森の妖精が眠るハンモック?スカシダワラって何?=真冬の昆虫芸術⑦
冬になると森の木々の枝に「妖精のハンモック」のようなものが目立つようになる。これはクスサンという蛾の幼虫が作った繭で「透かし俵(スカシダワラ)」という古風な名前で呼ばれる。
クスサンは秋に成虫になるので、冬に見つかるスカシダワラは、たいてい成虫が脱出したあとの抜け殻だが、たまに羽化しそこねた蛹が入っていることもある。
そんな蛹は、「揺りかごの中で目覚めの時を待つ妖精だ」とか、美しく形容したいところだが、目覚めて出てくるのは、羽を広げると10センチ以上になる不気味な蛾だ(蛾マニアにとってはこれも妖精に見えるかもしれないが)。
スカシダワラの網の目は粗いので、中の蛹がほぼ丸見えになる。こんなシースルー、フィッシュネットのような装いでは、さぞ寒かろうと思う人がいるかもしれないが、心配は無用。
クスサンが蛹になるのは夏から早秋の、まだまだ暑い季節。シースルーの装いは、そんな季節の暑さ対策なのかもしれない。スカシダワラの中は、風通しが良く涼しいはずだ。
栗の葉を食べる害虫として知られるクスサンの幼虫の別名は「白髪太郎(シラガタロウ)」。白く長い毛に覆われているため、この名がある。
「白髪太郎が透かし俵を作る」などという説明は、まるで「日本昔話」を聞いているようで心が和む、などと思うのは虫好きだけだろう。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)