【日本ダービー】米では補欠繰り上がり馬がダービー優勝 日本はまだ叶わぬ補欠待機
5月29日、東京競馬場で日本ダービー(GI)が行われる。26日に出走馬と枠順が確定したが、今年は賞金ボーダーが高く重賞勝ち馬のコマンドラインが18番目の枠の抽選から漏れ、除外となった。
今年、米ケンタッキーダービーで優勝したのは最初の出走馬のメンバーから漏れたが、レース前夜に出走を回避した馬が出たため、急遽、繰り上がってケンタッキーダービーを走ることになったリッチストライクだった。いつの日か、日本にも繰り上がり制度が取り入れられないものだろうか。
■2021年日本ダービー 優勝馬 シャフリヤール
高まる日本ダービーの賞金ボーダー
コマンドラインは2歳10月に重賞・サウジアラビアロイヤルカップ(GIII)を勝つなど4戦2勝。賞金的に出走可能だった皐月賞(GI)には向かわず、日本ダービー(GI)を目標に調整を進めてきた。
日本ダービーに出走するには、優先枠のあるレースで所定の順位に入って優先権を得るか、JRA独自のルールに基づき獲得した賞金から計算された数値の上位に入る必要がある。過去、"賞金の高い重賞を勝っていれば賞金順ではダービー出走は可能"というのが定説であったが、今年はそれが叶わなかった。昨今は技術進歩によって競走馬のリタイアが少なくなったり、各陣営がレースを使い分けることで高額賞金を持つ馬が多くなったことが賞金ボーダーの上昇に影響しているのだろう。
競走馬は当該週に出走させるために、水曜朝に"追い切り"と呼ばれる強い負荷の調教を行う。そして、出走メンバーが決まるのは木曜の昼過ぎだ。よって、出走が叶わなかった馬は体調は仕上がっているが目標レースに出走できない、という事態となる。日本ダービーは多くのホースマンが憧れる大レース。2022年は同世代7522頭の頂点を目指し、18頭がしのぎを削る。賞金順で最後の18番目の枠を2頭で抽選にかけられた結果、コマンドラインは抽選ではずれた。
当初、今週の別のレース(白百合ステークス)に出走するプランもあったが、馬主と厩舎が話し合い、コマンドラインはいったん放牧に出て仕切り直すことが決まった。その候補に7月13日に大井競馬場で行われるジャパンダートダービー(Jpn1、ダート2000m)も挙げられている。
米ケンタッキーダービーではまさかの補欠馬優勝
先日、米ケンタッキーダービーで優勝したのはリッチストライクだった。最初の出走馬のメンバーから漏れたが、レース前夜に出走予定馬が2頭、出走を取り消したため、補欠の1番手として控えていたリッチストライクが繰り上がってケンタッキーダービーを走ることになった。
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馬は仕上がっている。他のレースにも出走可能だ。しかし、あえてリスクをとり大一番への出走を夢見て"運"に一縷の望みを託す。日本もこんな制度を取り入れられないものだろうか。
そのためにはシステムを新たに構築しなければならないし、決して簡単なことではないと察するが、出走取消による返還で馬券の売上は下がるが、新たに補欠馬の馬券を売れるのだから主催者にとってもメリットはあるのではないか、と考える。知名度や賞金が高いGIは特に人気があるため、補欠馬になるなら除外馬へ返還する特別登録料も返さない、という強い姿勢に出ても応じる陣営は多いだろう。
コマンドラインを管理する国枝栄調教師にこの考えをぶつけてみた。
「当然、JRAがいろいろ制度を整えて、もしもアメリカのような制度(補欠馬の繰り上げ)があったなら、出走させたいと思うよね。
大きなGIで何らかの除外が出たなら、補欠の1番、2番が出走できる、みたいなね。」
現段階でこの繰り上がり制度は「たら」「れば」に過ぎないが、主催者にとってもメリットはありそうだし、出走させる側にも希望が持てるものだと考える。さらにいえば、貴重なGI出走枠だけに、直前に馬の体調に不安がでても取り消しの決断をしにくい、と感じる陣営もいるが、馬の体調を優先して出走を取り消す決断をするハードルが下がることも期待できる。
いつの日か、日本でも先日ケンタッキーダービーのような稀にみる大逆転劇が見れる日がくるのだろうか。まだ、雲をつかむような話だが、その日が来る日を期待してやまない。