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47歳。自慢でも何でもありませんが、「モテない」経験をしたことがありません~スナック大宮問答集54~

大宮冬洋フリーライター
神戸・岡本の居酒屋にて。「誰からも好かれる」女性と対話しました。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催140回を超えた。のべ2800人ほどと飲み交わしてきたことになる。

 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。

 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めて対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***ユキさん(仮名。バツイチ女性、47歳)との対話***

全然知らない人との飲み会ってどんな感じ? 興味津々で参加してみたら……

――スナック大宮には初参加なのに楽しそうに過ごしてくれていましたね。ユキさんの周りの人はみんな嬉しそうにしていたのが印象的です。主催者としては大助かり。バイト代を払いたいぐらいでした(笑)。

 地元の兵庫での開催だったので、全然知らない人との飲み会ってどんな感じなんだろうとすごく興味を持って申し込んだんです。実際、いろんな職業や生活環境の人がいて新鮮でした。うまく話せなさそうな人に声をかけているめっちゃ優しい既婚男性とか、細身で目が大きくてキレイなのに結婚したことがないという婚活中の女性とか。「へー」と感心することが多くて楽しかったです!

――ユキさん自身は婚活をしていないけれどバツイチ独身でしたよね。結婚生活は長かったんですか?

 20歳で結婚して5年前に離婚したので20年以上の結婚生活でした。浮気癖がある人だったのでもっと早くに私の気持ちは冷めていて「別れたほうがいいかな」と思っていたのですが、娘たちにとってはいいお父さんです。「お父さんもお母さんも大好きなので別々に暮らすのは嫌」と言われてしまい、彼女たちが大人になるのを待ってから離婚しました。前夫はすでに再婚していて、幸せにやっていると思います。連絡していないのでよくわかりませんけど。

――今では娘さんたちも独立して、ユキさんはお一人暮らしらしいですね。どんな心境ですか?

 今年の春に長女が巣立ったときはすごく寂しかったのですが、その2か月後に次女も独立して完全に一人になってからは不思議なほどさっぱりした気持ちになりました。仕事もそこそこ忙しいし、男女問わず飲み友だちはたくさんいるので、思ったほどの寂しさはありません。3DKの自宅はガラーンとして一人では持て余しているので、飲み仲間を招くこともしょっちゅうです。娘がいないので気兼ねなく泊って行ってくれます。

 去年の夏までは恋人もいました。飲み友だちの紹介で会った5歳上の男性で、私と同じく離婚歴がある人です。結婚する話になっていたのですが、彼の娘さんの大反対にあってしまって別れることになりました。

――彼の娘とユキさんの相性が悪かったのでしょうか。

 いえ。彼女も最初は賛成してくれていたのですが、旦那さんの浮気で離婚することになって子連れで実家に戻って来たときには精神的に参ってしまっていました。「お父さんの再婚は相手が誰であろうと反対!」と言い出すようになって、彼から「娘が落ち着くまでちょっと待ってくれ」と言われたんです。

 私にも年頃の娘がいるので、彼の気持ちはわかります。もし娘が同じように困ってうちに帰って来たら、婚約者より娘を優先するでしょう。だから、「大丈夫だよ。でも、1回別れましょう」と伝えました。よりを戻すつもりはありません。

参加者の美女たちに挟んでもらって顔が緩みがちな筆者。幹事の役得です!(参加者提供)
参加者の美女たちに挟んでもらって顔が緩みがちな筆者。幹事の役得です!(参加者提供)

長女からは「お母さんはモテるから、変な男性につかまらないか心配」と言われています

――それは辛い経験でしたね。でも、ユキさんならばすぐに次の恋人候補が見つかりそうです。

 私は特に再婚したいわけではありません。ご縁があって「この人と結婚したいな」と思ったら結婚するかもしれない、という程度です。私よりも娘たちが適齢期なので、これからは彼女たちの結婚を見届けて孫を見ることを楽しみにしています。

 長女からは「お母さんはモテるから、変な男性につかまらないか心配」と言われています。自慢でも何でもなく、私は若い頃から「モテない」とか「出会いがない」という経験がありません。男の人も女の人も常に周りにいてくれるので、休みの日に食事に出かける相手はすぐに見つけられて、「今日はこの店に行こう!」と誘い合っています。

 一緒に美味しいお酒と料理を楽しめて、たまには旅行ができる友だちがいれば十分に幸せです。若い頃みたいに、特定の人に「会いたくて会いたくて胸が苦しい」という感覚は忘れかけています。大宮さんはどうですか?

