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ブレイク・ライヴリーに共感示すアンバー・ハードに「利用するな」「迷惑」の声

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ライヴリーに起きたことを自らに重ねたアンバー・ハード(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 もしや出てくるかと思っていたら、やはり出てきた。ジョニー・デップとの名誉毀損裁判に負けて以来、あまり表に出てきていないアンバー・ハードが、ブレイク・ライヴリーによる訴訟騒動を受けて、公に発言したのだ。

 ライヴリーは、先週末、主演映画「ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US」の監督で共演者のジャスティン・バルドーニに対する法的措置を開始。セクハラをはじめとする不適切な行為に対して意見をした自分への仕返しをたくらんだバルドーニは、エキスパートらを雇い、メディアやソーシャルメディアを操作させたのだと主張している。彼のチームの主要人物のひとりは、危機管理広報マネージャー、メリッサ・ネイサン。一連の報道では、ネイサンが過去にデップの危機管理広報マネージャーを務めたことにも触れられている。

 ハードは、デップからDVを受けたと公言して以来、ソーシャルメディアで世間から攻撃を受けたと強調していた。それはすべてデップの弁護士アダム・ウォルドマンがメディアでハードをけなすコメントをしたせいだと、ハードは先に自分に対する訴訟を起こしていたデップを逆訴訟。それらをまとめた裁判は、2022年4月に始まった。

 そんなハードは、同じ危機管理広報マネージャー、そしてソーシャルメディアという要素に反応したのだろう。アメリカ時間23日、NBCニュースを通じ、「『真実が靴を履く前に、嘘は世界を半周する』と言われますが、ソーシャルメディアはまさにそれです。私は自らそれを目撃しました。とても恐ろしく、破壊的です」と、声明を発表。いくつかのメディアも、この話題を取り上げた。

 しかし、世間の声は冷たい。コメント欄には、「危機管理広報担当者が同じだとしても、共通点はそこだけ」、「アンバー、あなたは関係ないよ」、「これを利用してまた注目されようとしているだけ」、「あなたと一緒にされるとブレイクは迷惑。やめて!」、「アンバーが嘘をついていたことは裁判で証明されている」などという厳しい書き込みが連なる。

広報チームに人のイメージを完全に変えるほどの力はない

 バルドーニの弁護士ブライアン・フリードマンも、「広報チームにブレイク・ライヴリーとアンバー・ハードのイメージを完全に変えるようなすごいパワーはない」と、ハードのいうことに反論。

「世間はこのふたりの振る舞いをずっと見てきました。それは映像として記録にも残っています。それらを見て、世間は自然に(彼女らに対する)イメージを持つようになっていたのです。(彼女らの)インタビューの映像を見ればわかります。それらが彼女らの危機管理広報チームによってまだ削除されていなければの話ですが。おそらく彼女らのチームはそうするでしょう。クライアントを守ることが彼らの仕事ですから」と、業界サイトDeadlineに語っている。

写真:ロイター/アフロ

 だが、バルドーニが置かれた状況は非常に厳しい。ライヴリーがバルドーニに対する訴えを通じて彼女側の話を伝えて以来、彼女への支持を表明する声は次々に上がっている。

「旅するジーンズと19歳の旅立ち」でライヴリーと共演したアメリカ・フェレーラ、アンバー・タンブリン、アレクシス・ブレデルは、インスタグラムに長いメッセージを投稿。「私たちの友人ブレイクのように強く、祝福され、力のある女性でも、安全な職場環境を求めたせいで復讐されることがあるというのが、現実なのです。自分自身とほかの人たちのために立ち上がった彼女の勇気に、私たちは大きなインスピレーションを受けました」と述べている。

「シンプル・フェイバー」でライヴリーを監督したポール・フェイグも、「彼女はとてもプロフェッショナルで、クリエイティブで、協力的な人。こんな意地悪な攻撃を受ける筋合いはありません」と、ライヴリーを擁護。

 ライヴリーと親しいわけではなく、過去にジョークのネタにしたことすらあるエイミー・シューマーも、インスタグラムのストーリーに「ブレイクを信じる」と投稿した。一方、グウィネス・パルトロウは、ライヴリーのヘアケアブランド「Blake Brown」をインスタグラムで宣伝してあげている。この夏デビューしたこのブランドの売り上げは、ライヴリーのイメージダウンに大きな影響を受けたとされる。

 これらの人々はライヴリーを直接支えるコメントをしているのに、ハードは彼女への言葉もなく、自分のことに終始しているのは対照的だ。

ハードはもうすぐふたりめの子供を迎える予定

 2022年6月、デップに対して総額1,035万ドルを支払うよう命じる判決を受けた後、ハードと彼女の弁護士チームは、陪審員の中にすり替わったと思われる人物がいたとして、裁判の無効を要求した。それが通らないと、弁護士チームを編成しなおし、言論の自由を強調する方針で控訴に挑もうとするも、同年末、デップに対して100万ドルを払うという条件で示談が成立。その100万ドルは、ハードの保険会社が肩代わりし、デップは約束通り全額をチャリティに寄付した。

 ハードは現在、娘とふたりでマドリッドに住む。現在3歳半の娘は、代理母を使い、ハードがひとりで授かったもの。父親は明かされていない。最近、「People」は、ハードがもうすぐふたりめを迎える予定だと報じた。しかし、今度は彼女自身が出産するのか、あるいはまた代理母なのかは不明だ。もちろん父親もわからない。

 判決後に公開されたハードの出演作は、いずれも裁判の前に撮り終えていた「アクアマン/失われた王国」と、インディーズ映画「In the Fire」のみ。「アクアマン/失われた王国」の世界興収は1作目「アクアマン」の半分以下の4億3,900万ドル。ハードを続編に出すなというオンラインでの署名運動が盛り上がったが、出番は少ないものの、彼女は出ている。「In the Fire」では主演を務めたが、北米では配信と同時の限定公開、配信された国も限られており、世界興収はわずか2万2,000ドルにとどまる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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