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窓を開けて世界を救おう!新型コロナウイルス集団感染を防ぐシンプルな方法

榎木英介病理専門医&科学・医療ジャーナリスト
窓を開ければウイルスが風に流される!

見えてきた「敵」の弱点

 新型コロナウイルス、SARS-CoV-2の感染拡大が止まらない。世界各地でSARS-CoV-2が引き起こす感染症COVID−19による死者が増え続けており、日本国内でも、感染経路が分からない患者が増えてきている。

 3月19日、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を発表した。

 危機的な状況に間違いはないが、関係者の多大な努力により、新型コロナウイルスの集団の感染が広がる条件、いわゆる3つの条件が見えてきた。

これまでに明らかになったデータから、集団感染が確認された場に共通するのは、1 換気の悪い密閉空間であった、2 多くの人が密集していた、3 近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場ということが分かっています。

出典:新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言

 集団感染が発生した屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会などは3つの条件が重なっていた。

 この3つが重なることを避けることが、集団感染を防ぐことになる。大規模イベントや集会の自粛は、この3つの条件を避けるために重要だと言える。

画像

首相官邸ページより

 3つの条件の発見はとても重要で、たとえば電車のなかでの感染拡大が起こっていない理由も読み取れる。

 満員に近い密集した電車であっても、多くの人は黙って乗っている。そして、特に都市部では、頻繁にドアの開閉があるから、定期的に換気がある。

 3つの条件のうちどれか一つでも崩すことができれば、集団感染を減らすことができる可能性がある。

3つの条件クラッシャーは「窓開け」だ!

 人が集まることを自粛することは、3つの条件が重ならないようにする有効な手段だが、ずっと続けることはできない。学校を休校したままにすることの影響は大きい。

 ではどうすればよいか。

 3つの条件を崩すためにできる簡単で、しかもお金がかからないシンプルかつ効果的な方法は、窓を開けることだ。

 窓を開けて室内の空気を入れ替えれば、新型コロナウイルスは飛ばされていく。先日放送されたNHKスペシャル「“パンデミック”との闘い~感染拡大は封じ込められるか~」でも、新型コロナウイルスに見立てた粒子が窓や扉を開けることで流れていく実験の映像が流れていた。

 まだ寒いかもしれないが、学校では休み時間に窓を開けて換気しよう。家でもこまめに窓を開けよう。

 室内の換気は、空気中に含まれる化学物質を減らすために重要であるとの指摘は以前からあった。

 現在では、シックハウス症候群の防止のため、新築の建物では24時間換気が義務付けられている。

改正建築基準法が施行された2003年7月以降、全ての建造物に24時間換気システムを設置することが原則として義務付けられました。

その理由としては、シックハウス症候群を予防することが挙げられます。

出典:今さら聞けないマンションの“24時間換気システム”をおさらい

 しかし、古い建物などでは換気がこまめに行われているとは言い難いのが現状だ。また、24時間換気システムでは、「1時間で部屋全体の空気の半分以上が入れ換わっていることが必要である」とされている程度であり、新型コロナウイルスが漂うことを防ぎ切れるかは微妙だ。

 そこで、これを機に、窓を開けることを習慣にしたい。それぞれの場所で、窓を開けるルールを決めて、それを習慣にしたい。

 電車でも窓を開けて欲しい。可能ならば。

 もちろん、高層住宅やビル、寒冷地などでは簡単に窓は開けられないことも多いと思うが、可能な範囲で窓や扉を開けて、空気の流れを作ってしまおう。花粉症に苦しむ方々や、沿道沿いで排気ガスが気になる場所では、窓を開けたくないのは分かるが、時間帯を工夫するなどして開けて欲しい。

窓を開けて病院を守ったベトナム

 実は窓を開けたことで、ウイルスの蔓延を防げた例がある。

 それは、今回の新型コロナウイルスの親戚のコロナウイルスであるSARS(SARS-CoV)に襲われたベトナムのバックマイ病院の事例だ。

同病院にはWHOが推奨する陰圧室は無いため、 窓を開放するなどして病室の換気を行った。

出典:ベトナムでのSARSの状況

 もちろん、窓を開けただけでなく、様々な対策を行った結果ではあるが、医療関係者への感染を一例も出すことがなかったという。

窓を開ける運動、#Madoakeを始めよう

 伊藤智雄さん(神戸大学医学部附属病院病理診断科教授)は、医師として今回の新型コロナウイルスの拡大を深く憂慮している。なんとかしたいという強い思いから、窓を開ける運動、#Madoakeを始めることにした。

 実は伊藤さんは私の病理診断の師匠でもある。私は伊藤さんの趣旨に強く賛同し、#Madoakeを広めるべくこの記事を書いた。

 伊藤さんは大学生の娘さんにポスターを書いてもらった。

日本語版
日本語版
英語版
英語版
日本語別バージョン
日本語別バージョン

 高解像度版は以下にある。

 

 上記画像は自由に使ってよいとのことだ(この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。)。

 さらには漫画家さんやイラストレーターさんには同じ趣旨のポスターを作っていただき、窓を開けようチャレンジもやってもらえたらうれしいとのこと。アマビエチャレンジの次のトレンドになれば嬉しい。

 もちろん、窓を開けさえすればすべてが解決するわけではない。手洗いをこまめにすることなどは当然必要だ。その上で窓を開ければ、3つの条件を一つ減らすことができる。

 幸いこれから暖かい季節に向かっていく。学校も再開される。窓を開けて、春風とともに、新型コロナウイルスを吹き飛ばそう。

病理専門医&科学・医療ジャーナリスト

1971年横浜生まれ。神奈川県立柏陽高校出身。東京大学理学部生物学科動物学専攻卒業後、大学院博士課程まで進学したが、研究者としての将来に不安を感じ、一念発起し神戸大学医学部に学士編入学。卒業後病理医になる。一般社団法人科学・政策と社会研究室(カセイケン)代表理事。フリーの病理医として働くと同時に、フリーの科学・医療ジャーナリストとして若手研究者のキャリア問題や研究不正、科学技術政策に関する記事の執筆等を行っている。「博士漂流時代」(ディスカヴァー)にて科学ジャーナリスト賞2011受賞。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。近著は「病理医が明かす 死因のホント」(日経プレミアシリーズ)。

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