「人口減でも出店増」会社の成長戦略に矛盾感じる40代男性のジレンマ
『「もうやめて新商品」バイトの女子大生が見たファストフード店の裏側』という記事を読んだ40代男性から連絡を頂いた。食品を扱う小売業の上層部の方だ。
食品ロス問題について、彼は、過剰な新製品発売はもちろんのこと、一番問題なのは、人口が減っているのに店舗数が増えていることにあると言う。
日本でネットスーパーが広がらない背景
彼は「日本はオーバーストア状態」だと語る。ネットスーパーが日本でなかなか広がらない背景には、海外に比べると、1人当たりの店舗数や、住んでいる範囲にある店舗数が圧倒的に多いデータがある、と。もちろん地方では「買い物難民」の問題があるが、首都圏の中心地ではそうだろう。
大手コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売業は、成長戦略に「出店増」を据え置いている。だから、店は今後も増え続ける。一方、人口は減っている。毎年の店舗増加分はロスになっているはずだ、と。
この30年間で坪あたり売上高が50%減の理由
商業界オンライン、2018年4月16日付の記事『「人的生産2倍」が求められる!小売業界「働き方改革への対応」こうする(吉田繁治著)』には、1990年代から今までの27年間で、店舗面積の坪あたり売上高が50%減った理由として、次の2つが挙げられている。
商品単価が下がり、一方、店舗数は増加しているため、坪あたりの売上高が下がった。加えて人口は減少している。
人口減、でも店舗数は年々増加
日本フランチャイズチェーン協会の「コンビニエンスストア統計データ」によれば、2018年4月現在、全国のコンビニエンスストアの店舗数は55,465店となっている。サイト「High Chart Frequent」が、日本フランチャイズチェーン協会のデータを元にグラフを作成していたので引用させて頂いた。
「統計・データで見るスーパーマーケット」によれば、2018年5月時点で、スーパーマーケットの店舗数は20,515店。
人口が減っているのに店舗数が増えるのはおかしい
前述の40代男性は、飽和状態でなお店舗数が増える背景をこう語る。
「普通に考えたら、人口が減っているのに店舗数が増えるっておかしいですよね?」
全国の小売業の経営陣は、国連サミットが採択したSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)を把握しているのだろうか。2030年までに、世界の小売と消費者レベルの食料廃棄は半減を目指すという目標が定まっている。
ヨーロッパの小売業を視察すると、店内には環境配慮のキーワード「3R(スリーアール)」のポスターが掲示されていたり、顧客に適切な量を買うよう諭すような告知物があったりする。筆者が仏英視察(*)でイギリス・ロンドンのスーパー、ホールフーズマーケットに行った時、食品廃棄を減らす目的で「3R(スリーアール)」のポスターが貼られていた。日本のスーパーでは、まだ見たことがない。
イギリスの大手スーパー「TESCO(テスコ)」は、どのような食品が無駄になりやすいかの調査を行い、パック入りサラダが最も廃棄率が多い結果を踏まえ、「2個買うと安いよ」作戦をやめた。もう、自分の会社だけが儲かればいいという時代ではない。先進国はSDGsを牽引する責務があるのだ。われわれ消費者も、どの企業が倫理的な商売をしているのか、経済と環境の両方を考えているのか、見定めて買い物する責任がある。
参考情報:
「もうやめて新商品」バイトの女子大生が見たファストフード店の裏側
「人的生産2倍」が求められる! 小売業界「働き方改革への対応」こうする(吉田繁治著、商業界オンライン)