アンチェロッティ・マドリーが再発進。「即戦力」アラバの適応と、中盤の歪なバランスへの梃入れ。
2020−21シーズンのリーガエスパニョーラが、幕を開けた。
注目のチームのひとつが、レアル・マドリーだ。ジネディーヌ・ジダン前監督の退任を受け、カルロ・アンチェロッティ監督が復帰する形で就任した。昨季、無冠に終わったマドリーで、フロレンティーノ・ペレス会長としてはタイトル獲得を続投の必須条件に掲げているだろう。
開幕節のアラベス戦で、アンチェロッティ監督は“経験”に賭けた。
フェルラン・メンディとマルセロを負傷で欠いた左サイドバックには、カンテラーノのミゲル・グティエレスではなく、ダビド・アラバを据えた。3トップにはカリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、エデン・アザールを起用し、ヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴ・ゴエスに関してはベンチスタートとなった。
■即戦力級の選手の加入
この夏、キリアン・エムバペがマドリーに加入するかは定かではない。そのような状況で、最大の補強は、やはりアラバになる。
「まるで生涯を通じてマドリーでプレーしているようだ」とスペインメディアで評された通り、アラバの適応に問題はなかった。何より、複数ポジションをこなせるポルバレントな能力が、今後のアンチェロッティ・マドリーの大きな武器になるはずだ。
マドリー加入前の段階で、アラバは実に6つのポジションでプレーしてきた。左サイドバック(247試合)、左センターバック(116試合)、左サイドハーフ(17試合)、ボランチ(78試合)、右サイドハーフ(4試合)、右ウィング(1試合)という内訳である。
アラバをバイエルンでトップデビューさせたのは、ルイ・ファン・ハール監督だ。2010−11シーズン、国内カップ戦で初出場を記録した際、彼に与えられたのは中盤のポジションだった。これについて「アラバは素晴らしい左サイドバックだ。だが、まだそのポジションでのプレーを心得ていない」とファン・ハール監督が当時コメントしていた。
その後、ユップ・ハインケス監督はアラバを左サイドバックで起用するようになった。ジョゼップ・グアルディオラ監督は就任一年目においては左サイドバックで、就任二年目以降は左サイドバック(58%)、センターバック(31%)、中盤(11%)と徐々に起用法を変えていった。
なお、アンチェロッティ監督は2016−17シーズンから2017−18シーズンにかけて、454日間に渡バイエルンで指揮を執ったが、その期間でアラバを左サイドバック(78%)と左センターバック(22%)と使い分けていた。
■歪だった中盤のバランス
アラバの存在は、最終ラインの選手だけではなく、中盤のプレーヤーを助けることになるだろう。
それはアラバをボランチやインサイドハーフで起用するという単純な話に留まらない。アラバの左サイドバックあるいは左センターバック起用が、カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチらのサポートに繋がる。
ジダン指揮下においては、左インサイドハーフのクロースがディフェンスラインまで落ちてきて、ビルドアップに参加していた。”クロースロール”と呼ばれる形だ。「クロース+2CB」でビルドアップするのが常態化していた。
それから、メンディの偽サイドバック化である。攻撃時・守備時で、メンディが果たしていた役割は大きかった。
攻撃面では、中盤で内側に絞り、数的優位を作り、なおかつウィングがボールを持った際にはインナーラップとオーバーラップの走り分けでサイドアタックを円滑にしていた。
また、ジダン・マドリーでは、ボール保持時にカゼミーロが「アンカー出し」の動きでスペースメイクをしていた。これはクロースとモドリッチにスペースを与えるためであり、ゴール前でカゼミーロがクロスに飛び込むためであり、かつセカンドボールを拾うためでもあった。
アラバの加入で、カゼミーロやクロースの負担は軽減する。
例えば、アラバをセンターバックで起用した場合だ。ビルドアップ面では、縦パス、サイドチェンジ、中盤に侵入するドリブルと複数の選択肢がある。カゼミーロとアラバでビルドアップをする場面が増えるはずで、クロースロールばかりするというのは減る。ジダン政権ではクロースロールに頼りすぎていた。理想はクロースロール、アラバとカゼミーロのボール運び、といった具合にビルドアップで複数パターンを有することだ。
アンチェロッティ監督は初陣でモドリッチを左インサイドハーフに置いた。このポジションはクロースの定位置だった。クロースが負傷欠場していたとはいえ、フェデリコ・バルベルデが右インサイドハーフで、モドリッチが左インサイドハーフだった。その逆ではなかった。
アンチェロッティの中で、アラバを使いながら、中盤の選手の仕事を減らすというのはイメージできているだろう。
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■アセンシオと新たなディ・マリア
もうひとつ、中盤では、マルコ・アセンシオの使い方が気になるところだ。
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