日英伊が共同開発する次期戦闘機GCAPを発表
12月9日、日本の次期戦闘機FX(仮称F-3)とイギリスの次期戦闘機テンペストの計画が統合され、これにイタリアが参加する三カ国合同戦闘機GCAP(Global Combat Air Programme、グローバル戦闘航空プログラム)が発表されました。2035年までの実用化を目指しています。
日英伊三か国首脳による次期戦闘機共同開発の公表:外務省
また同時にアメリカがこのGCAP計画を支持することを表明し、更に次期戦闘機を補完する「自律型システム」について日米が具体的な協力を始めるとしています。
これはアメリカ政府は日本が次期戦闘機のパートナーとしてアメリカを選ばなかったことを問題視していないことをアピールするものです。またこの件での「自律型支援システム」とは戦闘機と組み合わせて使うロイヤルウィングマン無人機のことです。
参考記事:MQ-28Aゴーストバットと命名、豪州ロイヤルウィングマン無人機(2022年3月21日)
なおロイヤルウィングマン無人機ではオーストラリアのATS計画「MQ-28Aゴーストバット」が世界で最も先行しています。
複数種類の別の形状のイメージ絵が発表されたGCAP計画
今回のGCAPの発表で新たに紹介された新型戦闘機のイメージ絵は形状の違うものが複数種類あったので、まだ設計は完全には決まっていないようです。
従来の日本のFXやイギリスのテンペストのイメージ絵やモックアップ(模型)からは大きく異なったものもあれば、テンペストに少し似ているものもあります。
GCAP計画は対等なパートナーシップ協定であり、どれか一国が主導する計画ではなく3カ国の話し合いの検討で仕様を決める方針なので、広い太平洋で戦うには航続距離の長い大型の機体が欲しい日本の要求が何処まで通るかが焦点になるでしょう。
地図の位置から上が日本案で下がイギリス案?
日本案?
イギリス案?
背景の写真からイタリア(ローマ)
背景の写真からイギリス(ロンドン)
背景の写真は日本の富士山だが、2種類の案
ダイバータ無しエアインテイク案
ダイバータ有りエアインテイク案
これは背景が日本の富士山の写真ですが、イメージ絵の機体はエアインテイクの形式が違う上に、胴体の形状、主翼の形状が全て違います。
- 上の画像はダイバータ無しエアインテイク(テンペスト初期案に似る)
- 下の画像はダイバータ有りエアインテイク(テンペスト新案に似る)
このGCAPの新しいイメージ絵の片鱗は、2022年7月のファーンボロー航空ショーで英BAEシステムズが展示したテンペストの新しいモックアップ(模型)に既に現れていました。従来のテンペストのイメージ絵と全く違う形状の機体が出て来たのです。このころには既に日英伊で話し合いが進んでいて、次期戦闘機の設計案の仕様変更が行われて、日本の要望なども取り入れて再検討していたのだと思われます。
2022年7月ファーンボローで展示されたテンペスト模型(新案)
2022年10月に英BAEシステムズが発表したテンペスト(新案)
以前の英BAEシステムズのテンペスト(初期案)
※テンペスト初期案はダイバータ無しエアインテイク。
※テンペスト新案はダイバータ有りエアインテイク。
※ダイバータ(diverter)とは航空機では「境界層隔壁」の意味。空気の粘性で機体表面で遅くなる境界層空気流を吸い込まないように空気取り入れ口に隙間を設けたもの。
※ダイバータレス超音速インレット。上記のダイバータ無しで境界層空気流を吸い込まないようにする方式。「Diverterless Supersonic Inlet」で略称DSI。
※エアインレット(air inlet)=エアインテイク(air intake)
※初期案と新案は主翼の形状も大きく異なる。