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必見!あるインターネットの時事番組の挑戦

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー
AWニュース

皆さんは、テレビ番組、特に報道番組や情報提供番組をどのように考えているだろうか。長くても2時間程度で、政治や社会問題などの時事問題や犯罪などから生活や新製品に関する問題、場合によってはエンターティンメントから芸能問題など、ありとあらゆる問題を扱っている。

それらの番組には、視聴者の理解を深めるために、コメンテータという名の人物(多くの場合、複数人数)が登場し、対象となったニュースに対してコメントや意見を述べる。

だが、さまざまな複数のコメンテータが登場し、その各人が何らかの専門性を持っている場合もあるが、現在の報道や情報提供の番組では、必ずしも自分の専門性のないニュースにもコメントをする(あるいはそうさせられている)ことも多い。その場合は、彼らも、そのニュースに対しては、専門外で素人だといえる。

また最近は、お笑い芸人などの芸能人が、コメンテータとして登場することが多い。それらの方々は、メディア対応や限られた時間に気の利いた言葉を表現するのは非常にうまい。だが、彼らは、関連する個々のニュースの内容に関係する専門分野の素人に過ぎない。それはそれで番組構成上ありだとは思うのだが。

これらのことを考えていくと、それらの番組を通じて、我々視聴者は、実は多くの場合、素人あるいは門外漢の意見を聞いているに過ぎないことになる。これでは、番組を見聞きしても、視聴者は自分の見識や考えを深めることはできない。これらの問題については、朝日新聞WEBRONZAの拙記事「テレビの『コメンテータ』って何?」でも論じているので参考にしてほしい。

これが現在のテレビの番組の現状である。もちろん、テレビの方も、番組のなかで、スポットで専門家のコメント映像を挿入したり、専門家らのコメントをボードで紹介したり、ネットを使って、視聴者の意見を活かすような工夫などをしている。だが、まだまだ従来のテレビ番組の枠組みをなかなか越えられないでいるのが現状だ。

そんななかで、面白い試みをしているインターネットの時事番組がある。それは、「AWニュースweekly」という番組だ。「ニコニコチャンネル政治」や「USTREAM」で、週一回程度放映されている政治や経済の時事番組だ。同番組は、1時間半から2時間の放送で、4つ程度、あるいは多くても5つ程度という数のニュースについて、徹底的に解説、議論するものだ。毎回の番組は、専門家のコメンテータとMC+ディレクターの3名だけによる進行。取り上げるニュースも、基本的には、コメンテータの専門が活かせるものが選ばれている。

コメンテータは、現在、経済学が専門の原田泰早稲田大学教授(現在日銀政策委員であるため、休眠状態)、安全保障が専門の浜谷英博三重中京大学名誉教授、アメリカ政治・経済などを専門とする中岡望東洋英和女学院教授、公共政策が専門の鈴木崇弘城西国際大学客員教授である。筆者も末席に席を置かせていただいている(なお、筆者は、MCとゆる~い進行をさせていただき、番組を楽しませていただいている)。

専門性が活かせるニュースが選ばれてはいるが、番組の時間の長さに対して、取り扱うニュースの数は非常に限定されており、ニュースによってはコメンテータも必ずしも熟知していない場合もある。そのため、各コメンテータは、事前にかなりの時間を割いて、準備し、自身の意見や考えをまとめておくことが求められる。その意味で、この番組に出演すること自体が、筆者にとっても非常に良い学習の機会になっている。そのような形で番組がつくられているために、同番組はニュースの意味や背景をかなり深く知ることででき、政治や経済のリテラシーを高める貴重な機会になっていると思う(手前味噌か?!)。その意味では、中高生などにも参考なるし、授業教材などにも活用できるのではないかと思う。

また、MCを務める深川芳樹さんは、テレビの報道番組などに長らく関わり、その経験を活かして、ニュースに別の視点からの情報を提供したり、コメンテータに答えにくい質問をしたりして、番組にスパイスを与えている。時々、番組に出てくるディレクターの富田康介さんは、イケメンで、若者のキャラ満載で、番組の広がりを与えている。

これだけでも、地上波の番組と色合いが違うところだが、この番組の一番の売りは、やはり番組進行と同時に視聴者からネットを通じてくるコメントや質問だろう。番組では、それらに対して、コメンテータやMCから即座にコメントや意見が表明され、正に双方向で番組が進行していくのだ。しかも、場合によっては、視聴者の方から、適切な情報提供や説明が加えられることもある(筆者もそのお蔭で、理解が深まったり、知識が増えたことがある。ありがとうございます!)。

テレビがデジタル化したり、インターネットテレビの普及が広がってきており、視聴者との双方向的を活かした番組(特に、政治や経済の問題は理解を深めるために、双方向のコミュニケーションは非常に有効なものにあると考えられる)がもっと出てきてもいいと思うのだが、「AWニュースweekly」ほど、先進的で実験的な番組はないのではないだろうか。

ただ、番組のライブ放映は平日の日中なので、視聴が難しい方もいると思う。しかしながら、同番組はアーカイブ機能もあり、視聴者は自分の好きな時間に観ることも可能だ。また今後、別時間帯に、番組録画を観ながら、視聴者とMCの間で、ネットを通じて、さらに議論するような番組の企画やオフ会開催なども考えているそうだ。

本記事を読んで、もし興味をもたれたら、アーカイブでもライブでもいいので、同番組をぜひ観ていただければと思う。そして番組のさらなる改善のための提案やライブ放送でのコメントをしていただければと思う。

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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