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セクシー発言をした小泉氏がもっとセクシーになる方法「政治はセクシーな挑戦」米大統領候補もセクシー発言

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
“セクシー発言”をした小泉氏はNYでステーキを食べたことも問題視された。(写真:ロイター/アフロ)

 小泉進次郎環境相の「セクシー発言」が注目を浴びている。

 個人的には、セクシーという言葉があの状況で使われても違和感は覚えなかった。むしろ、上手い表現をしたなと思った。

政治はセクシーな挑戦

 例えば、アメリカでは、ミレニアル世代の民主党大統領候補として注目を集めているピート・ブーテジェッジ氏(37歳)が選挙に出て政界入りすることについてこう言った。

「セクシーな挑戦だ」

 同氏が18歳の時にした発言ではあるが、今年5月にABCテレビのインタビューで「セクシーな挑戦でしたか?」と改めて問われ、「ある意味そうです。好奇心があるなら、それに勝るものはありません」と肯定、ブーテジェッジ氏は政治はセクシー、つまりエキサイティングな挑戦だったと話している。

 ブーテジェッジ氏と同じミレニアル世代の小泉氏も、温暖化対策への取り組みはエキサイティングな挑戦だと感じているに違いない。筆者は決して“安倍お友達内閣”を支持しているわけではないが、“セクシー発言”をした小泉氏に、全然エキサイティングではない、旧態依然とした日本の政界をラディカルにチェンジしようという勢いを感じ、頼もしく思った。その勢いで、日本を脱炭素社会へとチェンジしてほしいと思う。

フェイク・ミートがセクシー!?

 ところで今回、小泉氏は、ニューヨークでステーキを食べたことも問題視されたが、これから世界でセクシーになるのは、ステーキのようなリアルなミートではなく、フェイク・ミート、つまり、偽肉かもしれない。

 フェイク・ミートは、リアルな肉に代わるという意味で“オルターナティヴ・ミート”、つまり、代替肉と呼ばれたり、植物をベースに作られているので“植物ベースのミート”と呼ばれたりすることもある。あるいは、実験室で生み出された肉なので“ラボ・グローン・ミート”、実験室生まれの肉とも呼ばれている。

 CNNは、フェイク・ミートに関する本日の記事で、フェイク・ミートに先んじて、野菜がセクシーなったという前段階があったことについて触れている。だとすると、今は、その野菜や植物がベースになっているフェイク・ミートがセクシーなのだ。

 筆者は、数年前、某誌で、フェイク・ミート開発の先駆けとなった、ビヨンド・ミート社とインポシブル・フーズ社を取材した。両社ともフェイク・ミートで作られたバーガー・パテを展開している。ビル・ゲイツ氏も投資していることで知られるビヨンド・ミート社は今年5月にナスダック市場に上場、「デル・タコ」や「KFC」などのレストラン・チェーンともパートナーシップを組み、株価もうなぎ上りだ。

 インポシブル・フーズ社も目覚ましく成長した。取材当時は、一部の大学や会社のカフェテリアにバーガー・パテを卸しているだけだったが、今では、バーガー・チェーンの「バーガー・キング」やレストラン・チェーンの「チーズケーキファクトリー」をはじめ多くのレストランやスーパーも導入するほど成長。南カリフォルニアでは高級スーパー「ゲルソンズ」での販売も始まる。

 インポシブル・フーズ社とビヨンド・ミート社が、アメリカの2大フェイク・ミート・プレイヤーだが、大手食品メーカーがこのビッグなトレンドを見過ごすわけがなく、世界最大の食品メーカー、ネスレも「オーサム・バーガー」と銘打ったフェイク・ミートのバーガー・パテの展開を始めた。ネスレのような巨大な供給チェーンとリソースを抱える大手食品メーカーの参入により、フェイク・ミート市場が今後さらに活気づくことは間違いない。

フェイク・ミートで温暖化問題にチャレンジを

 フェイク・ミート市場はなぜ成長しているのか? 実際、フェイク・ミートのバーガー・パテのカロリー量や栄養価はリアル・ミートのそれと大差はない。それにもかかわらず、アメリカでフェイク・ミートの人気が上昇しているのは、水や土壌などの環境に大きな負荷を与えず、環境に優しいという理由からだ。

 バンク・オブ・アメリカとメリル・リンチが、人々がフェイク・ミートのような植物ベースのプロテインをとる理由を調査したところ、30%の人々が環境保護目的という回答をしており、「消費者はサステイナビリティーや動物福祉を懸念している」と報告している。

 リアルなミートを生み出す牛は大量のグリーン・ハウス・ガスを放出し、大量の穀物を飼料にし、大量の水も消費している。人口増加により、将来、食料不足問題が起きることは必至であることを考えると、牛の飼育は環境にサステイナブルではないのだ。また、動物愛護団体は牛の飼育法や殺戮法の問題を指摘している。

 今ではフェイク・ミート・バーガー以外にフェイク・ステーキの開発も行われており、代替肉市場は様々なフードへとその裾野を広げている。

 小泉環境相は、リアルなステーキならぬフェイク・ステーキを食べた方が、今後、温暖化問題にチャレンジする上で、もっとセクシーになれるかもしれない。

 もっとも、温暖化対策の方はフェイクにならぬよう願う。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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