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楽天モバイル iPhone SE「一括1円」販売が話題に

山口健太ITジャーナリスト
iPhone SEを「1円」で販売中(Webサイトより、筆者撮影)

携帯キャリア各社による端末の値引き競争が激化する中で、楽天モバイルも参戦。先週のiPhone SE「実質1円」に続き、2月26日からは回線契約とセットで「一括1円」での販売が始まり、注目を浴びています。

スマホなどの端末販売において気を付けたいのが、「実質」と「一括」の違いです。「実質」の場合、端末価格自体は5万円などの価格が設定されているものの、値引きやポイント還元などを合算すると実質的な負担額は下がることを意味しています。

楽天モバイルが先週実施していたiPhone SEの「実質1円」では、回線契約とセットで購入する場合、端末価格の税込4万4800円に対して4万4799ポイントを後日付与するというものでした(別途5000ポイントのキャンペーンと合算で実質0円と表記しています)。

25日まで(左)と26日から(右)のキャンペーンの違い(楽天モバイルのWebサイトより、筆者作成)
25日まで(左)と26日から(右)のキャンペーンの違い(楽天モバイルのWebサイトより、筆者作成)

ただし、これはあくまで実質的な負担額の話であり、還元されるのは期間や用途の限られる「期間限定ポイント」でした。これに対して、2月26日から始まった「一括1円」のキャンペーンでは、回線契約とセットで購入する際の端末価格自体が「1円」になっています。

こうした端末の値引きは法律で制限されており、回線契約を条件とする場合の上限は税込2万2000円です。では今回の楽天はどうかというと、回線契約なしでも税込「2万2001円」で単体販売をしており、この制限をいっぱいまで活用していることがうかがえます。

回線契約をせず、端末単体でも税込2万2001円で購入できる(楽天モバイルのWebサイトより)
回線契約をせず、端末単体でも税込2万2001円で購入できる(楽天モバイルのWebサイトより)

他キャリアでもMNPによる乗り換えを条件にiPhone SEを大きく値引きしているところはあるものの、楽天モバイルなら回線契約をしても1回線目は毎月1GBまで無料という違いがあります。なお、過去にiPhoneを購入した人は対象外となるなど「転売」対策もされています。

ただ、在庫がないとの報告が多く、実際に購入するのは簡単ではなさそうです。筆者はいくつかの店舗に電話をかけ、ようやくつながったお店で「もし入荷があれば連絡する」との条件で予約することはできました。しかしキャンペーン中に入荷があるかどうかは未定とのことです。

2022年3月7日追記:

その後、入荷の連絡があったので実際に購入してみました。こちらの記事でレポートしています。

一括1円を支えているのは「楽天経済圏」?

先週の実質1円を含め、一連のキャンペーンで興味深いのは、楽天モバイルは基本料金が無料であるにもかかわらず、iPhoneを1円で販売しているという点です。

他の大手キャリアでは、端末を大きく値引きしたとしても、回線契約をしてもらえれば毎月数千円の料金収入が見込めます。しかし楽天モバイルのプランは毎月1GBまで無料であり、利用者の使い方次第ではほとんど売上が立たないのです。

この点について、新執行体制で楽天モバイルの会長となる三木谷氏は「楽天経済圏とのシナジーを期待できるので端末の戦略はアグレッシブに行ける」と語っていたことがあります。楽天モバイルの加入者は楽天市場でより多く買い物をするとのデータもあるようです。

楽天経済圏とのシナジーも(楽天グループ決算説明会資料より)
楽天経済圏とのシナジーも(楽天グループ決算説明会資料より)

今回のiPhone SEについては、何らかの理由で在庫処分に迫られている印象を受ける面もありますが、楽天モバイルのユーザーになってもらえれば通信以外の収入を期待できるというのは面白いところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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