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33歳女性。恋人とのデートも週1で満足。お互いに一人時間を満喫しています~スナック大宮問答集46~

大宮冬洋フリーライター
東京・西荻のアジア食堂「ぷあん」にて。右の白Tシャツが筆者です。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京、愛知、大阪などの各地で毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催140回を超えている。のべ2800人ほどと飲み交わしてきた計算になる。

 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。30代から50代までの「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。

 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めて対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***ミハルさん(仮名。独身女性、33歳)との対話***

年齢を重ねても好きなものは好きなままでいられる。そんな人でありたいと思えました

――都内で一人暮らしをしているそうですね。

 はい。大学進学で上京してからずっとです。たまには寂しくなりますが、友だちもいるし親もまだ元気なのでまだしばらくは独身でもいいかも、と思っています。私は若いときから恋愛にはあまり興味がなく、趣味や勉強に取り組んでいるほうが好きでした。

――今はお付き合いしている人などはいるんですか?

 1年ほど前から付き合っている人がいます。私より2歳年上です。一人で自由に過ごすのが好きなところが似ていて、週に1回会えばお互い十分。週2はちょっと多いかな、と感じてしまいます。結婚の話が出たことはありません。

 何かあったときの保証としては結婚したほうがいいのかな、と思うことはあります。でも、私は自分の子どもを持ちたいとはあまり思わないので、晩婚のほうがいいのかもしれません。身内も遅めの結婚をした人のほうが幸せそうにしています。大宮さんの「晩婚さん、いらっしゃい!」連載を読むのが好きで、読者はどんな方々なのかを見てみたくてスナック大宮に参加しました。

――ミハルさんもそんな読者の一人なんですけどね(笑)。初めてのスナック大宮、楽しめましたか?

 期待通りでした! この歳になると周りには自分と似たような趣味や仕事を持っている人ばかりになります。スナック大宮にはいろんな業界の人たちが来ていましたし、海外旅行やダイビングなどの私はあまり馴染みのない趣味の話を聞くこともできました。

 好奇心が旺盛で自分の世界を持ち続けている人が多いな、という印象です。私より少し上の年代の方が多かったので、「年齢を重ねても好きなものは好きなままでいられるって素敵だな。私もこうなりたい」と思えました。

こちらも会場の一部(ぷあん2階は和室と洋室に分かれています)。ミハルさんもシンハービールを飲んで表情が緩んでいます。(参加者提供)
こちらも会場の一部(ぷあん2階は和室と洋室に分かれています)。ミハルさんもシンハービールを飲んで表情が緩んでいます。(参加者提供)

裏社会系など「男臭い漫画」が大好きな私。ワーッと話さないように気をつけています

――ミハルさんの趣味について聞かせてください。

 漫画アニメなどサブカル、歴史、国内旅行です。特に裏社会系やSFアクションなどの男臭い漫画が好きで、オタク気質があると自覚しています。お酒をたくさん飲んでスイッチが入ると好きな分野についてワーッと話してしまう傾向があって、意識して控えるようにしているところです。男臭い漫画に興味がない女性の飲み会でもそんな風に話してしまい、主催者の人から「話題を全部持って行っちゃったね」と注意されたこともあるので……。だから、スナック大宮ではお酒を飲み過ぎないようにして、みなさんのお話を聞くことに徹するように心がけました。

――お気遣いありがとうございます(笑)。でも、あまり気にし過ぎないで大丈夫です。オタクなトークはむしろ歓迎します。僕も最近は魚をさばくことにハマっているので、スズキの内臓の美味しさについて熱く語ったりして参加者から引かれました(笑)。スナック大宮は席の移動も自由ですし、僕が途中で席替えを促したりもします。興味のない話は聞き流して食事を楽しんでもOKです。

 そうなんですね。今回の会場となったお店の雰囲気がいかにも中央線らしくて好きでした。親戚の家みたいで(笑)。若いときはタイ料理が苦手だったのですが、あのお店の料理は食べやすくて美味しかったです。次回に参加するときはもう少しお酒もいただこうかと思います!

*****

孤立を避けて豊かに暮らすために。日常の外で自分を気楽に出せる場所を探して楽しむ

 以上がミハルさんとの会話だ。筆者は上記の晩婚さん連載を9年ほど続けていて、この媒体(ヤフーニュース個人)でもお見合いおじさん活動のレポート記事を掲載している。でも、法律婚だけが人が幸せになる方法だとは考えていない。軽蔑し合っているのに子どもを言い訳にして別れない夫婦を目にしたりすると、家族全員の人生をむしろ毀損しているように感じてしまう。人は世間体ではなく自分なりの方法で穏やかに豊かに暮らすべきなのだ。

 ただし、ささやかでも良好な人間関係は保ちたい。本音で話せて笑い合い、ちょっとした頼みごとはできるような人が誰もいないと、孤立の恐怖と苦しみで暴走しかねない。

 ヒントは「話が合う」よりも「気が合う」ことだと思う。年齢や仕事、趣味が似ている相手とは話題が共通して盛り上がりやすいが、心を開けるかと言えばそうでもなかったりする。生活の糧を得ている仕事の人間関係には自分をさらけ出しにくかったりもする。

 一方で、自分とは何もかも異なり、世代どころか国籍や言語すら違ったりする相手なのに、ちょっとした間合いや表情に親しみや魅力を覚える場合もある。話しているテーマはあまり重要ではなく、一緒にいてなんとなく居心地がいい。魚心あれば水心あり。その相手もあなたに好意を覚えている確率が高い。

 スナック大宮を含めた酒場や食事会ではこんな風にして友情が育まれることもある。周囲に対して最低限の気遣いはしながらも、気楽に自分を出せる場を探せばいいのだ。ちょっとだけ日常の外に出るだけで構わない。ミハルさんがまた参加してくれたら、「男臭い漫画」について話を振ろうと思う。

ミハルさんが喜んでくれたぷあんの料理。感染症予防のため、前菜は各自のワンプレートにまとめて出してもらいました。ヘルシーだけどお酒が進む味付け!(参加者提供)
ミハルさんが喜んでくれたぷあんの料理。感染症予防のため、前菜は各自のワンプレートにまとめて出してもらいました。ヘルシーだけどお酒が進む味付け!(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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