――僕も同じですね。妻とは仲良くやっているつもりですが、子どももいないので一緒にいる理由は「晩酌ができること」に尽きます。外に出ていい感じの女性に優しくしてもらったりすると恋焦がれるような気持ちになることはありますが、たいてい一晩で鎮火。次の日には別の誰かのことを考えていたり(笑)。

 私は一緒にいて疲れない人がいいな。男の人と食事をすると、10人中10人が「めっちゃ楽しかった。僕たちは気が合う!」と言ってくれるのですが、私は疲れて早く帰りたくなることが少なくありません。私も「気が合う」と感じるのは2、3割です。

――どういうときに疲れるのですか。

 私が全く興味のない話題や自慢話を延々としゃべる男性が多いです。そういう人は私の話はほとんど聞いてくれません。だけど、すごく楽しそう。私はつまらないので腕時計をチラチラ見たりしているのですが、それにも気づかずに話し続けています。

――あー。好みの女性が感じ良くしてくれると、僕もそのモードになりがちです。自分だけ気持ち良くしゃべり続けてしまって、相手が退屈しているのに気づかなくなってしまうんですよね。気をつけなくちゃ……。

 逆に、私の話をあまり聞いてくれていない風だったのに、次に会ったときにちゃんと覚えていて、「あの本を読んでみました」とか感想を言ってくれたりする男性がいます。びっくりして嬉しくなりますよね。そういう人とは機会があればまた一緒に飲みたいです。私から誘うことはありませんが、連絡先を交換して誘ってもらえるような会話を心がけるようにしています。

左端がユキさん。「うまく話せなさそうな人に声をかけているめっちゃ優しい既婚男性」に話を聞いてもらっています。こういう嬉しい一期一会もありますよね!(参加者提供)
左端がユキさん。「うまく話せなさそうな人に声をかけているめっちゃ優しい既婚男性」に話を聞いてもらっています。こういう嬉しい一期一会もありますよね!(参加者提供)

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自分を知るのは難しいからこそ、他者との「その場限り」の対話を通じて自己認識を深める

 以上がユキさんとの会話だ。男性が多い職場で事務職をしていて、既婚男性にしつこく言い寄られて困ったこともあると明かすユキさん(会社に相談してその男性は左遷されて解決)。とりわけ隙が多い女性だとは思わないが、老若男女から好かれるタイプだと思う。

 彼女がモテる理由は、「今いる場をできるだけ楽しむ。面白さを見つけて、自分も場の雰囲気づくりに貢献する」という姿勢が自然に備わっているからだと思う。「この人の話はつまらない」「趣味嗜好や意見を押し付けられている」などと感じた場合も、できるだけ明るい受け答えを心がけているのだろう。そうすると、勘違いをした変な人に慕われてしまうリスクも高まるのだけど……。

 筆者自身はユキさんのように「10人中10人から好かれる」タイプではない。初対面の他人からすごく好かれることもあるけれど、毛嫌いされることも少なくない。好悪の感情が顔に出やすくて公私ともに自分中心なところがそのような結果を生んでいるのだと思う。 

 ユキさんとは別の女性参加者からは「(大宮さんは)メンヘラっぽい人と共鳴するエンパス性は絶対なさそう」と指摘された。確かに、周囲にいるのは精神的に安定しているけれど繊細で心優しい人ばかりだ。筆者には他人に対する警戒心のようなものがあり、「他者と関わって傷つくのを恐れてしまうシャイな大人たち」を惹きつけているらしい。なるほど……。

 よく会っている友人や仕事仲間は自分と同じような感覚や価値観の人が多い。ユキさんのいう「気が合う」人たちだ。でも、スナック大宮のような場では、周囲とはちょっと違う雰囲気の人とも本音で語り合うができる。友だちになりたいとは思わない相手でも、その場限りの発見の喜びはあるだろう。

 自分のことを知るのは難しい。他人と交流して、楽しく比較しながら自己認識を深めるしかないと筆者は思っている。そういう場としてもスナック大宮を使ってほしい。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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