうなのか。大阪出張から戻り、エコプロ最終日、12月7日の午後、会場へ足を運んでみた。
大掛かりな展示は例年通り
筆者は2011年、フードバンクの広報を務めている時に初めてエコプロ(当時の呼称は「エコプロダクツ展」)に参加した。2014年には企業の方とトークショーに登壇したこともある。
例年のことだが、2019年も、大掛かりな展示が目立った。
子どもたちのワンダーランド
黄色い帽子をかぶった小学生の団体や家族連れがたくさん来るからか、おもちゃ会社の出展や、子どもたちを惹きつけるような展示も多かった。
ここは一種の遊園地なのでは、とも思った。
子どもたちに向けたクイズや展示、お土産品なども目立った。
紙や電気などの資源は大丈夫?
2018年のエコプロ訪問でも書いたのだが、エコプロで配られる紙の資料は、会期中にしか使うことができない。だが、最終日の残り数十分という時点でも、会場に複数ある各入り口には紙の資料が余っていた。
筆者が2012年、米国・シカゴで参加したビジネス・コミュニケーションのシンポジウムでは、主催者は参加者に「資料は事前もしくは当日にダウンロードしてください」と呼びかけ、紙の資料は一切配らない「グリーンプログラム」形式だった。
来場者が首から下げるプラスチック製の名札は、最後に回収するが、全てを回収できるわけではないだろう。
配布されるものの中にもプラスチック製袋はあった。
環境配慮の最優先リデュース(ごみを出さない)より「余ったら使う」のリユース(再利用)が多い?
環境配慮の原則である「3R(スリーアール)」では、最優先は「Reduce(リデュース)」だ。水道の蛇口にたとえると、水を出しっぱなしの蛇口を締めることが一番大事。飲食では、食べきること。
ただ、ここ10年のメディアの取り上げ方を見ていても、Reduce(リデュース)よりは、余ったものを売る、もしくは余ったものを使うの「Reuse(リユース)」の取り組みの方が、こぞってメディアに露出している。
作るものを減らすと経済が収縮すると意見する人もいる。
飲食業が展示していた、食べ残しを堆肥にする取り組みは、3Rのうちの3番目である「Recycle(リサイクル:再生利用)」だ。
地球温暖化が一目でわかる写真は有意義
「エコプロはエコなのか」の問いからは外れるが、「これはいい」と思ったのは、イオン環境財団が開催していた、15分程度のミニ環境教室だ。人工衛星から撮影した写真を見ると、1992年と比べて、2016年には北極圏の氷の量が激減していることがよくわかる。豪雨や水害が世界各国で発生している要因の一つでもあるだろう。
弘前大学がカゴメと提携して研究し、手のひらを載せるとすぐに野菜摂取量の目安が計測できる機械も面白かった。
緑黄色野菜などに含まれるカロテノイドの量を測定しているのだそうだ。
エコプロ自体を持続可能に
半日、エコプロ会場を廻ってみて、もちろん素晴らしい取り組みを知ることができたが、一方で、冒頭の大手企業社員のコメントも理解できた。毎日、食べ物を山のように捨てている企業に「うちの会社はエコです」って言われても、ねえ・・・。斜に構えた見方をすれば、自社が排出している廃棄物や食品ロスを目くらましするためにエコプロに出展していると見えなくもない。もちろん、広く多くの人に知ってほしいという純粋な気持ちで出展している組織もある。えてしてそういうところは地味で目立たないが、その方がむしろ好感が持てる。筆者が食品ロス削減の好事例として記事で取り上げている中小企業は、高額な出展料やブース設置料などを払ってまでエコをアピールする意思はないだろう。
展示の内情を知る人によれば、大掛かりなブースは会期が終わった途端に壊され、たちまちごみの山になるそうだ。持続可能って、ごみをできる限り出さないことではなかったか。あの大掛かりで華々しいブースは、たった3日間のために本当に必要なのだろうか。
2018年に大規模な出展をしていた大手食品企業が、2019年には出展していなかったのも印象的だった。
エコプロ自体は、ソーシャルメディアで「楽しかった」「面白かった」と投稿している人も多い。エコプロそのものがさらにエコな取り組みになればよいと思う。
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