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久保建英のマジョルカ移籍決定と、ラ・リーガが抱える問題と。

森田泰史スポーツライター
久保は再びマジョルカへ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

久保建英のマジョルカへの移籍が、正式に決定した。

これで良かった。率直に、そう思う。東京五輪で日本がベスト4に進出したとはいえ、ヨーロッパで、スペインで久保の評価が爆上がりするわけではない。

1部復帰組のマジョルカが、再びレンタルでの獲得を申請した。残留争いをするチームで、レギュラーポジションを争う。それ以上でも、それ以下でもない。そこが現在の久保の立ち位置である。

ヘタフェでプレーした久保
ヘタフェでプレーした久保写真:ムツ・カワモリ/アフロ

まずは、今夏のマジョルカの補強と久保に期待される役割だ。

アンヘル・ロドリゲス(前所属ヘタフェ/フリートランスファー)、ジャウメ・コスタ(ビジャレアル/フリートランスファー)、パブロ・マフェオ(シュトゥットガルト/レンタル)、ビクトル・モジェホ(アトレティコ・マドリー/レンタル)、ロドリゴ・バッタリア(スポルティング・リスボン/レンタル)、アマト・エンディアイエ(ヘタフェ/移籍金400万ユーロ)、ドミニク・グレイフ(スロバン・ブラチスラバ/移籍金250万ユーロ)、久保(レアル・マドリー/レンタル)。これが現時点でのマジョルカの補強だ。

“エキゾチック”な補強はグレイフくらいで、あとは手堅い。レンタル延長のモジェホ、レンタル後の買取で確保したアマト、2019−20シーズン以来の復帰となる久保、ラ・リーガでの経験があるマフェオに、バッタリア。ベテランのアンヘルと、J・コスタがマジョルカの一員になった。

ビジャレアルでは思ったようにプレータイムを得られず
ビジャレアルでは思ったようにプレータイムを得られず写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ルイス・ガルシア・プラサ監督は【4−2−3−1】を基本布陣とするだろう。ただ、ラ・リーガ開幕前の補強を踏まえ、【4−3−3】との併用が考えられる。

久保の主戦場は右サイドになるだろう。右サイドバックには、同じく新加入のマフェオがいる。ユース世代でマンチェスター・シティの育成組織に引き抜かれた逸材で、アップダウンを厭わないハードワーカーだ。2019−20シーズン、久保はシーズン後半戦にアレハンドロ・ポソと息の合ったコンビネーションを見せ、序列を回復した。ポソと似たようなプレースタイルのマフェオであれば、良好な縦関係が築けるだろう。

逆サイドには、アマトやラゴ・ジュニオールが控える。アマトもまた、2019−20シーズンにマジョルカで久保のチームメートだったクチョ・エルナンデスとプレースタイルが似ている。C・エルナンデスほど連携力はないが、突破力とフィニッシュの力強さに定評がある。なお、アマトはテネリフェとヘタフェで柴崎岳の同僚だった選手である。

そして、前線だ。ここが、久保としては2019−20シーズンとの最大の違いになるかもしれない。あのシーズンは、アンテ・ブディミル(クロアチア代表/現オサスナ)がCFにいた。ブディミルへのクロスやロングボール、そこからの二次攻撃というのが可能だった。ただ、アンヘル、アブドン・プラッツでは特徴が異なる。スピードが売りのアンヘルあるいは万能型のアブドンを1トップに据え、より縦に速い攻撃が展開されるはずだ。

■久保への期待

そのなかで、久保に要求されるのは、個人での打開力である。ドリブル、突破力。1対1で果敢に仕掛け、相手を剥がしていくプレーだ。

その点で久保に不足はないだろう。ただ一方で、守備に関しては、強度と献身が求められる。マジョルカの中盤には、依然としてサルバ・セビージャが君臨している。ベテランのS・セビージャがいる限り、両サイドの選手が上下運動をして助けあわなければならない。

2019−20シーズンにあったような、S・セビージャと久保の連携に関する議論は、どうでもいい。S・セビージャが久保にパスをしない。S・セビージャを切って久保を中心にすべきだ、云々。くだらない話はさておき、現実に立ち返るべきだ。久保は1部残留を争うチームの選手で、そのチームではサイドの選手にハードワークや守備の強度が要求される。

日本で巻き起こりそうな荒唐無稽なディベートを先取り(ルイス・ガルシア監督の起用法にも批判が向きそうだがそれは割愛する)したところで、久保に関して言えるのは、次のステップを見据えた時、そこは避けては通れないハードルだということだ。

ラ・リーガのテバス会長
ラ・リーガのテバス会長写真:ロイター/アフロ

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■ラ・リーガの大きな問題

さて、久保のマジョルカ移籍でラ・リーガの盛り上がりに期待したいところだが、ハビエル・テバス会長は現在大きな問題を抱えている。

新型コロナウィルスの影響で各クラブの財政は打撃を受けている。スペインの場合、それは非常に深刻だ。そこで、ラ・リーガはおよそ一年前から交渉を続けていたCVCキャピタルとのビジネスを前に進めることを決断。その内容は、27億ユーロ(約3510億円)の資金調達で、その9割が40年〜50年のうちにソフトローンで各クラブに分配されるというものだった。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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