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なぜ「人食いバクテリア」などによる「感染症」が増えているのか #専門家のまとめ

石田雅彦科学ジャーナリスト
(提供:イメージマート)

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が第5類へ移行する前後から、パンデミック中には抑えられていた感染症が増えてきています。新型コロナの影響には何があるのか、これまでの報道を踏まえて考えてみました。

ココがポイント

▼ヒトの移動の増加とワクチン接種率の低さからか?

国内はしか発症相次ぐ 同じ航空機の帰国者ら(共同通信)

▼病原体への免疫が低くなっているからか?

免疫低下、増える感染症 識者「マスクや手洗いを」─コロナ5類移行1年─(時事ドットコムニュース)

▼「人食いバクテリア」による感染症が増えている原因はまだわかっていない

「劇症型溶連菌感染症」拡大、最多迫るペース 専門家、予防や早期受診訴え(山形新聞)

▼感染対策が緩んできたことが原因か?

致死率3割以上「人食いバクテリア」劇症型溶連菌が拡大、感染者は過去最多…手足の傷は治療を(読売新聞オンライン)

エキスパートの補足・見解

 新型コロナのパンデミックは、日本を含め世界中のヒトに多大な影響をおよぼしました。新型コロナも新たな変異種が出現し、感染拡大が続いていますが、インフルエンザ、はしか、「人食いバクテリア」による劇症型溶血性レンサ球菌感染症などの感染症もこれまでの季節性や増え方とは異なった流行をみせています。

 その理由にはいくつかの要因があると考えられます。例えば、パンデミック中の感染防止対策によるヒトの免疫機能低下や運動不足、メンタルヘルスへの影響、経済活動の再開によるヒトの往き来や接触の機会の増加、パンデミック後の気の緩みによる感染対策の低下などです。

 新型コロナ・ワクチンによる免疫機能への長期・短期の影響はまだよくわかっていませんが、新型コロナに感染したことで免疫機能に変化があらわれることはあるようです。

 マスクやワクチンなどの感染対策にはメリットもデメリットもあり、トレードオフの関係にあります。新型コロナのパンデミックが、ここのところの感染症の流行や変化に影響をおよぼしているのは明らかでしょう。

 この変化や影響に対抗するためには、やはり感染対策をしっかりするしかありません。我々ヒトは、下水道の整備や清潔な住環境にするなど、これまで感染対策を進めてきました。マラリア蚊などの病原体を媒介する生物を駆除したり、汚染された水を浄化したり、ワクチンを開発したりしてきたのです。

 こうした感染対策を強め、継続すれば、病原体の毒性が弱まると考えられています。なぜなら、感染しにくい環境では、病原体は感染した相手を重症化させたり死なせたりせず、動き回れるくらいの症状に抑えておいたほうが有利だからです。

 それでも病原体は感染しようとし、感受性の高い集団があれば感染症は拡大します。どこでそれを防ぐかといえば、集団を構成する個々それぞれの対策、マスク着用、手指衛生、換気、ワクチン接種などの基本的な対策がやはり重要となるでしょう。

科学ジャーナリスト

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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