米同時多発テロから23年 サウジアラビア政府のテロ関与を示唆する新たなビデオ(動画あり)が浮上
サウジアラビア政府が9.11・アメリカ同時多発テロに関与したのではないか? アメリカの同盟国であるサウジ政府がテロリストを支援していたのではないか? そんな報道は、事件発生直後から流れていた。背景には、世界貿易センタービル、ペンタゴン、ペンシルベニア州の野原に航空機で激突したアルカイダのハイジャック犯19人のうち15人がサウジアラビア出身だったということがあるが、サウジ政府と彼らのつながりは不明だった。
同時多発テロから20年が経った2001年9月11日、米連邦捜査局(FBI)はサウジ政府の関与について調べた捜査資料の一部を開示したが、塗りつぶされた部分が多く、サウジ政府がテロに関与していた、あるいは、テロの計画を事前に知っていたことを示す直接的な証拠は確認できなかった。
サウジ政府のテロ関与を示唆するビデオ
しかし、ここにきて、米CBSテレビが6月、「60minutes」と言う番組で、サウジ政府のテロ関与を示唆するビデオを公開している。ビデオは連邦裁判所から入手したものだという。1999年夏に撮影されたこのビデオは、アメリカ同時多発テロのハイジャック犯2人と密接な関係を持つサウジアラビアの諜報員だったとFBIが考えているオマール・アル・バユミという人物が数日をかけた撮影したものだ。
このビデオには、米議会議事堂には2つのエントランスがあることや警備員たちの姿、議事堂の模型や、ランドマークであるワシントン・モニュメントが映し出されている。そして、バユミはモニュメントを指し「あそこに行ってレポートします。そこに何があるか詳しくレポートします。空港も遠くありません」と説明している。
米議会議事堂というと、ペンシルベニア州に墜落したフライト93のハイジャック犯がターゲットにしていたのではないかと推測されている建物だ。アメリカ同時多発テロの捜査を指揮した元FBI捜査官で、犠牲者の遺族たちがテロはサウジ政府に責任があるとして提訴した訴訟のコンサルタントを務めているリチャード・ランバート氏は、このビデオはサウジ政府がテロに関与している大きな証拠との見方を示している。
「バユミは首都を詳しくビデオで録画している。360度のパノラマビューで録画している」
「ワシントンDCに上空から入ると、最初に水平線に見えるものの一つにワシントン・モニュメントがある。ワシントン・モニュメントを基点に他のターゲットの位置を把握すれば、狙ったターゲットに(航空機を)誘導する助けになる」
ランバート氏は、バユミがビデオの中で“プラン”と言及している点も指摘している。
「彼は“プラン”と口にしている。何の計画なのか。彼は、このビデオの中で、彼に実行前の偵察用ビデオを取るよう指示したアルカイダの計画者に向かって話しているのだと思う」
また、このビデオは1999年の6月後半から7月前半に撮影されたものだというが、このタイミングについてもランバート氏は注目している。
「(ビデオが撮られたのは)アルカイダのシニアの計画者が、首都を9.11のテロ攻撃のターゲットにすると決断をしてから90日以内のことだ」
つまり、撮影されたのは、同時多発テロの首謀者とされているオサマ・ビンラディンが、航空機で激突する作戦を許可してから間もなくのことだというのだ。
証拠の山のトップにある
ちなみにこのビデオは、イギリスの警察が、米同時多発テロの数日後にバユミのアパートを捜索した際に発見したものだが、警察はバユミの手書きの住所録も押収しており、テロの犠牲者遺族の弁護士によると、その住所録には、当時、政府に在籍していた多数のサウジ高官の電話番号が掲載されていたという。
バユミがワシントンDCのビデオを撮影していた時期、彼は2人のサウジの外交官としばしば一緒にいたことから、FBIは彼らが「アルカイダとつながりがある」と考えており、ハイジャック犯の1人が航空学校に通っていたフェニックスでテロの捜査を指揮した元FBI捜査官ケン・ウィリアムズ氏も、バユミのビデオは「証拠の山のトップにある」と考えているが、サウジ政府は、ビデオはバユミが観光客として撮影したものだと異を唱えているという。
ビデオ公開までなぜ20年もかかったのか?
英国警察はテロ直後にこのビデオをFBIに引き渡したとみられているが、20年以上も経った今、なぜこのビデオが表面化したのか? 前述のウィリアムズ氏は「もし、このビデオが見逃されていたのなら、見逃していたのは我々の恥だ。見逃されていなかったとしたら、このビデオはどうなっていたのかと問わざるを得ない」と疑問を呈している。
米同時多発テロの犠牲者遺族で構成されている草の根運動団体 「9/11 ジャスティス」も、このビデオに注目し、同団体代表のブレット・イーグルソン氏は「この映像は、サウジ政府の公式エージェントが 2001年9月11日の2,977人の罪のない男女の殺害の計画と実行に加担していたことを示す決定的な証拠だ。この映像が公開されるまでに20年以上かかった理由に焦点を当てる時期はいずれ来るだろうが、今は、これらの凶悪な行為に対するサウジ政府の共謀に焦点を当て続ける必要がある。ついにサウジが責任を問われる時が来たのだ」と主張した。
同団体はサウジ政府を提訴しているが、サウジ政府とバユミは同時多発テロへの関与を否定、サウジ政府側の弁護士は訴訟の却下を求めている。
また、「9/11 ジャスティス」は、大統領候補のハリス氏とトランプ氏に書簡を送り、その中で、「あなたが次期米国大統領を目指して選挙活動を行う中、9.11攻撃におけるサウジ政府の役割に全面的に対処しない限り、サウジ政府が関与するいかなる中東和平協定も支持しないと誓約してほしい。犠牲者とその家族に対する正義と決着は、我が国の外交政策の優先事項でなければならない」と訴えている。
9.11から23年目の前夜に当たる9月10日、テロ攻撃を受けたニューヨークと同じアメリカ東部にあるフィラデルフィアでテレビ討論会を行うハリス氏とトランプ氏は、犠牲者遺族の訴えにどう対処するのだろうか?
(9.11アメリカ同時多発テロ関連記事)
「私と社員の半数が9.11関連の癌に罹患」補償の法制化に奮闘した弁護士の告白 米同時多発テロ22年
「死者はこれから増える。死ぬまで助け続ける」左足を失った元復旧員に聞く 2.6万人超が癌 テロ21年
「日本人」であるという「劣等感」と“闘い続けた男”… “9.11”から21年、世界貿易センタービルをつくった「日系2世」の知られざる“壮絶人生”…!
「今も毎日9.11を生きています」白血病と闘う元NY警官に聞く 2万人超が癌に 同時多発テロ20年⓵
「ガードを緩めたら9.11は再び起きる」トラウマと闘う元NY警官に聞く 自殺した警官も テロ20年②
アメリカ同時多発テロから18年 1万4千人超が9.11関連の癌に「粉塵と癌の関連性を初証明」米研究者