ノート(198) 国賠訴訟における訴えの取下げとその同意を巡る騒動
~尋問編(4)
受刑177/384日目
騒がしい拘置所
未明に大声で叫ぶ男がおり、うるさくて目が覚めた。40室ある同じフロアの独房の真ん中あたりからで、「なめとんのかぁ~!」「やるんかぁ~!」などとわめいていた。独り言のようだった。
夜勤の刑務官が駆けつけ、「静かにせえ!」などと何度も注意したが、全くその指示に従わず、さらに何ごとか大声でわめき続けていた。そのうち複数の職員がバタバタとやってきて、男を独房から引っ張り出し、保護室に連行したことで、ようやく静かになった。
このフロアでは、大声で騒ぐ者が相次いでいた。例えば、早朝に「身体が痒いから」というだけで当直の職員を呼び出し、医務の受診を強く求め、「医師がいない時間だから少し待て」と言われただけでブチ切れ、周囲への迷惑を顧みず大声で不平不満をわめき散らす者などだ。
ほかにも、何か気に入らないことでもあるのか、昼夜を問わずフロア担当の刑務官に何かと暴言を吐き、「ワーワー」とわめき、窓をバタン、バタンと荒々しく開け閉めし、壁をドン、ドンと何度も蹴るといった暴挙に出る者もいた。
さすがにこの男には、5日間、私物の使用や面会、手紙のやり取り、運動などを停止し、室内の所定の位置に座って謹慎させられる「閉居罰」が科された。獄中用語で「座り」と呼ばれるものだ。
この5舎3階のフロアには、重犯罪者や職員の指示に従わない処遇困難者、精神障害者らが数多く収容されており、何かと騒がしいのも致し方なかった。
有罪判決や刑期が確定し、社会復帰に向けてゴールが決まっており、早期の仮釈放を目指す刑務所の受刑者と比べると、何かと未確定の要素が多く先行きが見えにくい拘置所の被疑者や被告人らは、全体的に雰囲気が暗い。
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