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ウクライナのノーベル平和賞受賞者 ロシア受賞者との共同インタビュー拒否

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
「市民自由センター」のマトイチュク代表はインタビューを別々にと希望 筆者撮影

8日はノルウェー現地のメディアであることが話題となっていた。

ウクライナの人権団体「市民自由センター」のマトイチュク代表が、ロシアの人権団体「メモリアル」のラチンスキー代表との共同インタビューを拒否したのだ。

ノーベル平和賞の時期には、受賞者の宿泊先である「グランドホテル」の「ノーベル・スイーツ」でノルウェー公共局NRKとBBCが受賞者を共同インタビューする伝統がある。

「市民自由センター」のマトイチュク代表が、「メモリアル」のラチンスキー代表の隣に座って一緒にインタビューされることを望んでいないことは、8日に明らかとなった。

拒否する理由にはウクライナ侵攻を挙げ、マトイチュク代表は「メモリアルの活動は尊重している」が、「ウクライナの立場を明確にすることが重要」と、8日にオスロ空港に到着した際にノルウェーのメディアに説明した。

「メモリアル」のラチンスキー代表は「メモリアル」側との関係が険悪であることは否定し、「我々は今までも今日も友人である。インタビューは別々のほうが良いのかもしれない。私たちは落胆しておらず、友情はこれからも続く」と、「市民自由センター」のマトイチュク代表の決定を理解すると話している。

インタビューを別々にすることを承知した「メモリアル」のラチンスキー代表 筆者撮影
インタビューを別々にすることを承知した「メモリアル」のラチンスキー代表 筆者撮影

ノーベル平和賞の時期には恒例行事がいくつかあり、受賞者はその伝統に従うことがノルウェーでは暗黙の了解として期待されている。

同時受賞者の共同インタビュー拒否は異例であるため、ノルウェーのメディアを驚かせていることは間違いない。

それほどロシアによるウクライナ軍事侵攻が緊迫化しており、マトイチュク代表の思いを「尊重しなければいけない」とノルウェーの記者たちは伝えている。

マトイチュク代表は全ての場で「メモリアル」のラチンスキー代表と同席することを拒否しているわけではない。

記者会見は共に出席

9日はノーベル委員会で記者会見が行われた。共同受賞者であるベラルーシの人権活動家のアレシ・ビャリャツキ氏は収監中のため、代理で妻のナタリヤ・ピンチュク氏が出席した

ノーベル委員会の記者会見 筆者撮影
ノーベル委員会の記者会見 筆者撮影

「市民自由センター」のマトイチュク代表に対してはノルウェーのメディアから、「なぜ共同インタビューを拒否するのか」と改めて問う声もあった。

筆者撮影
筆者撮影

マトイチュク代表は「メモリアルとはこれまでも協力関係にあり、人権団体の同僚としてメモリアルの活動を尊重している。今日の記者会見では共に出席することで、人権団体は固い絆で結ばれており、法が機能していなくとも、人間の尊厳のために共に闘うと示すためです」

「別々のインタビューにすることで、ウクライナの人権を守るために闘う人々の声を届けるためのチャンスとして生かしたい。ロシアの人権団体も、独自インタビューで同じようなメッセージを送るだろうと確信しています」と答えた。

マトイチュク代表の意向に沿って、ノルウェー公共局NRKとBBCは恒例の共同インタビューはせずに、別々に両者をインタビューする方針だ。

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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