幼虫は街路樹のイヌマキをぼろぼろにする害虫=花畑を舞う美しい蛾キオビエダシャク
近年宮崎県などで大量発生が問題になっているキオビエダシャクは、昼間に花畑を舞う非常に美しい蛾だ。成虫の胴体は青い金属光沢があり、名前の由来になっている翅の黄色い帯模様も鮮やかだ。
虫好きは、南国の蝶のような成虫の美しさに見とれていればいいのだが、キオビエダシャクの幼虫は、園芸家にとっては街路樹、生垣のイヌマキを食い荒らす厄介な害虫なので、駆除の対象になる。
キオビエダシャクのもともとの生息域は、東南アジアから北は日本の南西諸島までだった。しかしこの蛾は近年、温暖化の影響もあってか九州に進出。ここ数年は宮崎県を中心に大量発生して問題になっており、既に四国や本州でも目撃されるようになっているという。
南方から進出してきた虫が、本州で一気に生息域を広げるケースはよくある(古くはナガサキアゲハ、最近の例ではキマダラカメムシ、ヨツモンカメノコハムシなど)。このため、「黄色い帯のきれいな蛾を近所で初めて見かけた」という場合は、幼虫の被害に警戒が必要になる。
このきれいな蛾を「近所で見たい」と、幼虫を放したりするのは厳禁だ。
◆イヌマキの実は有毒
この蛾の厄介な点は、年に何回も発生する上、天敵が少ないこと。キオビエダシャクの幼虫は、イヌマキの葉に含まれる毒性物質を体内に取り込むことで、天敵に捕食されにくくなるという。
イヌマキは関東以西の地域に広く分布する常緑針葉樹。赤と緑の部分に分かれたヒョウタン型の可愛らしい実を目にした人は多いと思う(昆虫記者宅の近くでは、葛西臨海公園で見られる)。
ヒョウタン型の赤い部分は花托(かたく)と呼ばれる花の付け根部分が膨らんだもので、そのままでも、ジャムにしても食べられる(甘味があるがさして美味しくはない=昆虫記者の個人的感想=)。しかし、本当の実に相当する先端の緑色の部分には毒があるので、間違って食べないように。
(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)