ハリウッドのスキャンダル、さらに泥沼化。裏で糸を引いていた人物がいた
映画「ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US」をめぐる騒動が、ますます泥沼化した。出しゃばり、わがままのレッテルを貼られた主演女優が、自分にセクハラと仕返しをした監督兼共演者を訴えたと思ったら、続きがあったのだ。
「ふたりで終わらせる〜」が北米公開された今年8月、大きなイメージダウンを受けたブレイク・ライヴリーが、先週末、ジャスティン・バルドーニを訴訟するための最初のステップを取ったことは、前回の記事にも書いた。製作中、バルドーニは、セクハラをはじめとする不適切なふるまいをし、それに対して抗議をしたライヴリーに逆恨みをして、計画的に彼女を貶めたのだと、ライヴリーはいう。
ライヴリーが訴えている相手には、バルドーニ、プロデューサーのジェイミー・ヒース、バルドーニとヒースのプロダクション会社ウェイフェアラー・スタジオズに加え、バルドーニの悪意ある策を実行してみせた危機管理専門パブリシスト(広報担当者)、メリッサ・ネイサンと彼女の会社ジ・エージェンシー・グループPR、ウェイフェアラーのパブリシスト、ジェニファー・アベルと彼女の会社RWA コミュニケーションズが含まれる。
彼らの間で交わされたテキストメッセージも証拠としてたっぷり記載されたその訴えには説得力があり、セクハラの描写も詳細で生々しい。この報道が出るとすぐ、バルドーニは所属するタレントエージェンシー、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)から契約を切られ、組合員の安全を守るために存在する全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)や、この映画に関係した俳優、関係しなかったセレブなどが、こぞってライヴリーを支持した。
だが、そこへ、これまで登場しなかった人物が出てきたのである。ステファニー・ジョーンズという名の別のパブリシストだ。
背後にあった個人的な野心
ジョーンズは、クリスマスイブの日、バルドーニ、ウェイフェアラー、アベル、ネイサンを名誉毀損と契約違反で訴訟。バルドーニとウェイフェアラーは、最近までジョーンズのPR会社ジョーンズワークスが抱えていたクライアントだ。アベルはジョーンズワークスで働いていた頃、バルドーニとウェイフェアラーを直接担当していた。ネイサンは会社こそ違うが、ジョーンズと以前からの知り合いだ。
ジョーンズの訴状によれば、アベルは「ふたりで終わらせる〜」製作中、ライヴリーがバルドーニによるセクハラに抗議したことを知っていた。自分の行動についてメディアに伝わることを恐れたバルドーニは、ライヴリーを悪者に仕立て上げたいと、担当パブリシストであるアベルに相談。それを受け、アベルは、危機管理を専門とするネイサンをチームの一員に誘った。上司であるジョーンズは、それらについて何も知らされていない。
アベルとネイサンはクライアントであるバルドーニの目的を果たすべく動いたが、実のところ、彼への敬意はまるで持ち合わせていなかった。訴状には、ふたりがバルドーニについて、「働きすぎたから夏はゆっくりしたいですって?落ち着きなさいよ。重要な人でもないのに。あなたが大変かどうかなんてどうでもいいわよ」、「スターでもないくせにね」、「この映画がコケたら、彼は全部他人のせいにするでしょう」などと陰で悪口を言い合うテキストメッセージが証拠として記載されている。
しかも、アベルは、まずバルドーニについての撮影現場でのネガティブな話をメディアにリークしているのだ。そうすることで彼の危機感を強め、ネイサンに来てもらうことが必要だと感じさせるためである。
そしてアベルとネイサンには、個人的な野心があった。ジョーンズの評判を貶め、ジョーンズのクライアントや従業員を引き抜いてアベルが自分のPR会社を設立し、ネイサンの会社と協力しながら一緒に儲けていくというものだ。アベルとネイサンは、バルドーニとライヴリーの不仲がメディアにリークされたことをジョーンズのせいに仕立て上げ、それとは別にジョーンズについてのネガティブな記事を「Business Insider」に書いてもらうことにも成功した。
アベルは、ジョーンズワークスで働いている間に、極秘の情報をダウンロードして入手。バルドーニ、ウェイフェアラーを含むジョーンズワークスのクライアントや従業員の一部も引き抜き、ジョーンズワークスのライバルとなるRWAコミュニケーションズを立ち上げた。これらはジョーンズとの雇用契約に反すること。また、ジョーンズワークスとバルドーニ、ウェイフェアラーとの契約は1年単位で、今年5月に更新したのでまだ支払い義務があるのだが、ジョーンズによれば、彼らは責任を果たしていないという。これも、契約違反だ。
ジョーンズは、これら被告に対し、損害賠償、懲罰的損害賠償、弁護士費用などを求めている。また、陪審員による裁判が行われることを希望している。
彼らのホリデーシーズンは突然にして真っ暗に
この新たな訴訟で暴露された事実の数々には、ライヴリー、バルドーニ、ヒース、みんなが驚いていることだろう。一連の騒動の裏には、ふたりのパワーハングリーな女性たちの個人的思惑があったのだ。ライヴリー対バルドーニの対立に見えた話は、実のところ、ずっと複雑だった。むしろライヴリーとバルドーニは、彼女らに利用されていたともいえる。アベルの言葉を信じてジョーンズワークスを後にし、RWAに乗り変えたタレントたちも、裏切られた思いでいっぱいなのではないか。
いずれにしても、突然にしてふたつの裁判で被告となった(ライヴリーはまだ正式な訴訟には至っていないものの、その展開は必然と思われる)バルドーニ、アベル、ネイサンのホリデーシーズンは、突然にして暗くなってしまった。彼らの来年は、思っていたのとは違う形で忙しくなることだろう。アメリカの劇場公開時にヒットした「ふたりで終わらせる〜」は、現在もNetflixのアクセスランキングの8位に君臨するなど、観客に愛されている。この舞台裏のスキャンダルを関係者が「終わらせる」のは、いつになるのだろうか。