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高温ガス攻撃が得意なミイデラゴミムシ=「放屁合戦」と笑っていられない破壊力

天野和利時事通信社・昆虫記者
放屁攻撃をするとは思えない優美なデザインのミイデラゴミムシ。

 「高温で臭い霧状のガスを放屁音とともに発射する」。ミイデラゴミムシはそんな、とんでもない虫だ。こんな攻撃ができるなら、無敵の存在と思われそうだが、実は環境変化に弱いらしく、最近は数を減らしているという。

 夜行性なので昼間は石の下などに潜んでいて、畑を耕している時などに見つかることが多いという。虫好きの場合は、倒木や石の下のゴミムシ類を探している時に出会うことがある。なかなか良いデザインの虫なので、つい手づかみしたくなるが、ちょっと危険なので不用意に手を出してはならない。

 ミイデラゴミムシは身の危険を感じた際に、体内にため込んだ2種類の化学物質を混合させ、高温(100度近くに達するという)のガスに変えて尻から噴射する。まさに化学兵器だ。この化学兵器で攻撃された天敵は、火傷を負う恐れがある。

石の下いたミイデラゴミムシ。正面顔はけっこう可愛い。
石の下いたミイデラゴミムシ。正面顔はけっこう可愛い。

ピンセットでつままれてガスを噴射したミイデラゴミムシ。左上のプラケースの壁面に付いた白い飛沫がその痕跡。長い尻を曲げることで、前方にもガスを発射できる。
ピンセットでつままれてガスを噴射したミイデラゴミムシ。左上のプラケースの壁面に付いた白い飛沫がその痕跡。長い尻を曲げることで、前方にもガスを発射できる。

 ▼ケラがいないと生きていけないという弱点

 ミイデラゴミムシの幼虫はケラ(地中で生活するコオロギの仲間)の卵を食べて成長するという。つまり、ケラが住める環境がないと生きていけない。このため、ケラの減少につれてミイデラゴミムシも数を減らしている。ミイデラゴミムシは、環境変化に弱い存在だと言えそうだ。

 ▼ミイデラという変な名の由来は三井寺の放屁合戦か

 ミイデラという名ついては謎が多いが、滋賀県の三井寺(みいでら)の地に伝わる「放屁合戦」という絵巻が由来との説もあるようだ。おならの威力を競い合う愉快な絵巻と、へっぴり虫(放屁虫)とも呼ばれるミイデラゴミムシは、最高の組み合わせのように思える。この説の真偽はともかく、「最初に三井寺で採集された」などという可能性よりはずっと楽しくて、この特殊能力を持つ虫にふさわしい気がする。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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