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ミノムシ、大きくなったら何になる。メスは生殖機能に特化した究極の産卵マシーン#みのむし

天野和利時事通信社・昆虫記者
これでも成虫?ミノガのメスは、目も脚も翅も退化した産卵マシーン。

 虫好きの子どもたちのアイドル「ミノムシ」は、大きくなったら何になるのだろう。冬に木の葉が落ちると、蓑(みの)に包まれてブラブラ揺れる姿が目立つミノムシ。寒さをしのぐ様子がいじらしく、かわいいので、子どもたちに人気がある。

 5月頃から羽化が始まるのだが、成長して大人(成虫)になった時の姿を知っている人は意外と少ない。成虫はミノガ(主にオオミノガ、チャミノガ、ニトベミノガ、クロツヤミノガ)という蛾なのだが、ミノムシをかわいいと思っている子どもたちは、ミノガ成虫の姿を知らない方がいいかもしれない。

 ミノガのオスの成虫は、かわいいとはとても言えない、黒い翅を持つ目立たない蛾だ。

 メスの成虫は、外界に出ることなく蓑の中で生涯を終えるので、一般人が目にする機会はほぼゼロの「ミステリアスな蛾」だ。そんなことを言うと「見たい、見たい!」と騒ぎ出す怖いもの知らずの子どももいるかもしれない。

ミノガのオスは、立派な目、脚、翅がある普通の蛾。たぶんチャミノガ。
ミノガのオスは、立派な目、脚、翅がある普通の蛾。たぶんチャミノガ。

蓑を背負って移動しながら葉を食べる夏場のミノムシ。たぶんオオミノガの幼虫。
蓑を背負って移動しながら葉を食べる夏場のミノムシ。たぶんオオミノガの幼虫。

 だが、メス成虫の見栄えの悪さはオスの比ではないので、よほどの虫好き以外は見ない方がいい。多くのミノガの仲間のメス成虫は、目も、脚も、翅も退化しており、その姿は巨大なウジムシのようだ。そんなメス成虫は、交尾、産卵という生殖機能に特化したエイリアンという印象を与える(タイトル画像)。

 メスのフェロモンに呼び寄せられたオスは、蓑の中にお尻を突っ込んで交尾をする。交尾を終えたメスは、何千個もの卵を蓑の中に生んで一生を終えるというから、まさに産卵マシーンだ。

 ◆代表的なミノムシの蓑の見分け方

 ついでに、ミノムシの蓑の見分け方も紹介しよう。

 公園内の柵や建物の壁面に付いている小さな蓑の多くは、クロツヤミノガの蓑だ。

たぶんクロツヤミノガの蓑。
たぶんクロツヤミノガの蓑。

 チャミノガの蓑は、細く短い枝をたくさん寄せ集めて縦にきれいに並べたログハウスのような格好。これが一番見分けやすいかもしれない。

ログハウスのようなチャミノガの蓑。
ログハウスのようなチャミノガの蓑。

 ニトベミノガの蓑は、小さい時には円錐状で、木の葉の上にチョコンと小さな「とんがり帽子」が載っているように見えることもある。幼虫には、脱皮の際に脱ぎ捨てた頭部を蓑の一部に織り込むという変わった習性がある。

ニトベミノガの蓑。上の方に頭部の脱皮殻が織り込まれている。
ニトベミノガの蓑。上の方に頭部の脱皮殻が織り込まれている。

ニトベミノガの小さめの蓑。とんがり帽子のような感じ。
ニトベミノガの小さめの蓑。とんがり帽子のような感じ。

 ミノガの仲間の蓑の中で、一番大きく目立つのがオオミノガの蓑。冬に紡錘形の大きな蓑が木の枝からぶら下がっていれば、それはたいていオオミノガの蓑だ。

大きなオオミノガの蓑。
大きなオオミノガの蓑。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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